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海外で歳をとる

イギリスに移住して27年。第二の人生を考える。

私は現在57歳。気づけばいわゆるアラ還といわれる立派なおばちゃんになっていました。日本を離れてイギリスで暮らして27年になります。
海外で暮らすことになったきっかけは、イギリス人である夫との国際結婚です。夫はバツイチで当時8歳の息子がいたこともあり、結婚した当初はイギリスで暮らしていくことを決めました。私は日本では看護師で助産師で保健師で、当時は看護学校の教員としてキャリアバリバリで働いていたんだけど、仕事もすっぱり辞めて日本を飛び出したのが30歳の時です。

いや~、若かったですね。完全に若気の至り。盲目でアホになっていました。笑。当時私は英語が話せなかったし、海外で生活した経験もなく、海外で暮らすことに特別興味も持っていませんでした。イギリスには夫以外に知り合いも友達もいず、突然バリバリのキャリアウーマンから、一人では何もできない外人のおばちゃんになってしまった私は、移住してからの最初の数年はほんまに苦労しました。

それでも子育てをしながら、働きながら、少しずつイギリスでの暮らしの基盤が固まっていき、それと同時に本当の自分自身を理解しながら暮らしていけるようになっていきました。
今思えば、イギリスに嫁ぐという、あの時の若くて無謀な決断は、私自身にとっては実はベストなものやったんやと思います。
もしもあのまま、バリバリキャリアを重ねながら日本で暮らしていたら、私はイギリス生活でもがきまくったような苦労をすることもなく、キャリアや言葉を取っ払った自分自身というものを知ることなく、年齢だけを重ねていたでしょうからね。
あの無謀なイギリス移住のおかげで、今の私がある、というのは真実やと思います。

さてそんな私もアラ還となり、子育ても終了し、第二の人生突入の時期がやってきました。
さぁ〜て、私はこれからどこで、どんな風に生きていきたいのか。

結婚当時8歳やった義理の息子は結婚して2人の父親になり、私と夫の間に生まれた一人息子は大学を卒業して独り立ちしています。夫の母は他界し、夫の父は末期がんで闘病中やけど、今のところ自立して生活しています。
イギリスの生活には、そこそこやりがいのある仕事(病院の乳がん検診の部署でアシスタントとして働いています。)もあり、一戸建てに住み、信頼できる友達もいて、家族関係も良好で、なんの不自由も心配もありません。
でも、本音を言えば、心の奥底では、ここいらでイギリスでの生活を切り上げて日本に帰ろうか、という気持ちもありました。もう十分ここで頑張ったやん。夫との関係が極端に悪いわけではないけれど、ラブラブってわけでもない熟年夫婦。もうこの辺で全て整理整頓して、日本に帰る選択もあるよなぁ。日本には80歳を超えた母が1人暮らしをしているし、今日本に帰れば、私はまだ看護師として働きながら、日本での生活の基盤をつくっていけるはず。

私は迷っていました。今まで積み上げできたイギリスの暮らしにはなんの不自由も不満もない状態です。だけどこのまま、ここで歳をとっていくのは(正直)つまらないし、漠然とした不安もある。困ったなぁ…..。

そんな時コロナで延び延びになっていた銀婚式の記念旅行として、私たちは夫婦でノルウェーに行ったんです。
そこは大きな自然でした。他には何もない大きな、ひたすらの自然。私たちは世界で一番北の端にあるゴルフ場で3日間ゴルフをしたんです。
1日目はゴルフの後に満点の星空とオーロラを見て、感動で泣きそうになりました。2日目は大嵐の中、風に吹き飛ばされそうになりながら、そして最終日の3日目は、一転して穏やかな青空と低い太陽の下で2人でゴルフをしました。楽しかったですね。なんかしみじみ感動しました。
振り返ってみれば今まで私たち夫婦は子育て、合気道、ゴルフと、いろんなことを一緒にやってきたけれど、ほんまの意味で2人で一緒に頑張ってきたんやろうか。一緒に楽しんできたやろうか。
私たちは日本人とイギリス人で、性格も全然違うし、お互いの地雷を踏むこともしょっちゅうです。2人共がコミュニケーション下手で、頑固で、なんでこの人と結婚することになったんやろ、と思うこともしばしば。笑。
でも今回の旅を通して同じものに感動して、同じことを面白いと思うということも、改めて感じたわけです。しかも面白いと思うものがかなり独特やのに。笑。

