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八村のアンスポについて考える
昨年、「アンスポーツマンライクファウル(以下アンスポ)」について記事を書いたのですが、半年以上たった今になって急に閲覧数が伸びていました。
なんでかなーと思っていたら、ちょうどパリ五輪の日本VSフランス戦の週に閲覧数が伸びていました。八村の退場で、アンスポってどんな基準だったっけ?と検索してたどり着いた人がいたようです。
せっかくなので、八村のプレーについて私なりの見解を解説しておきます。
※あくまでも私見です。公式な見解出ているわけでもありませんし、私はただのE級(最下級)審判なので、上級の人から言わせると全然違う、ってことかもしれないのでご注意ください。
以下、私見。
八村の退場に関しては、一部の報道で
・あればアンスポなんておかしい
・フランス寄りの笛になっている
・NBAではありえない
みたいな論調がありますが、そもそもアンスポの基準を理解していない人たちが何を言っても意味はありません。とはいえ、バスケットをしている人でもこの基準を正確に言える人はあまりいないと思うので仕方ないことではあるのですが。
ちなみに、笛が明確にフランス寄りだったのは最後の河村のファウルぐらいでしょうか。
これが吹かれたのは可哀そうなのですが、不用意な左手(触っているように見えなくもない)とフランス選手の演技勝ちでしょう。あの場面は残り10秒で3Pを決められても問題はなく、一番やってはいけないのが3Pへのファウルでカウントされることなのであそこまでタイトにディフェンスをする必要はなかったはずです。そういう意味では河村のミスと言えると思います。
八村のプレーはアンスポだったのか?
話を八村の退場(アンスポ)に戻します。
「NBAではありえない」という批判が一番ありえないのですが、これは「NBA」ではなく「国際試合」ですので、基準が違って当たり前です。
単純に国際試合慣れしていなかった八村の問題です。
ちなみに、NBAと国際試合では競技の根本である試合の時間からして違うので、全く別のルールでやっていると理解しておいた方がよいでしょう。
では、国際基準だったとして、あれはアンスポだったのでしょうか?
日本のルールも毎年FIBAのルールに合わせて更新されているので日本のルール=国際基準と考えて問題はありません。
アンスポの定義は改めて以下の記事の通りです。
ルールブックの記載なので、これ以上でも以下でもありません。
上述の記事にある通り、アンスポには、C1、C2、C3、C4という4つのクライテリア(判定基準)があります。
結論から言うと、八村のプレーはアンスポと判定されてもおかしくはなく、1回目も2回目も同じクライテリアが適用されていると考えられます。(厳密には当該判定をした審判に聞いてみないと分かりませんが)
どのクライテリアが適用されたか。
1回目はシュートに向かってドライブしてくる相手選手に対して、激しく体をぶつけたプレー。
2回目はシュートに対してシュートを打つ手とは反対の手をつかんだプレーです。
アンスポと判定される4つのクライテリアのうち、
C4「相⼿チームのバスケットに向かって進⾏しているプレーヤーとそのバスケットの間に、進⾏しているプレーヤーの 相⼿プレーヤーが全くいない状況で、進⾏しているプレーヤーの後ろあるいは横から起こす不当なコンタクト」は速攻時に適用されるものなので今回のケースには関係ありません。
C3は「オフェンスが進⾏する中で、その進⾏を妨げることを⽬的としたディフェンスによる必要のないコンタクト」なので、一見それっぽいですが、これは「オフェンスがショットの動作に⼊るまで」しか適用されませんので、これも今回のケースには当てはまりません。
残すところはC1とC2です。
C2「プレーヤーがボールや相⼿に正当にプレーしようと努⼒していたとしても、過度に激しいコンタクト(エクセシブ ハードコンタクト)」は可能性がありそうですが、この適用は結構細かく規定がされていて、肘を振ったり、フェイクで飛ばされた後にわざとファウルをしに行ったりという割と悪質な行為がそれに該当するので、今回のケースはそこまでではないかなと思います。
なので、適用されたのはC1です。
C1は、「ボールに対するプレーではなく、かつ、正当なバスケットボールのプレーとは認められないコンタクト」です。
もう少し細かく言うと、「ボールにプレーせず、相⼿の⾝体の⼀部を掴み続ける、抱える、捕まえる、不必要に⼿・腕で押す、肘・脚を不必要に広げるなどの正当なバスケットボールのプレーとは認められない⾏為。」
です。
まさに今回の八村はこれが適用されたと思われます。
1回目は、ドライブしてきた相手に対して、通常のバスケットのディフェンスの域を超えて、相手をつぶすことを目的にしたボディアタックをしてます。(ついでに言うと、その後、手で押しているようにも見える)
2回目は、完全にシュートと関係のない方の手をつかみに行っています。
いずれもボールに対するプレーではなく、正当なバスケットボールのプレーではない、と判定されたということです。
個人的には、2回目はまあそうかなと思います。
審判団もビデオ判定して改めてアンスポをコールしていますし、「ボールにプレーせず、腕をつかむ」というお手本のようなアンスポです。
ただ、1回目はちょっと悩むというか、自分ではアンスポをコールできないプレーかなと思いました。ボディチェック自体は正当なプレーだからです。ただ今回のはちょっとボディチェックの域を超えてボディアタックになっていたので、それはバスケットのプレーじゃないよ、ってことなのかなと。ただ、純粋にパワーの差で相手が吹っ飛んでいるのでちょっと厳し目ではある気はしました。
私は普段からNBAを見ている方ではないのですが、論調を見る限り、NBAでは普通に行われるようなプレーなのかもしれませんし、むしろNBAクラスだと吹っ飛ばされた方のフィジカルの弱さを指摘されるのかもしれません。
が、これはオリンピック。適用されているのはミニバスでも同じ基準である公式ルールなので、アウトなものはアウトです。今回のケースでは、賛否はあると思いますが、「全然アンスポちゃうやんけ」というプレーではなく、「そう判定されてもおかしくない」プレーであったことは間違いないので吹かれたこと自体は仕方ないかなと。1回目と2回目が逆だったら吹かれなかったかもしれません。(審判もその時点でトップスコアを稼いでいたスタープレーヤーを退場させてゲームを壊したいわけではないので)
1回目を吹かれた時点で、いつもと違うと認識して気を付けなければならないところでした。
結局、試合は八村の退場の後も日本が踏ん張ってオーバータイムに突入しました。むしろ展開的にはほぼ勝っていた試合ですし、日本と世界の差は確実に縮まっているというのは感じました。八村や渡辺に続く日本人NBAプレーヤーも誕生しそうですので、ますますバスケットが盛り上がっていくことを期待しています。
※画像は生成AIにて作成。