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【LAWドキュメント72時間】平岡直子選「五歌仙」
いま生きている歌人のなかで、平岡直子さんが、もっとも重要だと思う五人は、以下の通りです。
▶宇都宮敦
ネコかわいいよ まず大きさからしてかわいい っていうか大きさがかわいい
真夜中のバドミントンが 月が暗いせいではないね つづかないのは
つぶやきは 北極グマがゆっくりと水にとびこむ 聞き流していい
生きていることはべつにまぐれでいい 七月 まぐれの君に会いたい
どらやきに餅が入っていて君がよろこぶ 餅はいいね 栗もね
君のかばんはいつでも無意味にちいさすぎ たまにでかすぎ どきどきさせる
三月のつめたい光 つめたいね 牛乳パックにストローをさす
「空耳」にすこし長めのルビをふる「しろじにしろのみずたまもよう」
(宇都宮敦『ピクニック』より)
▶飯田有子
すべてを選択します別名で保存します膝で立ってKの頭を抱えました
(飯田有子『林檎貫通式』より)
▶正岡豊
ユニクロに誰にもさわれない月の模様のシャツがあってもいいね
中国も天国もここからはまだ遠いから船に乗らなくてはね
ねえ、きみを雪がつつんだその夜に国境を鯱はこえただろうか
時刻表つまれていたる十月の書店にみどりの服を着て入る
ゆきたくて誰もゆけない夏の野のソーダ・ファウンテンにあるレダの靴
きみがこの世でなしとげられぬことのためやさしくもえさかる舟がある
(正岡豊/ネットプリント「十月の歌」2017年より)
▶我妻俊樹
「先生、吉田君が風船です」椅子の背中にむすばれている
月光はわたしたちにとどく頃にはすりきれて泥棒になってる
スピードを百まで上げてねむるのよ世話する光とされる光
ヘッドフォンで殴りかかってきたくせに友達なのかキスしてくれ
らくがきを消された痕が月にある 心電図ありがとう大事にする
言うとおりにしたのに動物もポルシェも来ないね明けない夜はないね
あの頃は裏から光る看板のようにブログに嘘を書いたよ
(我妻俊樹/同人誌「率」誌上歌集『足の踏み場、象の墓場』2016年より)
▶雪舟えま
逢えばくるうこころ逢わなければくるうこころ愛に友だちはいない
(雪舟えま『たんぽるぽる』より)