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バスケの初級審判がアンスポーツマンライクファウルについて語る

最近ミニバスの試合を観戦していて、アンスポーツマンライクファウル(通称アンスポ)が吹かれていたが、それに対してベンチからクレームが入っていたケースを見ました。

ベンチに座っていたのは上級審判員(D級)の方だったので、終わってから何を話していたのかを聞いたのですが、「クレームではない。どのクライテリアを適用したのかを確認していた」とのこと。

いや、それクレームですから

そんなわけで、アンスポについて改めて確認してみました。

4つのクライテリア

クライテリアってなんやねん、って言うことですが、日本語で言うと「判定基準」ってことらしいです。

アンスポーツマンライクファウルは、プレーヤーによる体の触れ合いを伴うファウルであり、以下の要素をもとに審判が判断する:

・ボールに対するプレーではなく、かつ、正当なバスケットボールのプレーとは認められない相手プレーヤーとの触れ合い。
・プレーヤーがボールや相手プレーヤーに正当にプレーしようと努力していたとしても、過度に激し い触れ合い(エクセシブハードコンタクト)。
 【補足】「相手プレーヤーへの正当なプレー」とはボールを持っていないオフェンスのプレーヤーに対するディフェンスなど、正当なバスケットボールのプレーを指す。
・オフェンスが進行する中で、その進行を妨げることを目的としたディフェンスのプレーヤーによる必要 のない触れ合い。これはオフェンスのプレーヤーがショットの動作(アクトオブシューティング)に入るまで適用される。
・以下のいずれかの状況で、相手チームのバスケットに向かって進行しているプレーヤーとそのバスケットとの間に、進行しているプレーヤーの相手プレーヤーが全くいない状況で、進行しているプ レーヤーの後ろあるいは横から起こす不当な触れ合い。これはオフェンスのプレーヤーがショットの 動作(アクトオブシューティング)に入るまで適用される。
ー進行しているプレーヤーがボールをコントロールしている状況、もしくは ー進行しているプレーヤーがボールをコントロールしようとしている状況、もしくは
ー進行しているプレーヤーへのパスのボールが放たれている状況。
 【補足】パスされ空中にあるボールは、ファウルがなければ、進行しているプレーヤーによってコントロールされることが想定できる場合。

2023バスケットボール競技規則

競技規則には「クライテリア」という言葉は出てきませんが、プレーコーリングガイドラインの方にもう少し解説込みで書いてくれていますのでそちらも見ておくのが良いです。

(1)基本的な考え⽅
① アンスポーツマンライクファウル(以下︓UF)には、4つのクライテリア(判定基準)があり、それぞれ、「C1」、「C2」、「C3」、 「C4」と表記される。
② ゲーム中全ての時間帯(ゲームの終盤また得点差に関係になく)において、⼀貫性を持ってクライテリアを適⽤する。
アクション(起きた現象)のみで判定を⾏い、それが故意であるかどうかの意図はクライテリアを適⽤する上で考慮しない。
④ 通常のバスケットボールのプレーの結果起きたファウルも⼀部UF のクライテリアに含まれるため、全てが悪質なファウルということで はない。

20230629 プレーコーリング・ガイドライン

これ、個人的には③が新鮮でした。

昔は「インテンショナル・ファウル」という名前だったので、インテンショナル(意図的な、故意の)な意味があったはずなのですが、今は故意かどうかは関係ないんですね。

具体的に判定基準を見てみましょう。

クライテリア1(C1)

簡単に言うと、「正しくバスケットのプレーをしていたら起こりえないような悪質なファウルはダメよ」、ということです。

ボールに向かわず人を捕まえるとか、ユニフォームをつかむとか、そういうやつです。

 ボールに対するプレーではなく、かつ、正当なバスケットボールのプレーとは認められないコンタクト
①オフボールのプレーヤーに対してや、コンタクトがあった体の部分(ポイントオブコンタクト)が単にボールから離れていただけでは C1 は適⽤されず、そのプレーが正当なバスケットボールのプレーであったかどうかを含めて判断する。
②ボールにプレーせず、相⼿の⾝体の⼀部を掴み続ける、抱える、捕まえる、不必要に⼿・腕で押す、肘・脚を不必要に広げるなど の正当なバスケットボールのプレーとは認められない⾏為。
- 正当なバスケットボールのプレーの結果、瞬間的に相⼿を掴むことはホールディングのパーソナルファウルを適⽤する。
- 正当なバスケットボールのプレーの結果、脚がイリーガルにコンタクトすることはブロッキングのパーソナルファウルを適⽤する。
③ユニフォームを掴んで引っ張る⾏為。
- 正当なバスケットボールのプレーの結果、ユニフォームに⼿が引っかかったり、瞬間的に掴んだりすることはホールディングのパーソ ナルファウルを適⽤する。
④ボールのチームコントロールに関わらずオフェンスまたはディフェンスに適⽤される。

