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『圕の大魔術師』考察記事 セドナから渡された本と二人が辿る未来予想 ※ネタバレあり

「書を護ること それ即ち 世界を護ること也」

こんにちは。マンガサイトのアルで、レビューライターをしているおがさん(@basil_ko84)です。このnoteは泉光先生『圕の大魔術師』の考察記事になります。そして、4巻まで読んだ方向けです。ネタバレ上等の完全ストロングスタイルかつ、妄想、妄言を多分に含みますのでご承知おきを...

興味はあったけれど、まだ1巻も読んでいない方は、そのままAmazonで4巻まとめてご購入下さい。『圕の大魔術師』はここ最近読んだ本の中で、文句なしに一番面白いと感じています。絶対に損はしません。

ご購入ありがとうございました。お帰りなさいませ、ご主人様。 

3巻までしか読んでいない方、4巻が出ていることを知らなかった方は4巻まで読んでからお進み下さい。アフィリエイト等はつけてませんので、下のリンクからどーぞ。

こんなにも短いスパンで、シリーズリンクと単巻のリンクを貼ったのは初めてですよ。

ということで、ここまで読んでいただいた全人類が4巻まで進み、悶絶しているということでよろしいですね?(でなければお引き取りください)

では、考察をしていきます。

あー、4巻もあと少しで終わりだなー。4巻も面白かった...え???ちょ???おま...セド...

もうそろそろ、4巻を読んだ方全員が度肝を抜かれたあのシーンを一緒に考察しませんか?

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(『圕の大魔術師』4巻226P〜227Pより引用)

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(『圕の大魔術師』4巻228P〜229Pより引用)

はあああああああ????

世界を滅ぼす魔王??????

あー、もう無理ー。何これー。

すげえ...

初めて読んだ時の素直な感想です。3巻まででも十二分に面白過ぎる本作が、このシーンにより、一気に名作への扉を叩いた気がします。戸惑いと驚嘆とが混ざり合い、最終的に「すげえ...」しか言葉が出ない放心状態へと導かれました。そして、この物語が壮大で、まだ序章に過ぎないことが理解できます。(頼むから生きている間に完結して欲しい)

シオ魔王説について

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最初読んだ時に、シオが魔王として世界を滅ぼす可能性もあることを考えました。「世界を滅ぼす魔王との」という説明文が、背を向けているシオを示している可能性もあるからです。シオは純粋であるからこそ、闇に堕ちやすいのではないかと。

ただ、結論から言うと、それはないのかなと思っています。セドナもシオも同じ本を読み、カフナになることを目指しました。もし、シオが魔王になるのであれば、本を読んだ時点で世界の真実に絶望したり、図書館に失望することにより魔王となってもおかしくないのではないでしょうか?

シオもこの本の内容自体は半信半疑です。しかし、真実を追い求める為に、それでもカフナを目指した。つまり、シオには真実を知る覚悟があります。なので、シオが魔王に堕ちるという確率は少ないのかなと思います。

セドナ、魔王になるってよ

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ということで、このシーンを順当にとらえて、セドナが世界を滅ぼす魔王となる未来を考察します。セドナの胸の内はまだ明かされてはいませんが、それを語る為にはまずシオがセドナから渡された本を考察しなければなりません。

シオがセドナから渡された本とは?

シオがカフナを目指すきっかけになったのは、セドナから渡された本です。では、その本の内容とは何なのか?4巻を通して確定している事実をまずは集めてみました。

【確定している事実】

・冒頭は「書を護ること それ即ち 世界を護ること也」から始まる(1巻91P)
・世界の為に戦った大魔術師と図書館の物語(1巻149P)
・世界の真実が描かれている(1巻211P)
・一人の少女が見た世界をえがいた物語(4巻163P)
・この本は世に出回っていない(4巻163P)
・シオは姉にさえも本の内容を話せたことはない(4巻211P)
・悪用しようと思えば、この社会(せかい)を破壊することができる(4巻212P)
・セドナは世界中の人に読んで欲しいが、それは叶わない(4巻214P)

