【本】私の知らないところでどうか勝手に幸せになってください
べろべろに酔っぱらった私の手を引いて、
彼が入ったのはホテル。
だめ。
絶対だめ。
この恋は実らせちゃだめ。
そう思いながらも、もう誰も私たちを止められなかった。
そこから彼との関係は9ヶ月近く続いた。
9ヶ月のあいだに、本当に色々なことがあった。
映画に行ったりおしゃれなカフェに行ったり、
美味しいご飯もお酒も。
旅行にも行ったし、一緒にリモートワークもした。
私の部屋でも、ホテルでも、
何回も何回も、私たちは体を重ねた。
体を重ねるとき、彼は何度も私に「愛してる」って言ったけど、
私はずっと「ありがとう」としか言えなかった。
私自身も彼のことを『愛してる』って認めてしまったら、
結ばれない事実がつらくなるから。
この先を望んでしまうから。
だから9ヶ月のあいだに何度か、
「このままじゃだめだ」ってなって、
私から別れを告げて連絡先も消したりした。
けど、その度にあらゆる手段を使って連絡をしてくる彼に負けて、
関係を続けてしまった。
だけど、自分の中の彼に対する『好き』が大きくなればなるほど、
『幸せ』よりも、
会ってないときの『もやもや』の方がどんどん大きくなって、
会わない時間のしんどさに耐え切れなくなって、
もう本当に終わりにすることにした。
私の誕生日を最後にするとふたりで決めた。
けど、私の誕生日は、彼と一緒に過ごせなかった。
なぜなら、
私の誕生日を目前にして、
奥さんにバレたから。
つづく