この旅行をきっかけにして、今、もしこのまま私だけ日本に帰ることにしたら、将来後悔することになるかもしれない。せっかく強いご縁で結婚し、30年近く一緒に過ごしてきた人と、まだ何かチャレンジできることがあるんじゃないか。などと思うようになっていました。
そう。うっかり忘れていました。実は私、小心者のくせして、無謀なチャレンジャーだったということを。

スコットランドに移住する

ということでまたもややってしまいました。
私たちはイギリスで築いてきた暮らしを全部後ろに置いて、今度は夫婦2人でスコットランドに移住してきました。私たちの第二の人生をスコットランドで、ゴルフをして過ごしていこうと思い立ち、本当に移住してきてしまったんです。アホですね。完全に。笑。
せっかく心地よくなっていた、今までコツコツと築いてきた暮らしを全部置いて、この歳になって新しく挑戦を始めるなんて、ほんまにアホやとしか思えない。でもその反面、ちょっとワクワクしている自分もいます。

スコットランドに移住してからもまぁいろいろありました。移住してすぐに夫がリストラされ、私も仕事が決まらず、数か月にわたって夫婦で無職だったり、購入したばかりの家のお風呂が水漏れしたり、キッチンの改修をしたり、なかなか落ち着きませんでしたね。
ゴルフ三昧の日々を夢見てスコットランドに移住してきたはずやのに、最初の頃はゴルフどころではなかったです。笑。
それでも一年が経つ頃には少しずつ生活が落ち着いてきました。新しく仕事も始め、生活のリズムもできてきましたね。まぁ今回は無謀な移住も二度目となり、言葉も話せて、自分自身も(以前よりは)理解できていたので、かなり落ち着いた気持ちで毎日を過ごしてきました。
今は夫婦2人で、この自然とゴルフ場がいっぱいのスコットランドに少しずつ根を張りながら、頑張って暮らしております。

海外で歳をとっていく、ということ

今年夫は還暦を迎えます。私ももうすぐです。
私たちは家族もいないスコットランドで、この先どんどんと歳をとっていくんです。
今はまだいいです。夫婦お互いがいますからね。ありがたいことに健康で、仕事をしていて、ゴルフもしている今はまだ大丈夫。
だけどもっと歳をとったとき、ほんまに私たちは大丈夫なのかな。もしも病気になった時、もしも夫がいなくなった時、私はここで暮らしていけるのかな。

ありがたいことに私の場合、ビザの心配はありません。日本の国籍は維持したまま、イギリスでの永住権も獲得しています。それでも、医療は、年金は、介護は・・・と考えるといろいろと心配になってきます。
実は私がスコットランドで年老いた時に一番心配しているのは、食事なんですよ。あっさりしたものとは程遠いこの国で、もしも誰かのお世話になることになったら・・・と考えると恐怖で凍りつきますね。笑。
この国では病気になった時にトーストが出てくるんですよ。スープならまだいい方で、ちょっと回復したらマカロニチーズとか、フィッシュアンドチップスなんかが平気で出てきます。私は具合が悪い時にはお粥さんが食べたい。お粥さんとまでいかなくても、ごはんと梅干し以外は考えられない。これ、笑い話のようですが、ものすごく切実な問題です。

ということで、今後スコットランドで歳をとっていくにあたって、不安に思うことを掘り下げてみたいと思います。

不安に思うことを掘り下げる

1.食事

歳をとるに連れて、私はどんどんあっさりしたものを好むようになってきました。ご飯とお漬物、それからお味噌汁があればほぼ満足。(あ、ちょっと見栄を張りました。ここにお酒とアテがあると最高です。笑。)一方で夫はどんどんイギリス食に傾いています。これは国際結婚夫婦が必ずと言ってもいいほど直面する問題やと思います。
歳をとるにつれて、やはり小さい頃から食べて育ってきたものが食べたくなる傾向が強くなるように思います。だから毎日の食事で食べたくなるものが、それぞれ違ってきてしまう。
知り合いの国際結婚カップルの中には「食事は別!」としている人もいるみたいです。ほんま、毎日のことですもんねぇ。大変です。
私たちの場合は、朝と昼はそれぞれが好きなものを勝手に食べる。夜は話し合いながら、和洋ミックスで献立を立てています。でもまぁ、夫が作る時はイギリス料理(といってもシンプルに肉を焼いたり、スパゲティーにしたり。)、私が作る時は和食が多いですかね。