20230629 プレーコーリング・ガイドライン

クライテリア2(C2)

これは「激しすぎるファウルはダメよ」ということですね。
こういってしまうと簡単ですが、どこまでが激しいかどうか、というのを細かく規定しています。
たまにいますが、肘を振ったらダメです。

面白いと思ったのは、フェイクに引っかかって飛んだあと、「どうせファウルになるから思いっきりファウルしよう」ってのはダメ、ってこと。これは知りませんでした。

プレーヤーがボールや相⼿に正当にプレーしようと努⼒していたとしても、過度に激しいコンタクト(エクセシブ ハードコンタクト)
①正当なバスケットボールのプレーをした場合でも過度に激しいコンタクトに対しては C2 を適⽤する。
②⼿・腕・肘・膝・脚などによる⾸から上に対しての過度に激しいコンタクトに対しては故意かどうかに関わらず、そのコンタクトの度合いと程度を判断しC2を適⽤する。
③シリンダーを超えた肘を⽔平に振ったり脚などを過度に使ったりするコンタクトで、相⼿に対して負傷を⽣じさせる可能性がある⾏為と判断したもの。
④空中にいるプレーヤーに対しての過度に激しいコンタクト。
⑤笛が鳴ったあとや、ファウルの判定があったにも関わらず相⼿に続けて別の過度に激しいコンタクトを起こす。
⑥オフェンスのパンプ・フェイクなどで空中に⾶んでしまった結果、いずれにせよファウルになると確信したあとで必要以上に相⼿を掴ん だり、腕を振り下ろしたり、激しく叩いたりすること。
⑦危険なコンタクトで「ワインドアップ・インパクト・フォロースルー」の要素をふまえ、⼤きなインパクトがあると判断できるもの、または、「ワインドアップとインパクト」、「インパクトとフォロースルー」の2要素を伴うと判断できるもの。
- ワインドアップ︓⼿・腕・体などを振りかぶったり助⾛をつけたりして勢いよく相⼿に向かっていく動作。
- インパクト︓相⼿に与える⼤きな衝撃や⼤きな影響を及ぼす過度に激しいコンタクト。
- フォロースルー︓⼿・腕・体などを相⼿にコンタクトさせたあと、最後までその動作を⽌めることなく振り切る動作。
⑧ボールのチームコントロールに関わらずオフェンスまたはディフェンスに適⽤される

20230629 プレーコーリング・ガイドライン

クライテリア3(C3)

これが一番基準が曖昧だと思います。
「ディフェンスの努力をせずに邪魔をするだけの行為はダメよ」、ということでしょうか。
速攻時にファウルして止めてやれ、っていうときが一番シチュエーションとして多そうです。
また、ファウルゲーム(試合の終盤で時間を使わせないため負けているチームがあえてファウルしてフリースローが外れることを願う戦略)の際にボールではなく、人にファウルをするとこれが適用されます。

オフェンスが進⾏する中で、その進⾏を妨げることを⽬的としたディフェンスによる必要のないコンタクト
①このクライテリアはオフェンスがショットの動作に⼊るまで適⽤される。
②ディフェンスをしようとする努⼒をせず、オフェンスがボールを進めることを⽌めることだけを⽬的とした不要なコンタクト。
③リーガルガーディングポジション(以下︓LGP)から外れ、ボールに正当にプレーしていないコンタクト。
④LGPから正当にディフェンスをした結果のファウルはパーソナルファウルを適⽤する。
⑤C3が適⽤される場合であっても、オフェンスが既にショットの動作に⼊っていた場合はパーソナルファウルを適⽤する。
⑥ボールのチームコントロールをしているオフェンスに対してディフェンスが起こしたコンタクトのみに適⽤される

20230629 プレーコーリング・ガイドライン

クライテリア4(C4)

