バットマン:ロンリー・プレイス・オブ・ダイイング ネタバレあり感想・あらすじ解説
バットマン翻訳コミックの感想第13回は『バットマン:ロンリー・プレイス・オブ・ダイイング』です。
概要
本作は翻訳本『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』の中に表題と共に収録されているエピソードとなります。
『デス・イン・ザ・ファミリー』は2代目ロビンであるジェイソン・トッドが死亡してバットマンがサイドキックであるロビンを失うエピソードです。
本作はその後のバットマンの様子が描かれ3代目ロビンとなるティム・ドレイクがバットマンと出会うエピソードとなります。
現役ではレッドロビンとして活躍しているティム・ドレイクの初登場のエピソードでもあります。
前作『デス・イン・ザ・ファミリー』では登場しなかった初代ロビンでありナイトウィングとして活動しているディック・グレイソンも登場します。
さらにナイトウィングの所属している「ティーン・タイタンズ」のメンバーも登場します。
また、メインのヴィランとしてトゥーフェイスがバットマンを相手に抹殺計画を企てます。
あらすじ
物語は前作『デス・イン・ザ・ファミリー』から数か月後の話となります。
ロビンであったジェイソンを亡くしたバットマンは周りから自分を見失っていると言われるほど変わってしまいました。
そんな中トゥーフェイスはある計画を企てます。
バットマンに助けが必要だと思った少年ティム・ドレイクは初代ロビンであったディック・グレイソンに会いに行くのでした。
バットマンにとってロビンとはどのような存在なのか?
3代目ロビンの誕生が描かれます。
登場人物(ネタバレ有り)
バットマン(ブルース・ウェイン)
主人公。
ゴッサムシティの大富豪ブルース・ウェインがバットマンとして犯罪者を取り締まっている。
数か月前にジェイソンを亡くしてから周りに心配されるほどの様子に変わっている。
ナイトウィング(ディック・グレイソン)
元初代ロビン。バットマンとのコンビ解消後はナイトウィングと名乗りティーン・タイタンズに所属して活動している。
元々はサーカス団のブランコ乗り。
ティム・ドレイク
バットマンとロビンに憧れる13歳の少年。
独自の調査と観察眼でバットマンとロビンの正体に気づく。
ジェイソンを亡くし様子が変わったバットマンを心配してディックに会いに行く。
アルフレッド・ペニーワース
ウェイン家の執事。
ブルースのバットマンとしての活動を支える。
ジェイソンを亡くし様子が変わったブルースを心配する。
ジェームズ・ゴードン
ゴッサム市警の本部長。通称ジム・ゴードン。
バットマンとは10年の付き合いがあり親友。
ロビンの死は知らないが様子が変わったバットマンを心配する。
ティーン・タイタンズ
若い世代を中心にして結成されたヒーローチーム。
ナイトウィングも所属している。
以下メンバー
サイボーグ(半身が機械のヒーロー。チームリーダー)
スターファイヤー(宇宙人。ナイトウィングの彼女)
チェンジリング(動物に変身する能力を持つ)
レイブン(悪魔と人間のハーフの超能力者)
ジェリコ(デスストロークの息子)
トロイア(ワンダーウーマンの妹)
スピーディ(グリーンアローの相棒)
トゥーフェイス(ハービー・デント)
元々は正義感の強いゴッサムの地方検事だったが顔の半分に酸をかけられたことをきっかけにヴィランと化す。
バットマン、ゴードンとは友人だった。
2の数字にこだわりコイントスで行動を決める。
ラベッジャー
ゴッサムで凶悪事件を起こしバットマンに追われるヴィラン。
実はバットマンを殺すためにトゥーフェイスの指示で動いていた。
謎の声
トゥーフェイスの部屋でラジオから話しかけてくる謎の声。
トゥーフェイスとバットマン抹殺の計画について話し合う。
解説・感想(ネタバレ注意)
第1章:疑念
物語はバットマンとラベッジャーというヴィランがダムで対決をしている所を何者かが観察している所から始まります。
対決はバットマンが勝ち、ラベッジャーはダムの底に落ちていきました。
対決を観察していた者はカメラを仕舞い、ブルース・ウェインはもう充分、次はディック・グレイソンと考えます。
工事中の家の一室で男がラジオから流れてくる謎の声と会話をしています。
男はラベッジャーを使いバットマンを殺そうとしましたが失敗したと語ります。
謎の声はバットマンを殺すことを協力すると男に語ります。
ラベッジャーとの死闘から帰ったバットマンはラベッジャーから受けた傷の痛みと疲労で一晩中苦しんでいました。
バットマンの写真や記事を並べてバットマンを憂う者はある写真を取ります。
写真には少年と少年の両親、そしてディック・グレイソンと彼の両親が一緒に写っていました。
目を覚ましたブルースは看病をしていた執事のアルフレッドに礼を言います。
アルフレッドはジェイソンが死んでからブルースが注意力散漫になり傷が増えていると言い指摘しますがブルースは何も答えませんでした。
ラジオから流れる謎の声と会話する男はバットマンを抹殺する計画を企て、バットマンを監視していた者はディックの所属しているティーン・タイタンズのアジトであるタイタンズタワーを監視しますがディックは見当たらず、ディックの恋人のスターファイヤーの部屋も覗きますがやはり居ません。(盗撮は犯罪です。)
