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逆噴射小説大賞2024間に合わなかった組 【メテオストライク・スカルプト】

 
 「俺はアートの男だ。リアルライフのだ!大概がフェイクのこの世でだ!お前はその作品を破壊しようとした、最悪の鑑賞態度を詫び砕けろ!」

絶叫する彼を肩に載せる巨人的異形が恐らく彼の言う『作品』だ。
生き、力に満ちる。奇怪な骨格的意匠の七頭身の人型造形。
大きく三メートル。獣的なそれは胸に埋め込まれた微小な石片からこの世ならざる光の脈を打つ。

それはハイテック武装した『悪魔』の顔面を破壊的右ストレートで打ち抜いく。

「はぐれ破片があるとは聴いたがこりゃ想定外」
私は回収対象の思わぬ使われ方に呆然と呟かざるを得なかった。

 彼の作品は闇夜の路上に絶対的に立ち、街灯はこの場という狂気の劇場を照らすスポットライト。散らばる破片はガラスに砂礫と血しぶき多くや肉片少し。

「ガ、ガラクタぁッ!胸に嵌めてる石よこせやッ」
「鑑賞態度改めろッ!」
悪魔と荒々しい叫びに対し彼は眼をぎらつかせ叫びで返す。

しかし悪魔は哀れにも作品の暴力性能にふらついている、手にする高度な武装の使用さえまともにできていない。

ジッ……!

高熱を発する光の刃が緩慢に虚空を焼いて空振る。悪魔は更に殴打を浴びて胸を砕かれて肉片が爆ぜた。

「なあ!アンタ!その作品の胸に埋め込んでる石について話が」

「恥じろッ」
彼はこちらを一瞥するも無視し作品が足蹴にする悪魔になお叫ぶ。
血反吐を散らし痙攣するそれを踏み抜いて絶命させた。

 「そろそろこっち見ろ!お前とんでもねえ事しでかしてんだよ、その石やらブチのめした相手やら、何もかも理解してねえだろ」
私もいよいよ叫ぶ、無視はもうゴメンだ!

「降ってきたニュース見て山で採った隕石!それを埋め込んだのが俺の作品!それを狙ってる悪魔を自称する妙なクズ衆生ども、作品完成からこれで三匹め!」

彼が言う間に作品は蠢いて縮み、掌ほどの身を丸めたヒトガタ彫刻となっていた。

「いいか?その石ゃ世界を破壊する凶星の断片なんだよ……!」

【続く】

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