【宿題帳(自習用)】学習の機会
インターネットというか、このハイパーテキストというのは、
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ネットワーク的で、拡張しやすい、自由に飛べるセレンディピティと言えるかもしれないと、そう感じる。
予期しない発見がある。
どこにいくかわからないものなのである。
こうしてみんなと出会えるのも、インターネットの、セレンディピティのおかげである。
セレンディピティという言葉を、科学以外の思わぬところで発見することもある。
オードリー・ヘップバーン主演の「パリで一緒に」(Paris When It Sizzles)という映画(1964年)は、
ウィリアム・ホールデン演じる脚本家が、映画の中で映画を作っていくという劇中劇になっているのだが、この中でセレンディピティが出てくる。
ホールデンから「昔からある言葉で、どんなことが起きても幸福を生み出すことができる能力だ」と説明される。
私の見た字幕では、「楽天」と訳されていたが、これを聞いてヘップバーンが「楽天?」と聞き返すのだ。
どんな困難の中にあっても、希望の光を発見する才能が、セレンディピティなのである。
2001年には、ジョン・キューザック主演の「セレンディピティ」という映画もできた。
女優のケイト・ベッキンセールが、とてもいい映画だが、「めぐり逢えたら」に似たような設定というのが悔やまれる。
しっかし、こんな文章ばかり書いていて何になるだろう?と、不安になることがある。
だが、セレンディピティというのは、生活の知恵なのだ。
井上ひさしが「出っ歯の十得」を書いたのを真似て、安野光雅は「出っ腹の十得」というのを考えて、曰く「孫を雨宿りさせられる。
上にものを置いて机代わりに使える。
いざというとき大事なところを火傷しなくてすむ。
カメラのフィルム交換の時にちょっとした台になる。
雨の日でも花火ができる。
土左衛門になった時は早く見つけてもらえる・・・」だそうだ。
そして、阿川佐和子は、「いつもひとりで」の中で、結婚しない十得を考えている。
「いつもひとりで」阿川佐和子(著)
「門限がない。
友達と長電話をしていても亭主に文句を言われない。
毎日毎食、料理を作らなくてすむ。
自分の都合で寝坊ができる。夜更かしもできる。
お風呂場から裸で出てきても大丈夫。
テレビを独占できる。
ワイシャツのアイロンかけをしなくていい・・・」
そして、子どものいない十得は、「お弁当を作らなくていい。交通事故にあったんじゃないかとヒヤヒヤしないですむ。受験戦争の苦労がない・・・」だそうだ。
頭をプラス思考に向けようと思ったら、できるだけ、具体的な例を思い浮かべるにかぎる。
つまり、セレンディピティは、プラス思考で生きていくことにつきるのである。
実際、ノモス的人間に囲まれていると、カオス的人間は生きにくい。
生きづらい。
周りがみんな敵に見えてくるものだ。
ゴーゴリの短編に「鼻」がある。
「鼻/外套/査察官」(光文社古典新訳文庫)ゴーゴリ,ニコライ・ワシーリエヴィチ(著)浦雅春(訳)
朝、ある役人が鼻のにきびを見ようと鏡をのぞいて驚いた。
鼻がなくなり、のっぺらぼうなのだ。
逃げた鼻を探すため彼は街へ、と幻想的な物語を滑稽に描く。
「不合理というものはどこにもあり勝ちなこと・・・・こうした出来事は世の中にあり得るのだ」ともっともらしく書くのがおかしい。
いきなり虫になるカフカの世界や、みんな犀になっていく、イヨネスコの世界も不条理だ。
私自身も、いつか、セレンディピティができ、カオスの大切さを周りに納得してもらえる日が来ると、信じて生きていこう。
「果報は寝て待て」という言葉がある。
文献では、正保2年(1645年)発行の俳諧作法書『毛吹草(けふきぐさ)』の中の、ことわざ集の中に、「くはほうはねてまて」と登場する。
「毛吹草」(岩波文庫)新村出(校閲)竹内若(校訂)
何もしないで寝ているのではない。
人事を尽くして天命を待つということだ。
家宝が空の上から降りてくるのでは決してない。
「あなたはどうやって万有引力の法則を発見したか?」と聞かれたニュートンは、答えたのが有名だ。
「ひたすら考えつづけることによって」とニュートンは答えた。
ということで、果報は寝て待て!