バットマンはラベッジャーを利用した男の計画通りに誘いこまれますがバットマンは男の手下2人がラベッジャーと雇い主が同じこと、彼らの犯罪が「2」に関係していることからトゥーフェイスが復活して自分を狙っていることに気づきます。
ラジオからの謎の声と計画を企てていたのはトゥーフェイスでした。
ディックを追う者はスターファイヤーのマンションを訪れディックについて尋ねますが彼女曰くディックは数週間前にタイタンズを脱退したとのこと。
ディックのアパートに忍び込むとディックが以前所属していたヘイリーズ・サーカスが廃業になるという記事がありました。
ディックの行先が分かり、ヘイリーズ・サーカスに向かう少年の後ろ姿が映ります。
第2章:原点
ディックの行方はタイタンズも知らず、サイボーグが探しますが見つかりません。
スターファイヤーは訪ねてきた少年のこともあり心配します。
タイタンズのメンバーはディックの部屋に誰かが忍び込み金庫の中のスクラップ帳の抜けに気づきます。
その頃当のディックはかつて所属していたヘイリーズ・サーカスを訪れます。
再会したサーカス団のメンバーに懐かしまれますがディックはサーカス団の雰囲気から衰退を感じます。
さらにサーカス団同士での揉め事もディックは目撃するのでした。
そしてサーカスの公演中、少年がディックを探す中トラが調教師を食い殺すという事件が起こりますがピエロに扮したディックがトラを抑え込みます。
少年はピエロの動きからディックだと気づきました。
サーカスは中止になりましたが少年は隠れていたところが見つかり、ディックと出会います。
トラの事件はサーカス団員の企みであり、ディックが犯人を捕まえて少年から賞賛をされます。
少年はディックにバットマンが戦って傷ついている写真を見せます。
自分たちの正体を知っていることを不思議に思うディックに対して少年はジェイソンが死んで以来ブルースがおかしいことを話し、ロビンの存在が必要だと語ります。
第3章:相似
ラベッジャーや手下を利用してバットマンを殺そうと計画していたのはトゥーフェイスでした。
バットマンとトゥーフェイスはお互いの思考を読みトゥーフェイスの犯罪計画を考えます。
ディックはサーカスに訪れた少年ティム・ドレイクをアルフレッドに会わせます。
ティムは以前ディックに会った事があり、それはディックの両親が空中ブランコ中に事故で亡くなった日のことでした。
ティムは事故の前に両親とともにグレイソン一家と写真を撮り、その後ティムの目の前でディックの両親は亡くなったのです。
事故現場にバットマンが現れ、ディックに寄り添っていたこともティムは覚えていました。
ティムは事故の記憶を悪夢として何度も見せられていく内にディックの動き(4回転ジャンプ)を覚えてニュースで見たロビンの動きが同じだったことからロビンの正体がディックだと気づき、ディックを引き取ったブルース・ウェインがバットマンということにも気づいたのでした。
その後ディックがナイトウィングとなりロビンがジェイソンへと変わり、ジェイソンが亡くなってロビンがいなくなってからバットマンが異常で暴力的になったとティムは言います。
ティムにとってバットマンとロビンは大切な存在で、ロビンになることを夢みて鍛えてもいるとのこと。
バットマンにはロビンが必要でそれはナイトウィングのディックではないと語ります。
一方でトゥーフェイスは双子の子供を誘拐してバットマンをおびき寄せますがトゥーフェイスは計画を変更してカジノを襲います。(カジノの名前がクラブ・ジェミニ(双子)、ポーカーの優勝賞金が2200万ドルとバットマンがトゥーフェイスを誘い込むために計画をしたイベント)
トゥーフェイスの計画は成功して2200万ドルを目の前にしましたがコイントスの結果金は奪いませんでした。
バットマンは双子の子供を救出し、結果的にトゥーフェイスの計画は失敗しましたがトゥーフェイスを捕まえることは出来ず、バットマンはジェイソンが死んで以来自分が変わってしまったことを自覚するのでした。
第4章:帰郷
ティムはディックにロビンに戻ってほしいと言いますがディックはロビンは昔の話と言って断りナイトウィングに着替えます。
しかしティムはロビンの服を着てほしいと頼みます。
ディックがまだ子供の頃に着てたコスチュームです。着れるわけありません。
アルフレッドもブルースがロビンを2度も失い失意の底にあると言います。
ティムはディックにバットマンに相棒が必要であり、心配する人が必要と語りますがディックは怒ります。
バットマンはディックがナイトウィングとして独立したことで絆を失ったように感じていましたがディックはちゃんとバットマン(ブルース)を大切に思っていました。
ディックがバイクで去って行きましたがティムはやはりバットマンとロビン永遠に不滅、伝説の存在だと言って涙を流します。
ディックはゴードンにバットシグナルを照らしてもらいバットマンを待ちますが来ません。
ゴードンは最近バットマンが落ち込んでいることに気づいておりディックに原因を聞きますがディックは言えないと返します。
