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ゼロステップを完全に理解できる話③ ※2024/8/20追記

【2024/8/20追記】
プレーコーリングガイドラインのリンクが切れていたので修正しました。

①②の考察でゼロステップは完全に理解ができました。
ですが、実際の試合で正しい笛が鳴るかどうかはまた別問題です。
審判をしてみればわかるのですが、判定はかなり難しいのです。

ゼロステップが適用されるケース

プレーコーリングガイドラインにトラベリング及びゼロステップの代表的なシチュエーションの動画があります。

以降、この動画をベースに代表的な例を見てみます。

0:47~
4:53~

元々はこういったケースを想定しているのがゼロステップ。トラベリングではありません。

トラベリングになるケース

トラベリングになる代表的なケースもガイドラインには示されています。

悪質なジャパニーズステップはゼロステップ以前の問題。

1:25~


ゼロステップを適用しても「ケンケン」するのはダメです。

6:31~


ゼロステップ適用されず、軸足が浮いたあとにドリブル。(突き出し)

4:06~

ゼロステップを適用しても、2歩目をつく前にドリブルしないといけません。

5:43~

スローで見ないとわからないものも多いのですが、違和感があるものは大体トラベリングですね。

判断が分かれるケース

上記のガイドラインのように、明らかな場合は良いのですが、判断が分かれるケースがあることも事実です。

ここに怪しいステップが2人います。
いずれもゼロステップと判定するかどうかでトラベリングかどうかが変わってくるステップになっています。

1人目は、レイトミートではありますが、悪質なジャパニーズステップというほどではありません。これがゼロステップだとすると、
・右足着地と同時にコントロール(0歩目)
・両足(1歩目)
・ドリブル(2歩目がつく前にボールを離している)

になるのでOK。

ただし、ゼロステップが適用されないとすると、
・右足(1歩目)
・両足(2歩目)※この時点でこれ以上ステップは踏めない
・ドリブル(軸足が離れてからドリブル)

となるのでトラベリングになります。

つまり、ゼロステップが適用されるかどうかが判断の分かれ目となるのです。着地と同時にコントロールしているようには見えるため、ゼロステップかどうかは、「動きながら」の要件に当てはまるかどうか、です。

続いて2人目。

これもミートしてからジャンプしてるのですが、ゼロステップが適用された場合は
・右足(0歩目)
・左足(1歩目)
・両足(2歩目)⇒シュート

なのでOK。

ゼロステップが適用されなかった場合は
・右足(1歩目)
・左足(2歩目)
・両足(3歩目)⇒シュート

になるのでトラベリングです。

ここも、ボールコントロールは着地と同時なので、ゼロかどうかは「動きながら」と判定するかどうか。
個人的には、1人目は「動きながら(位置の移動を伴って)ミートしている」のでセーフ、2人目は「止まっている状態」でミートしているのでアウトだと思います。

ですが、これは審判によって判断が分かれるようです。
とある上級審判の方に聞いてみたら、「2人目はルール上はイリーガル(トラベリング)だが、ディフェンスに影響を与えてないシュートのプレーなのでエンターテインメントとして考えると吹かないかもしれない」、と言っていました。

ゼロステップの成り立ちを考えるとそういう考えもあっていいと思います。

宮城リョータのプレーはトラベリングではないのか?

スラムダンクの宮城リョータの有名なプレーに以下のようなものがあります。

スラムダンク 湘北vs翔陽

当時から物議をかもしたプレーなのですが、ゼロステップと絡めて改めて見直すと発見があります。もちろん連載当時はゼロステップなどなかった時代です。

赤木からボールを受け取った宮城。
1歩目の左足着地と同時にボールをコントロール。
次のシュートフェイクの足がどちらかわからない(お尻の動きを見ると左足が前に出ているように見えるため、1歩目の流れのままか)が、2歩目の右足着地と同時にドリブルをついている、と見えます。
が、この時に左足が浮いていますね。

連載当時のルールブックが見当たらないため確定的なことは言えませんが、ゼロステップ登場前の2011年のルールブックにはこう記載されています。

動きながら片足が床についているときにボールを受け取ったあと, あるいは空中でボールを受け取って片足を床につけたあと
①ドリブルを始めるためには,その足が床から離れる前(ジャンプする前)にボールを手から離さなければならない.

2011 バスケットボール競技規則

つまり、宮城のプレーは、1歩目となる軸足が浮いている状態でドリブルしているのでトラベリングなのです。
好意的に解釈しようとすると、1歩目が浮いていない(両足がついている)状態でドリブルは開始していて、描写されているシーンはその後である、とも言えなくはないのですが、ボールキャッチと同時にシュートフェイクをしてドリブルをするのを1歩でやっている、ということになるのでやや現実離れをしています。

ところが、現代の基準に合わせてゼロステップだとすると、
・左足着地と同時にコントロール(0歩目)
・右足(1歩目)がついた後、2歩目をつく前にドリブル
ということであればOKになります。
ゼロステップがない場合より、1歩近く猶予ができたことになります。

前稿②で「ドリブルの時はあまり恩恵を受けない」と書いてしまいましたが、恩恵を受ける数少ないシチュエーションですね。
もし井上先生がゼロステップで将来的にはトラベリングではないことを予測していたとすればとんでもない化け物です。


3回にわたる考察でゼロステップは完全に理解したつもりなのですが、ルールは変遷していくものですし、来年には違うガイドラインが出ているかもしれません。ここに記載しているのは、あくまでも2023年2月現在のルールに照らし合わせたものです。




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