「速攻で一番前の人に後ろ・横からファウルしたらダメよ」、ということです。

これは2023年に少し変更になったところですが、今までは、③がもう少し厳しくて、オープンにパスが出されてボールをコントロールできていない状態であっても、そのパスが通れば明らかに速攻で得点、という場合の不当なファウルはアンスポになります。

相⼿チームのバスケットに向かって進⾏しているプレーヤーとそのバスケットの間に、進⾏しているプレーヤーの 相⼿プレーヤーが全くいない状況で、進⾏しているプレーヤーの後ろあるいは横から起こす不当なコンタクト

①このクライテリアはオフェンスがショットの動作に⼊るまで適⽤される。
②通常のバスケットボールのプレーの結果起きたファウルであっても以下③の条件に当てはまる場合は C4が適⽤される。
③ 速攻などで相⼿チームのバスケットに向かって進⾏しており、進⾏しているプレーヤーとバスケットの間に相⼿プレーヤーが全くいないことから得点につながると審判が判断した状況で、後ろまたは横からコンタクトが起き、以下のいずれかの状況に該当する場合 は C4 を適⽤する。
- 進⾏しているプレーヤーがボールをコントロールしている場合。
- パスミスやパスカットの直後など、ボールのチームコントロールがまだ変わっていない場合であっても、相⼿チームのバスケットに向 かって進⾏しているプレーヤーがボールのコントロールを得ることができ、得点につながると審判によって判断された場合。
- 速攻などで相⼿チームのバスケットに向かって進⾏しているプレーヤーに対してパスが出され、ファウルがなければボールのコントロールを得ることができ、得点につながると審判によって判断された場合。(オープン・パス)
④速攻などで相⼿チームのバスケットに進⾏しているチームがスピードを落として進⾏したり、フロントコートでセットプレーなどに展開 を変えたりするなどして、速攻は終わったと審判が判断したときは、C4 は適⽤されない。
⑤C4が適⽤される場合であっても、オフェンスが既にショットの動作に⼊っていた場合はパーソナルファウルを適⽤する。
⑥ボールのチームコントロールに関わらずオフェンスまたはディフェンスに適⽤される。

20230629 プレーコーリング・ガイドライン

なくなったもの(クライテリア5)

2023年の改定でC5がなくなりました。

2022年までのC5は、
第4クォーターや各オーバータイムで、ゲームクロック2:00あるいはそれ以下が表示されている状態でアウトオブバウンズからスローインを行うときに、またボールが審判あるいはスローインを行うプレーヤーの手にある間に、コート上のディフェンスのプレーヤーが相手プレーヤーに起こす不当な触れ合い、というものでした。

これはちょっと厳しすぎるよね、ということでこのシチュエーションでのファウルをアンスポと判定せず、スローインファウルとしてフリースロー1本で攻撃権はそのまま与えられるということになりました。

スローインファイルでフリースロー1本というのは今までにない判定なのでまだ知らない人が多い気がします。

なお、アンスポをすると、
・フリースロー2本かつスローインボールが相手に与えられる
・アンスポを2個すると退場

が与えられるのでバスケットの中ではかなり重い罰則になります。
注意しましょう。

初級審判はアンスポをコールできるのか?

初級審判(E級)にとってはアンスポのコールはとても勇気がいります。
罰則が重いので通常のパーソナルファウルと違って試合に与える影響が大きいからです。エキサイトしてきた試合の終盤で起こりがち、ということもあります。

正当なバスケットのプレーじゃないってどういうこと?(C1)
激しい接触ってどれぐらいやったらアウト?(C2)
ディフェンスしようと努力してないって言っても努力なんて見えないし。。。(C3)
速攻でファウルがあったけどこれは前から?横から?(C4)
などなど。

勇気がいる、と書きましたが、これをコールするために必要なことは、勇気でも度胸でもなく、「知識」だと思います。
通常のファウルも同じなのですが、

「なぜこれを吹いたのかを説明できること」

これにつきます。

クライテリアをしっかりと理解して、「これはC2と判定したから吹いた」と説明できれば、文句を言われても毅然と対応できます。
人間なので見間違えることもあるのですが、文句を言う方も見間違えている可能性があるので、実はそこは文句を言う方も自信はありません。
なので、「自分にはこう見えたからそう判定した」と説明できれば案外あっさり引き下がります。ベンチで文句を言っている人もクライテリアの内容まできちんと説明できる人はいないので。

ルールブックをしっかり読んで知識を身に着けて自信を持ってコールしましょう。

<参考動画>



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