【まったくくもをつかむようなはなしで】
「寝起きの腹の上にお前がいた事もあるからいまさら驚かんがな」
声をかけた。相手は俺の部屋に住み着いたデカいクモだ。数日前から俺の部屋に住み着いている。
「とうとうお前デリカシーってもんがなくなったな」
自室のそこそこ目立つ位置の壁に張り付いているそいつへと通じるはずもない言葉を投げかけると、声の振動に反応したのか知らないがぴくぴくと足の先を少し震わせた。聞こえてはいるらしい。
わからなくっても言葉を受け止めてくれる相手がいる事にすこし安堵感を覚えてしまうのは、いよい