【13巻】『少女ファイト』既刊17巻を振り返る
こんにちは。東京マンガレビュアーズでレビュアーをしているおがさんです。『少女ファイト』の既刊17巻分の振り返り記事を毎週火曜日にアップしています。このnoteは13巻の振り返り記事となります。
13巻は日本橋ヨヲコ先生にとって、特に思い入れのある巻だと思っています。それは、『少女ファイト』というタイトルの意味が回収できた巻でもあるからです。
ということで、色々と気合いを入れて書いていこうと思います。
12巻までの記事はこちらから👇
記事は以下のフォーマットで進めていきます。
・この巻は何と何の戦いなのか
・心に響く名言
・注目のシーン
・過去作とのリンク
多少のネタバレと巻をまたいだ解説を含みます。気になる方は、そっ閉じを推奨します。よろしくお願いします。
【13巻】楽しむためのバレーVS勝つことを楽しむバレー
13巻は凝縮すると、楽しむために続けてきた山吹矢のバレーと、勝つことを楽しむようになった黒曜谷の戦いだと思っています。
『少女ファイト』(日本橋ヨヲコ/作画監修:木内亨/講談社)13巻より引用
(※以下、特段記載のないコマは全て13巻より引用しています)
勝つことを目的とし、狂犬と恐れられていた小学生の頃の練。やがてチームの分解に繋がってしまった自身の行動(それすらも雨宮の策略なのですが)に責任を感じていました。だからこそ、誰かがバレーを諦める瞬間を見てきた練にとって、この柴田このみのセリフは痛いほど理解できたのでしょう。
それでも、根っこにあるのはバレーがどちらも大好きであるということ。
だからこそ、全力で戦うことが相手への最大の敬意を払うことになります。負けることではなく、勝ち続けることの大変さを、山吹矢の監督は説きます。
勝ち続けるのが大変な理由としては、勝つとは「背負う」ことだと私は考えています。
勝ち続けていくとその背中には、他人の勝手な期待と、敗者の思いがのしかかります。勝つことが義務づけられていき、一度負けただけで全てがゼロになるようなプレッシャーを常に背負い続けるのです。勝ち方にも綺麗さを求められます。
ですが、一方で負けた相手からすると、戦った強敵は、自分の想いを託す味方にもなります。
そう考えると、勝つことで相手を認め讃えることで、相手の居場所を自分たちの中に作ることも可能なのかもしれません。
心に響く名言
名言は各巻1つと決めていたのですが、13巻には個人的に選びきれないくらいくらい数多くの名言がありました。ですが、私は作中の中で一番好きなセリフがこの巻にあるので、こちらを選出しました。
志乃は祖父がヤクザということにより、八百長試合という風評被害にあっていました。地元と離れた黒曜谷に入学したのも、周りに迷惑をかけないようにする為です。
さらにはセッターからのコンバートも経験し、人に合わせることや、自分がチームメイトを引っ張っていくこと、さらに今までできていなかった人に頼ることも覚えた志乃。
試練の多い志乃が、傷つきながらも掴んだ強さ。こんなにも著しい成長を遂げた姿をみることができて、ファンとしてただただ嬉しいです。
このセリフは、自分自身が何かに傷つきそうになった時に、勇気をもらえる言葉として胸に残り続けています。
そして、その隣にはいつも志乃を支えてくれる、ルミという揺るがない戦友(とも)の存在があったことも忘れてはなりません。
注目のシーン
いつもあまり話すことのない、練の母が語るシーン。この言葉の裏側には、練が逃げるように生きていた日々があったことを示しています。
姉を亡くして塞ぎ込んでしまい、部屋に閉じこもってしまった練。そんな練や夫を1番近くで見守り続けてきた母。姉を亡くした辛さは全員一緒のはずなのに、気丈にふるまう母の姿に、救われてきたんだろうと想像できます。
現実では子供の幸せを思って親がすることが、大きな足枷や負担となり悲しい事件が起こったりもします。
子供たちの人生は子供たちのもの。親が幸せを押し付けるものではありません。
笑顔で生きてくれることが最大の親孝行であるというこの言葉が、共感できたので注目のシーンに選びました。
過去作とのリンク
『G戦場ヘヴンズドア』の堺田と鉄男が、漫画ファンの最終形に対して、答えを見つけるシーンがあります。
ここからは完全に私見なのですが、私も同様に漫画を読むことについて、ぼんやりと考え続けていることがありました。それは、
漫画を読んでいるだけでは、漫画を読んだことにならないのではないか
ということです。いよいよ頭がおかしくなったと思われるかもしれませんので、少し解説をします。
そもそも、"漫画"とは何か?江藤俊司先生が書かれたこのnoteがすごく心に残っています。
いわく、漫画とは手紙であると。それをベースに考えると、今回のシーンも理解が深まる気がします。
私たちは、漫画という手紙を受け取ります。でも、たとえ手紙を受け取ったとしても、
「あー、面白かった。さ、他の漫画読もう。」
だけだと、LINEで例えると既読スルーのような状態に近いと思います。だから、私たちは考えなければなりません。
その作品が伝えたいテーマは何か。登場人物たちの行動の意味を考え、描きたかった想いを知る。それはつまり、漫画という手紙に託された内容を読み解き、自分の人生をかけて体現することです。
それが私の中で考え続けていた、漫画を読んでいるだけでは、漫画を読んだことにならないのではないかという問いに対する答えです。
と言うことで、少し脱線した気はしますが、13巻の振り返りはおしまい。
私は、日本橋ヨヲコ先生のファンは全て同志であり、戦友(とも)であると思っています。一緒に盛り上がってくれたら嬉しいです。
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