日本食材はこっちでも手に入ります。ただし高い。もちろんお惣菜も売ってないです。最近の日本食ブームで、ある程度の調味料や(ちょっとおかしな)和風モノはスーパーでも買えるようになりました。
でも日本のソウルフードである梅干しや納豆、お漬物や「美味しい」和食は、高いお金を払うか、あるいは自分で作るしかありません。
ということで、今ではなんでも自分で手作りするようになりました。納豆も梅干しもお味噌も。魚も自分で捌けるようになり、食べたいと思うものはほぼ自分で作れるようになったのは、心強いことです。

2.医療

イギリスの医療はNHSという国民医療サービス一択です。
国民はお給料の中からナショナルインシュアランスという保険料?医療費?を毎月支払っていて、実際に病院にかかるときは全て無料です。
イングランドでは人口増加に伴って、処方薬が有料化になったけど、スコットランドでは今でも処方薬も無料です。
国民は病気になると、まずは居住区で登録しているGPと呼ばれる医院に行きます。内科でも耳鼻科でも、とにかく問題があればまずはGPにかかります。そしてGPが対応できないような専門分野の治療が必要な人、検査が必要な人はGPの紹介で総合病院に行くことになります。
日本みたいにあちこちにいろんな科の開業医があったり、行く病院を自分で選べたりはできないんですね。

実は私はNHSの病院で働いています。イングランドで16年、スコットランドでは1年目です。私は元看護師なんですが、ユーロ圏外の国の看護師資格はイギリスでは認められていないので、私が看護師としてこの国で働こうと思ったら、資格を取り直すか、英語の検定試験を受けた後にイギリスでも働くことができるように手続きが必要となります。ということで、英語が話せなかった私は、とりあえずアシスタントとして働き始め、現在もそのままアシスタントとして働いています。

イギリスで暮らし始めた頃は「無料で医療が受けれるなんて、いいよなぁ。この国の人々は恵まれているな。」と思っていた私ですが、長年NHSで働くうちに、この国の医療システムの問題点も見えてきました。
まずはこの国で受けられる医療はNHSで定められたもの一択で、それ以外の選択はない、ということです。たまたま優れたGPにあたり、病気を正しく診断したり治療してもらえれば幸運やけど、そうでなければセカンドオピニオンもないわけです。
加えてこの数年で、コロナによってイギリスが誇るこの医療システムは完全に崩壊した、と言わざるを得ない状態に陥っています。
患者さんに最も近い存在であるGPが、直接患者さんを診なくなりました。電話で対応するのみで、病院の予約も全く取れません。電話で診察って?ってな感じですが、医師が患者と電話で話しをし、その上でアドバイスをしたり、薬の処方をするんです。えっ?それでいいの?と思うのは私だけなんでしょうか。イギリスではもう医師に診てもらうことすら難しい状態になっています。

NHSがまだ何とか医療として成り立っているのは、癌や心疾患、脳疾患など、直接命に関わる病気の人だけは、素早い対応をしてもらえるからだと思います。だけど命に直結しない婦人科とか、耳鼻科とか、皮膚科なんかは、もう待ち時間が尋常ではなく、一年半や二年というのは当たり前です。二年って…。うそでしょう?あり得ないでしょう?と思うでしょうが、実際夫は耳鼻科の診察を二年弱待っている状態です。当然診察を待っている間に病状が進行してしまうことも多く、結局は医療費を多く使うことになり、悪循環となっています。
ということで、イギリスの医療は、タダなんですが、医療崩壊に近いほどの大きな問題を抱えています。

3.年金

イギリスの年金は、国民年金が67歳から支給されます。金額は一律で、1週間に200ポンド。200ポンドというのは、感覚的には2万円ぐらいかな。つまり一か月10万に届かないほどの年金になります。
当然これだけではやっていけない、ということで、若いうちからプライベートで年金をかけている人も多いです。
持ち家があるか、ということも含めて、年金は個人によって大きな差があるようです。

ちなみに外国人でも、イギリスで10年以上働いて税金を収めている人は、国民年金が支給してもらえるみたいです。しかし全額支給されるのは、20年以上税金を納めた人です。
もし私が日本に帰国したとしても、帰国前に手続きをしておけば、きちんと年金は支給してもらえるそうですよ。