そこにタイタンズのメンバーのレイブンが現れ、バットマンからのメッセージをディックに渡していきました。
ディックはアルフレッドにメッセージの件を相談します。
なぜ直接言わないのかということには遠回しに助けを求めているとアルフレッドは答えます。
ブルースとディックの関係性に対してティムがアルフレッドに尋ねるとかつて2人は親子のようだったと語ります。
ディックが去った後にジェイソンを引き取ったのも息子を求める気持ちがあったからとのこと。
バットマンにとってロビンは単なる相棒ではなく家族としての存在が大きかったとのことです。
普段は見せないこういう人間味もバットマンの魅力だと思っています。
ディックはバットマンのメッセージを解読した場所に行くとバットマンがいました。
ディックがなぜ呼んだのか聞くとバットマンは力を借りたいと素直に答えます。
ディックも快く了承します。
2人が来たのはトゥーフェイスのアジトだと思われる場所でした。
バットマンはディックの慎重になるように忠告する言葉も聞かずにアジトに飛び込んでいきます。
ディックも地下室に侵入しますがそれはトゥーフェイスの罠で2人は爆発に巻き込まれます。
爆発の直前にディックはアルフレッドにアジトの場所を伝えていました。
ディックの信号で危機を察したティムはなんとかしなくてはと思います。
そこにはティムがディックに着てくれとせがんだロビンのコスチュームがありました。
第5章:再生
アルフレッドは覚悟をして2人を待つしかないと言いますがティムは待ってられないと言ってロビンのコスチュームを手にします。
アルフレッドはジェイソンのこともあり止めようとしますがティムはバットマンにはロビンが必要と答えるのでした。
トゥーフェイスはさらにアジトを爆発させますがそこにロビンのコスチュームを着たティムが現れます。
ティムは初めての戦いに苦戦しますがアルフレッドの助けもあり一旦トゥーフェイスを退けました。
ティムはアジトに埋まったバットマンとナイトウィングを助け出しますがバットマンはティムに対してお前はロビンじゃないと否定をします。
アルフレッドもディックもトゥーフェイスを退けたティムを賞賛しますがやはりバットマンは受け入れません。
それでもティムはバットマンにはロビンが必要だと説きます。
バットマンは法のシンボルであり、正義のシンボルであり、ロビンもシンボルだと語ります。
バットマンはその言葉に黙りますが一旦トゥーフェイスを追うことにします。
ティムがトゥーフェイスに発信機を付けておいたおかげで逃亡先が分かり、バットモービルでバットマン、ナイトウィング、ティムが向かいます。
トゥーフェイスは自動車解体所でバットマン達を迎えますがバットマンとナイトウィングの連携に追い詰められます。
トゥーフェイスはナイトウィングの隙を付いて反撃をしてとどめを刺そうとしてコイントスをしますがバットマンがコインが落ちる前に掴みとります。
良いやりとりです。トゥーフェイスは敗北して捕まりました。
3人はウェイン邸に戻りますがブルースはティムを今後ロビンとして認めるかは時間をかけて判断することにしました。
ブルースもバットマンという存在にはロビンが必要だということを認めるのでした。
ティムは喜び、努力することを誓います。
トゥーフェイスに指示を出していたラジオから謎の声が流れます。
謎の声の正体は病院に入院中のジョーカーでした。
ジョーカーは新しいロビンの存在をターゲットにする宣言をして笑い、このエピソードは終わります。
ロビン(ジェイソン)を失い不安定になったバットマンの姿が描かれるなどロビンの存在がバットマンにとってかけがえのないものであるということが強調されているエピソードでした。
さらにアルフレッド曰くですがバットマン(ブルース)にとってロビンは求めていた家族のような存在でもあったとのこと。
幼い頃に両親という家族を失ったブルース・ウェインにとって息子のような存在のディックやジェイソンを失うことは耐えがたいことだったのですね。
いまでは冷静で大人びたレッドロビンとして活躍しているティム・ドレイクの初々しい姿が見れるのも良いですね。
ここから十数年はダミアン・ウェインが登場するまで3代目ロビンとしてバットマンのサイドキックとして活躍をします。
メインヴィランのトゥーフェイスも「2」やコイントスに異常にこだわったりとトゥーフェイスらしさと狂気が出ていて良かったです。
ディックもロビンではなくナイトウィングとなってもバットマン(ブルース)の為に危険を顧みないなど深い関係性が感じられます。
まとめ
3代目ロビンであるティム・ドレイクの初登場とロビンへとなる過程の始まりが描かれている本エピソードはバットマンとバットファミリーのファンには必須ですね。
バットマンにとってサイドキックであるロビンがどういう存在かが深く描かれて良かったです。
というわけで『バットマン:ロンリー・プレイス・オブ・ダイイング』でした!
読んで頂きましてありがとうございました!
次回の感想については大地震によって孤立して無法地帯と化したゴッサムシティが舞台の超大作『バットマン:ノーマンズ・ランド』を書こうと思います!
また読んで頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします!