痒みと医者嫌い
私はアトピー性皮膚炎にかかっている。物心ついた頃から、ヒマがあればポリポリと、どす黒い血や浸出液が出ようがボリボリと、体を掻いていた。
薬を上手に使えば、なんとか症状を隠してしまえるため、悪化した状態を不潔と罵倒されたり、我慢すればいいのにと症状を軽視されたりすることも多い。
これは、あらゆる病気に当てはまることなのだが、病気は身体として表面に現れるものよりも、それによって起こる精神的な苦痛の方が大きい。私も漫然とした痒みや身内の理解の無さに現在進行形で悩まされている。親兄弟から「掻くな」と怒られるのは、日常的なことだった。(そのためか「家族」という繋がりへの執着がほとんどない。)
また、運が悪ければ、薬でさらに悪化してしまうこともある。世の中には、「脱ステロイド」といったステロイド剤に頼らず、食生活の見直しやら何やらで症状をコントロールしようとする一派がいるが、彼らは「疑似科学に踊らされた残念な人」として思われることが多い。しかし、現実はステロイド剤でも症状を緩和することができず、むしろ悪化してしまった被害者の群れだったりする。 事実、私もそうだ。
そうなると、医者の言っていることを疑うようになる。症状をほんの1分程度みてステロイド剤を処方、症状が緩和されなければさらに強く、量を多く処方される。症状がほとんど良くならないのに、薬をひたすら増やされる状態が正常だと思う人はどれくらいいるだろうか?
私は「医者が、ステロイド剤で儲ける製薬会社の悪業に加担している」といった性悪説を唱えたい訳では決してない。むしろ、彼らはアトピーの症状を緩和し、完治へ導くことを目標としている性善説を支持したいと思っている。
しかし、「雇用によって救われる命がある」「持続的なビジネスを選ぶ方が、そうでないものよりインセンティブが高い。」という目を逸らすことのできない現実もそこに存在している。声を大にしては言えないが、困る客が居続けるほうがビジネス的には健全なのだ。
また、医学に限らず科学全体が日進月歩の世界で、今日の常識は明日の非常識が当たり前だ。たくさんの患者を毎日毎日診ている医者が、暇な時間を利用して知識を最新のものにできるとは到底思えない。(もちろん、そのような医者もいるだろうが、そうでない方が多いだろう。)
スティーブ・ジョブズは大の医者嫌いで有名で、そのためガン治療を民間療法に頼った挙句、若くして亡くなってしまった。健康な人からすれば、彼の行動はおかしなものに見えるかもしれないが、アトピーの経験から「良い医者の絶対数は少ない」と感じている私からすれば、医者を嫌う人の気持ちはよくわかる。
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