定年後に経済的に楽だと感じるためには、やはり住む家を所有しているか否かは大きいかもしれません。
ちなみに私たちはスコットランド移住によって住宅ローン無しの持ち家を確保できました(これも移住の大きな理由の一つでした。)。移住後に夫が突然リストラされて無職になったので、もし移住していなかったら、今頃はイギリスで苦しい生活をしていたかもしれない、と思うとゾッとします。

まぁでも実際には持ち家があってもメンテナンスにかかる費用や、いざ老人ホームに入る時などを考えれば、持ち家があるかどうか、というのは、イギリスにおいてはものすごく大きなことではないのかもしれません。

4.介護

イギリスでは子供が親と同居して、老後の面倒をみる、ということは日本に比べて断然少ないように思います。
こちらでは介護が必要になったら、老人ホームに入るか、自宅で訪問介護してもらうか、というのが通常です。
老人ホームに入るには、持っている財産によって支払う額が違ってきます。財産を多く持っている人は、ものすごい金額を支払わないとホームでのサービスを受けることはできません。ものすごい金額というのは、週に1000ポンド以上。つまり(感覚的には)10万円以上ですね。だから多くの人は持ち家を売って、そのお金で老人ホームの費用に当てます。
逆に貯蓄がない人は、福祉によって金額がカバーされます。つまりこっちでは、貯蓄がない人の方が、なんだかお得に老人ホームには入れる、ということです。
病院はタダやのに、老人ホームには高い費用を支払うって何か矛盾しているような気がします。イギリスでは病気になって入院できたらラッキー。病気なく歳を取り、介護が必要になると経済的に苦しい。そういう状況です。

介護に携わっている人のほとんどは外国人労働者です。介護の質は、ほんと、その人によりますね。
いい人もいれば、えーっと驚くような態度の人もいます。
お風呂は期待しない方がいいですね。してもらえるとしてもシャワーか、清拭か。洗髪はこっちでは週一回あるかないかです。でも気候が日本とは違い、ほとんど汗をかかないので、それでも十分と思うようになっている私は、イギリス人化してるのかもしれないですね。笑。

まぁもしも自分がスコットランドで介護される立場になったとしたら、うーむ、これは困った、と思うだろうけど、と同時に仕方がない、とあきらめます。ほんまに仕方のないことですもんねぇ。そういう状況を受け入れることを学ぶ時が来た、と思うしかない。
それよりももっと心配しているのは、日本にいる親の介護問題です。自分が海外へ飛び出して行った時には、親が歳をとっていくことなんて考えもしませんでした。今、いよいよ親が誰かの手を必要としている歳になり、近い将来私たち家族が直面することになるだろう、と感じています。
私は遠く離れているので、メインの介護を担うことができません。それは私自身にとってもめっちゃ苦しいことです。若い頃に無茶して海外に飛び出していった娘を、両親はいつも励ましてくれましたからね。その親がヘルプを必要としている時に自分がどう動けばいいのか。
私の父は9年前に他界していますが、その時は病気で治療中にはメールで頻繁にやりとりし、いざ亡くなる時には、私はタイミングを見計らって帰国し、父の最期を、父が唯一希望していた自宅で、家族皆で、看取ることができました。これはほんまにラッキーやったと思います。
だけど現在一人暮らしの母はどんな風に歳を重ねていくのか。今は元気に頑張ってくれているけど、将来のことはわからない。今後は日本にいる姉と連絡を取りながら、状況の変化に一つ一つ向き合っていくしかない、と思っています。

5.家族が近くにいない

これは自分たちが選んでここに来たわけですから、もうどうしようもないですねぇ。
でも遠距離家族の私たちにできることは、私たち自身が元気で楽しく暮らしていること。そして離れている家族に私たちの様子を伝えること、だと思っています。

私たちが今やっていることは、義理の息子家族や私たちの息子、イギリスと日本の親には、週に一回のペースで電話する。
そして家族の誕生日はカレンダーに印をつけて、カードと花束を贈ることにしています。 

そして私の近況や心情を伝える「我が家のニュース」を結婚して以来ずっと日本の両親に向けて書き続けてきました。FAX、Eメールそしてブログ、と書き方は変化してきたけれど、こうして書き続けていることもまた、遠く離れた家族や友人とのコミュニケーションの一つです。
特に現在書いているブログは主に日本で一人暮らしを頑張ってくれている母のために、毎週一本のペースで投稿するようにしています。
遠く離れた外国での暮らしで私がどんな事を感じているのか。どんな事を体験してるのかを、母にも一緒に感じてもらいたい。ずっとそういう気持ちで、飾らない私の正直な気持ちを、母に話すように書いてきました。(だから関西弁。笑。)
こういう私たちからの働きかけと家族の愛情で、ありがたいことに遠く離れていてもいい家族関係を築いてこれました。

