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【LAWドキュメント72時間】ドキュメント裁判官

裁判官は、憲法や法律に基づいて、裁判所が扱う事件について公正な判断を行う国家公務員です。

裁判官は、弁護士や検察官と並んで「法曹三者」と呼ばれ、司法試験に合格した人だけが就くことができます。

裁判官の主な仕事は、当事者の主張や証拠を基に、法律上の判断を下して判決を言い渡すことです。

裁判官は、事件の種類や担当する裁判所によって役割が異なり、民事事件、刑事事件、家事事件、少年事件などを取り扱います。

裁判官には、次のような特徴があります。

1.憲法や法律に拘束されるほかは良心に従って判断する。

2.広い視野と公正な立場で物事を正しく判断する資質・能力が求められる。

3.公明正大で、冷静な判断力を持ち、他人の意見や外部からの圧力に惑わされない精神的な強さが求められる。

4.裁判官の身分および独立性が保障され、他の国家機関の指揮、命令を受けずに職権を行なう。


■テキスト:「ドキュメント裁判官 人が人をどう裁くのか」(中公新書)読売新聞社会部(著)

[ 内容 ]
「判決と国民感情に隔たりがある」「裁判に信頼が置けない」という声が聞かれ、裁判官による不祥事もしばしば取り沙汰される。
司法制度改革をめぐる論議でも、「国民が裁判に積極参加できるシステムを」との意見が大勢を占め、裁判員制の導入が決まった。
司法の担い手である職業裁判官たちに今、何が起きているのか。
法服をまとった「聖職者」たちの重責と苦悩とは。
人が人を裁く現場を追い、あるべき司法の姿を探る。

[ 目次 ]
第1章 刑事裁判(東名高速二児焼死事件 オウム真理教事件・松本智津夫公判 ほか)
第2章 民事裁判(ハンセン病国家賠償請求訴訟 尼崎公害訴訟 ほか)
第3章 最高裁判所(ある分限裁判 十五人の判事の人選 ほか)
第4章 素顔の裁判官(抜擢判事の挫折 自殺したエリート判事 ほか)

[ 問題提起 ]
「検察」と言えば政官界汚職事件などの不正に鋭く切り込んで脚光を浴びる“特捜部”をすぐイメージしがちですが。

本書では、それだけでなく全国の地検などに取材し、我々が普段接することのない検察官の仕事の全貌を如実に伝えてくれています。

そこには、“「秋霜烈日」の理想を胸に”と帯にあるように、犯罪被害者の代理人的立場で、彼らの無念を晴らそうと捜査に奔走する「正義」の実践者の姿もあれば。

裁判員制度の施行に向けて、迅速で解りやすい審理のあり方を模索する姿、更には死刑執行の立会いにおいて(これも検察官の仕事)、これは国家による殺人ではないかと悩む姿などが見られます。

[ 結論 ]
捜査だけが彼らの仕事ではなく、選抜された幹部(候補)は、法務省において、法案の根回しといった国会対策や司法行政に絡む仕事もしているのです。

検察が告訴した事件の99.9%が有罪となっていて、日本におけるこの数字は諸外国と比べても飛び抜けて高いとのことで、これは検察の優秀さ、確実に有罪であるとの見通しが無ければ告訴しないという慎重さの現れだと思います。

一方で、裁判が始まると、あらかじめ想定した判決から遡及して事件を組み立ててしまう怖れもあるのではないかという気もしました。

犯罪被害者が自らの無念を晴らそうとする際に、検事に期待するしかないという状況もあるかと思いますが、検事も被害者たちの期待に応えるべく奮闘するという図式がそこにはあり、その結果「遺族感情」と「正義」がダブってしまう。

このことが、政治的・社会的事件においても敷衍されていて、国民感情によって検察が積極的に動いたり、或いは消極的だったりすることがあるのではないかと、個人的には思いました。

副題に“揺れ動く「正義」とあるが、これは、検察は今まで自らが信じてきた「正義」に則って行動してきたが、これからはそれだけでは国民の支持・理解は得られないのでは、という意味で使われているようだが・・・

[ コメント ]
中公新書の『ドキュメント弁護士』(‘00年)、『ドキュメント裁判官』(‘02年)に続く読売新聞連載シリーズの新書化で、前作から4年をぶりの刊行ということからも「検察」を取材することの大変さが窺えます。

1回に2,3の話を盛り込んだ連載をほぼ焼き写して新書化しているため、カバーしている領域は広いが、1冊の本として読んだ際に“細切れ感”が拭えないのが残念。

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