カフェ・アメリカーノのすゝめ
スタバでは、数多くのメニューが存在している。オードソックスなドリップコーヒー、スタバといえば各種フラペチーノ、牛乳が苦手な人にうってつけアーモンドミルクラテやソイミルクラテetc...様々な人の好みに対応している商品郡は、そのものがまさに店の特徴であると言っても差し支えない。
特にアーモンドミルクラテはここ最近人気らしく、店員の話によると「よく男性客が買いますよ、そういうブームでもあるんですかね」とのこと。私もそれにアーモンドフィーシロップを追加したものがたまらなく好きで、シロップ単体で購入を検討したほどである。
そんなスタバであるが、誰が頼むのかわからないようなメニューも存在している。それこそが今回取り上げるカフェ・アメリカーノである。
カフェ・アメリカーノってケチくさそうな飲み物だよね
こんなことをいうとファンには怒られてしまうかもしれないが、私はカフェ・アメリカーノを初めて見かけたとき、そのように思ってしまった。だが、エスプレッソをお湯で薄めてコーヒーのようにした飲み物=カフェ・アメリカーノであることを知れば、あなたも私の言い分をいくらか理解してくれるはずだ。
それは白米の量だけがやたら多い定食、コーンフレークで水増しされたパフェ、片隅にクリームが入った菓子パンのようなそんなケチ臭さを感じさせてくれる。お湯で(笑)お湯で薄めたやつって(笑)
これを始めとして、カフェ・アメリカーノをよく知らない人たちは、以下のようなことを考え始める。
まず、ドリップコーヒーとほぼ同じような飲み物が、魅力的なフラペチーノやラテと肩を並べて、堂々と”カフェ・アメリカーノ”と名乗り、メニューに鎮座していること。これは、多くのコーヒー素人に混乱を与える。そのまま抽出したドリップコーヒーと、エスプレッソをお湯で薄めたアメリカーノ、作り方が少し違うだけでそこまでなぜ偉いのかアメリカーノ。
ドリップコーヒーも抽出の仕方次第で大きく味わいが変わる、というのはコーヒー通の人たちの言葉であるが、彼らが取り上げるのはせいぜいペーパードリッパーかネルドリッパーか、粗挽きをコーヒープレスで抽出するか、いやいやサイフォン…といった話だけで、”カフェ・アメリカーノ”について特別な話を聞いたことはほとんどない。
試しにYouTubeでカフェ・アメリカーノについての動画を調べてみると良い、コーヒーで検索すれば様々な器具のレビューで溢れかえっている動画候補欄が、カフェ・アメリカーノでは驚くほどに静かである。というか、「アメリカーノとアメリカンコーヒーは違う」なる言葉を見つけることができる。ややこしい新キャラは出てくるなよ。
次に値段も少し高い。スタバのドリップコーヒーだとショートサイズ290円であるのに対し、アメリカーノは310円である。その20円の差はなんだ、なんのプレミアムだ。あれか、「作りたてっぽさ」という付加価値に対する20円なのか。そうであるなら逆に安すぎやしないか、もう少し従業員に給料をだね、ちみ。
また、2杯目から安い値段で同じものを買える”ワンモアコーヒー”の対象にアメリカーノはない。さすが資本主義大国アメリカに似た響きを持つだけある。強い国アメリカが生んだ強いカフェ・アメリカーノ。いくらドリップコーヒーと姿形は似ていても、「ドリップコーヒーとは違う。私は特別なのだ。」と言わんばかりの姿勢に私は感服だ。
ここまでが、アメリカーノを知らなかった私の心の声であった。思考というのは人それぞれ似たものになりやすい、というのをどっかで聞いたことがある気がするから、おそらくアメリーカノを知らない諸君らも同じ思いであるだろう。カフェ・アメリカーノというのは、つくづく意味がわからない飲み物である。
