見出し画像

【LAWドキュメント72時間】ドキュメント弁護士

弁護士とは、法律の専門家として、社会生活における事件や紛争の解決、予防、対処などの業務を行う国家資格です。

弁護士の役割は「人の権利を守り、正義を実現すること」とされています。

弁護士の主な業務は次のとおりです。

1.裁判や調停、交渉などの法律事務全般を行う。

2.契約書の作成や内容のチェックなどを行う。

3.依頼者の権利や利益、人権などを守る。

4.争いを未然に防ぐための活動を行う。


■テキスト:「ドキュメント弁護士 法と現実のはざまで」(中公新書)読売新聞社会部(著)

[ 内容 ]
冤罪を晴らし、公害や薬害の被害者を救い、国際ビジネスの橋渡しもする―そんな弁護士像が揺らぎはじめた。
依頼者の信頼を裏切る不祥事や弁護士による刑事事件が続発し、国民が抱く「聖職」のイメージは崩れつつある。
在野法曹の世界で今、何が起きているのか。
弁護士になるまでの道程、刑事・民事弁護での奮闘と苦悩、犯罪被害者ケアの取り組みを追い、弁護士のあり方をめぐる様々な問題点とその解決策に迫る。

[ 目次 ]
序章 ひまわりの虚像―マスコミをにぎわす弁護士たち
第1章 弁護士はどのようにして生まれるのか―難関試験と業界
第2章 容疑者、被告の“権利”を守る―刑事弁護の苦悩と挑戦
第3章 被害者とともに泣く―忘れられがちな“弱者”の存在
第4章 他人事でない民事のトラブル―泣き寝入りか、訴訟か
第5章 二十一世紀の弁護士を考える―司法制度改革の行方

[ 問題提起 ]
弁護士の実務を取材したルポルタージュ。

著者は、弁護士→米ローファーム→公正取引委員会(役人)→大学教授(学者)と、企業法務以外の法律職の殆どすべてに携わった特異な経験をもつ村上政博氏。

「弁護士は一生変化のないエンドレスな仕事」

「役人は仕事にやりがいは感じるが、長時間労働等で犠牲にするものは多い」

「学者は最初に師とする教授のあたりはずれで一生がきまる」

など、経験者ならではの実感溢れるキャリア観が語られています。

おそらく、教授として大学の生徒たちに将来のアドバイスをするために、この本を書かれたのではないかと推測します。

[ 結論 ]
殺人、少年事件、性犯罪、交通禍、医療過誤、労働事件、隣人訴訟など、刑事・民事を問わず、また原告側・被告側の別なく、様々なケースが紹介されている。

本書は、事件の背景や当事者の心情についても踏み込んでおり、事件当事者の心労の大きさが痛いほど伝わってくる。

弁護士は、その当事者の心痛にまず真摯に向かい合わなければならないわけで、少なくとも精神面で激務であることは間違いない。医師と同様、試験の成績には表れない適性がかなり求められると感じた。

今、司法制度改革による司法試験の合格者増の影響で、弁護士の平均年収が下がってきているという。

そんな著者曰く、今後法律家のキャリアの選択肢としての企業法務担当者の人気は向上するだろうとのこと。

渉外事務所の人気が急上昇し事務所内での競争がより激しくなる一方、法曹人口の拡大が渉外事務所の待遇低下を招く結果、企業法務という現場よりの面白い法律事務ができかつ給与も保障される企業法務担当者の人気が相対的に高まるというのが、その理由。

一見私の持論(企業法務部は衰退する)とは反対のことを言っているようですが、つまるところ、何の専門性も持たないままただ法務部にいるようでは、渉外事務所から流出してくるプロフェッショナルに勝てず居場所がなくなるという意味では、私の危機感と一致しています。

[ コメント ]
本書の発行は2000年なので、最近の分析はないのだが、業務の大変さと収入とを勘案したときに、今後は割に合わない職種になっていくんだろう。

高収入目的の志の低い弁護士が淘汰され、本当に適性のある弁護士だけが残るような仕組みになっていけばよいのだが。

いいなと思ったら応援しよう!