三年寝太郎のように寝ころんで、水平思考をしようっと!
そうそう、まことに不思議なもので、「果報は寝て待て」を実証するような研究がなされていた。
2004年の1月に発表された記事である。
独リューベック大学の研究で、十分な睡眠が「ひらめき」を促すことが分かった。
研究グループは、18―31歳の66人が、8つ並んだ数字の列を7つの数字の列に変換し、7番目に来る数字を答えていくゲームをするうちに、7つの数字の並び方の規則性を発見できるかを確かめた。
ゲームでは「1、4、9」の数字からなる8つの数字の列を使う。
並んだ数字が、「同じだったらその数字を選ぶ」と、「違ったならもう一つの数字を選ぶ」だけがルール。
変換した7つの数字の列には、7番目が2番目と同じになるという規則性がある。
このゲームを3回した後、〈1〉8時間寝た〈2〉8時間起きていた(夜間)〈3〉同(昼間)――の3グループに分かれ、再び同様のゲームを10回行った。
この結果、再挑戦で、ひらめいて規則性を見抜いた人は、〈2〉と〈3〉のグループでは、ともに22人中5人(22・7%)だったのに、〈1〉では、2倍以上の13人(59・1%)に上った。
事前の学習なしに、ただ寝た後にゲームを行っただけでは、ひらめきに差はなかった。
研究グループは、一時的に蓄えられた記憶が、睡眠中に再活性化され、記憶として整理される過程で、それまでの知識や記憶と相互作用し、ひらめきを促したと推論している。
余談だが、息抜きがうまいことも、指導者として大切だ。
第二次大戦で、英国を勝利に導いたチャーチルは、空襲下のロンドンでも、昼寝の習慣を守っていた。
ニクソン元大統領は、「指導者とは」で、アイゼンハワーやケネディなどの大統領に向けられた、休暇が多すぎるとの攻撃を間違いだと一蹴している。
「指導者とは」(文春学藝ライブラリー)ニクソン,リチャード(著)徳岡孝夫(訳)
正しい決断を下せるかどうかが重要で、ゴルフで気晴らしができるなら、「遠慮なく書類を擲ってゴルフ・コースに出るべきだ」と勧めている。
アハ体験ということが喧伝されるようになった。
分からない図形があって、一度、アハと分かると、以後は、それ以外には見えなくなるようなものだ。
これを広めた茂木健一郎「「脳」の整理法」には、次のような言葉が書かれている。
「「脳」整理法」(ちくま新書)茂木健一郎(著)
是非、心に留めておきたい。
「学習とは、教室の中で答えの決まったドリルをやることだけではありません。
先に見たように、脳の中の神経細胞の間の結びつきは、常に変化し続けています。
脳は、いわばつねに学習し続けているのであり、その中で、「鯉」はやがて「竜」になるような変化が訪れることが実際にあるのです。
学習の機会は、日常生活の思わぬ局面で訪れます。
街を歩いていて、ふと耳にした言葉や、集会で偶然出会った人の話。
新聞でたまたま目にした記事。
家の近所を散歩していて気づいたこと。
日常の行為を繰り返す中で、偶然出会う体験の中に隠れている偶有性を私たちの脳が整理する中で、思わぬ発見がある。
その発見が「私」を変えていき、ときには、自分自身の人生を変える劇的な変化をもたらす。
そのような、人生における絶えざる学習のプロセスの中に埋め込まれているのが、セレンディピティなのです。
今日のように、急速に変化する時代には、ある一定の知識を身につけておけば、それで一生十分ということはありえません。
むしろ、自分の脳をオープンにしておいて、いつでも生きるうえで必要な何かが入ってくるように、スペースを空けておく必要があります。」
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