それともう一つ。家族が近くにいないので、暮らしている地域のコミュニティーにできるだけ参加するように心がけています。夫も私も地元のゴルフクラブと合気道道場に所属して仲間と一緒に汗を流したり、私は地域の音楽グループに所属して、週に一回スコットランドの音楽を楽しんでいます。
仕事をしていることも地域の人たちに溶け込むことにつながっていると思います。
こうした今の頑張りが、将来の社会的な交流につながってくると思っています。

どんな風に暮らしたいのか考える

こうして不安に思うことを深掘りすることで、海外で歳をとっていくことを、実際に直面する問題として具体的に考えるようになってきました。
イギリスの医療はやはり不安に思うけど、命に関わる病気になった時に医療費の心配をしなくていいのは、やはり助かりますね。
でもやはりこっちで介護してもらいながら歳をとるのは嫌だなぁ。

海外での暮らしが長くなると、その土地のシステムや暮らしには必ず慣れてきます。それでも私はいつまでたっても日本人で、スコットランド人にはなれない(っちゅうか、別になりたくもない)けれど、日本人としてスコットランドで十分幸せに暮らしていけるようになる。
重要なのは自分がどこにいるかではなくて、どんな風に暮らしていきたいかを考えることなのだということがわかってきました。

そうですね。やはり私はとにかく元気に自立して、自分の好きな美味しいものを作って食べて、ゴルフや合気道をして、楽しく暮らしていきたいんです。
そのためには、健康に気をつけて、美味しいものを作れるようにして、夫婦仲良く、そして地域に溶け込んでいく。そう、今の暮らしを続けていくことだと思います。


歳をとるということ

歳をとる、というのは人生で一番辛い修行やと思うんです。身体のあちこちにガタがきて、物忘れが激しくなって、できないことがどんどん増える。
歳をとっていくと最終的には、自分が日本人だとかイギリス人だとか、役職についていたとか、逆にホームレスだったとか、有名人だったとか、大金持ちだったとか。そういうことは全然関係なくなり、素の1人の人間に戻っていきます。
今まで大切にしてきた(あるいはその逆に大切にしてこなかった)事や、築いてきた人間関係が、現在の自分に繋がっているんです。これまでの人生を肩書きだけで築いてきた人や、素の自分を知らない人にとって、歳をとるというのは、孤独で、ほんまに怖いことやろうなぁ、と思いますね。

歳をとる、ということは、できなくなることを受け入れて、持っていたものを手放すことを学ぶことやないか、と私は思っています。あの世には何も持って行けないですからねぇ。「楽しかったな。幸せな人生だったな。」という想いで逝けたら、それだけで最高。

今までは「海外で」歳をとっていくのは不安だ、と思っていたけれど、結局は海外でも日本にいても、歳をとること自体が不安なことなのかもしれない。
逆に生まれ育った日本を飛び出して海外に移住した私たちのような人は、海外に移住した時点できっと素の自分自身と向き合う羽目になっただろうから、日本でずっと自分自身に向き合わないまま暮らしてきた人よりも、歳をとるのが楽なのかもしれません。

そう。海外で歳を重ねていっても、私たちはきっと大丈夫。自分がどんな風に暮らしていきたいかを知っていれば、そして今まで大事やと思っていたものを手放す覚悟を決めれば、きっとこれからも強く楽しく歳を重ねていける。

将来おばあちゃんになって丸裸の人間になった時、私はしわくちゃな顔でも楽しく笑っている、温かい人でありたい。
日本にいても、海外にいても、きっとそれは関係なくなるんやと思います。寒くて厳しいスコットランドでも、穏やかな優しい笑顔で楽しく過ごしているおばあちゃんもいれば、不幸のどん底みたいに険しい表情の人もいます。幸せは誰の周りにもあるけれど、それを感じることができるのは、やはりその人次第なのかもしれません。
そうですね。私は私らしく、楽しく歳を重ねていく覚悟を決めること。将来何が起こるか、どんな最期が待っているのかなんて、誰にもわからないことなんだから。

今の時点では、私はここスコットランドで、腹を括って、覚悟を決めて、今を楽しく生きるのみです。







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