しかし、今まで意味がわからんと叫んできた心の声の主は、「カフェ・アメリカーノを知らなかった私」であることに気をつけていただきたい。そう、今の私はカフェ・アメリカーノを実際にオーダーした「カフェ・アメリカーノを知っている私」だ。上の言葉たちはすべて過去のものなのだ。
コーヒー初心者にこそ勧めたいよアメリカーノ
アメリカの偉い組織に脅され、苦虫を噛み潰しかのような思いで言わされていることではない。紛れもなく私の本心としての言葉だ。ブラックコーヒーに挑戦したいと思っている人にこそ、カフェ・アメリカーノをおすすめしたい。
ブラックコーヒーといっても味は様々だ。豆の種類と煎り方はもちろんのこと、水の種類や抽出する器具でも飲みやすさが大きく変わってしまうほどに繊細な飲み物である。例えば、沸騰したばかりのお湯で抽出すれば、苦くエグみを持っていたコーヒーが、80℃近くまで下がったお湯だとそのようなことにはならず、むしろ甘みのようなふくよかさを感じさせてくれる飲み物になる。
条件が少し変わっただけでも美味しかったものが途端に美味しくなくなるのが、コーヒーの世界なのだ。(ちなみにコーヒーを趣味とすることはオシャレだという印象を得られやすいが、繊細な飲み物であるがゆえにこだわりのうるささは、アニメやアイドルのオタクと同じレベルだと言ってもらって構わない。”沼”にハマっちゃっているのがコーヒー通の真の姿である。)
そのため、コーヒーを楽しみたいのなら、ファーストタッチが重要である。繊細な飲み物であるからこそ、初めての体験がエグくて苦味が強いものであればたちまちブラックコーヒーは嫌いになるし、ふくよかな味わいとの出会いであれば感動もひとしおだろう。
しかしそもそもコーヒー通が好きな苦味でさえも、初心者にとっては受け入れられないものかもしれない。ドリップという手段でコーヒーを抽出を試みれば、そういった苦味はほとんど避けようのないものであるし、避けたいとも思わないものになっていく。それが最初は余計になるのだけれど。
また、ドリップは本当に繊細な抽出方法であり、喫茶店と比べても人が入りやすいスタバのような大手コーヒーチェーンには向かない作り方である。だからこそ、予め作ったものを店舗側も提供しているのだが、一杯を作るために抽出したものと比べるとどうしても荒っぽい味になっているような気がする。
それと比べてカフェ・アメリカーノはどうだろう。苦味やエグみなどの刺激の強さが抑えられ飲み口は爽やかに、そしてゆっくりと心地のいい香りと軽やかな苦味がやってくるような、まさに初心者にもってこいのブラックコーヒー体験を感じられるのはこちらの方だ。
ブラックコーヒーが飲んでみたい人に勧めるとすれば、私は断然カフェ・アメリカーノだ、それくらいドリップコーヒーとの味の差は大きい。別にドリップコーヒーが美味しくないと言いたいわけではないのだけど、もし初めてコーヒーを飲むのならアメリカーノを飲んだほうが無難である。
そして、上に書いたアメリカーノに対する偏見を改めようと思うだろう。ケチくさそうといってごめんなさい、お高くとまってそうとか思ってごめんなさい。あなた様はまさしく”贅沢な一杯”であるし、ドリップコーヒーより20円高いのも妥当であります。むしろ、それ以上高くいてくれなくてありがとうございます、と。
アメリカーノ体験は元々コーヒーが好きな人にももちろん味わってもらいたい。作り方が少し違うだけで、味わいがこれほどまでに変わるのかと学びを得ることは間違いなしである。
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と、ここまでカフェ・アメリカーノへの熱い思いを書いてきたが、私がスタバで一番好きなのは、アーモンドフィーシロップマシマシのアーモンドミルクラテであり、この記事を書くために再びカフェ・アメリカーノを頼んでしまった。やはりカフェ・アメリカーノはクソだ。