まず作中で頻繁に語られる以下の言葉。

「書を護ること それ即ち 世界を護ること也」
-帰らなかった者の言葉- 名も無き本にて(3巻冒頭)

帰らなかった者というのは、ニガヨモギの使者討伐で唯一帰ることのなかったホピ族の英雄、理の大魔術師を指していると思われます。そして、3巻冒頭では、名も無き本として紹介されている。つまり、世間に流通していないという事実がある。冒頭が一致しているので、この名も無き本こそが、セドナからシオに渡された本なのでしょう。

次に、本の内容をまとめると以下のようになります。

一人の少女が描いた、世界の為に戦った理の大魔術師と図書館の物語。世界を滅ぼすほどの真実が描かれており、世には流通していない。

この本をきっかけにセドナが世界を滅ぼす魔王となるのでしょう。同じ名も無き本を読み、カフナを目指したセドナとシオ。では、「英雄」と「魔王」として二人を分けた違いは何か。鍵となりそうな要素を考察します。

鍵となるのは「無彩の放浪者(シトラルポル)」

(あくまで私見なので大いに妄想、妄言含んでます。)

強大なマナを秘める「無彩の放浪者(シトラルポル)」は、ある民族には「災いを呼ぶ悪魔」として恐れられているというところがポイントです。シトラルポルであるコマ内のカドー族の少女が鍵となるのは間違いありません。

では、先ほどの本の内容と合わせて考えます。シオに託された本は一人の少女が描いた物語でした。その少女とはシトラルポルであるカドー族の少女(先祖?)ではないでしょうか。

そもそも、なぜシトラルポルが災いを呼ぶ悪魔とされたか。それは、強大なマナを秘めているからだと推察できます。そして、抑えきれない強大なマナは全身から常に放出されています。濃すぎるマナは人によって有害となる。もし、その強大なマナが何かをきっかけに暴走し、広がってしまったとしたら・・・まるで、ニガヨモギの使者が残した灰白色の死のようではありませんか?

セラーノ族は灰白色の死に関して、「人の問題」として手を貸すことはしません。灰白色の死はニガヨモギの使者によるものではなく、「人災」であることを揶揄しているように思えてなりません。そして、ニガヨモギの使者という、人にとっての共通の敵も、初めから存在しなかったのではないか・・・(もちろん定かではありませんが)

では、シトラルポルのカドー族の少女が記した物語として、過去にどのようなことが起きたのかを推測してみます。

かつて、差別に苦しんだシトラルポルのカドー族の少女。その少女の理解者が現れた。それが、ホピ族である理の魔術師だった。災いを呼ぶシトラルポルと、ホピ族が手を組む。悪魔と恐れる他の民族にとっては、民族の存続の危機さえ覚える状況。恐怖の対象になりかねません。恐怖を解消する為に行われたこと・・・それがヒューロン族によるホピ族大虐殺です。

黒の書について

前述したヒューロン族によるホピ族大虐殺は一冊の本によって引きおこされました。

ここで、アルライターの旅するタコさんの考察をはさみます。

もう一つラコタ族の名前関連で小ネタ。ヒューロン族によるホピ族大虐殺を招いた『黒の書』ですが、実はその製作者ルゲイ=ノワールはラコタ族です。ノワール、フランス語で黒という意味ですね。

ラコタ族には名前に色が入ることから、黒の書を書いたのはラコタ族ではないかという考察です。この考察をベースに考えると、民族大戦は以下のような関係性となります。


ラコタ族:誤った学術書を発行し、ホピ族大虐殺の引き金となる(発端)

ホピ族:誤った学術書により、ホピ族大虐殺の犠牲者となる(被害者)

ヒューロン族:学術書を信じ、ホピ族大虐殺を行う(加害者)


ここから見えてくることは何か?

ヒューロン族はシトラルポル、および手を貸すホピ族を恐れていた。ラコタ族はその感情を利用し、誤った学術書を書き、ホピ族の力が増大することを阻止しようとした。

もちろんラコタ族が意図的に書いたものかどうかは今のところ定かではありません。そういう考察もできるのかなあという話です。

そして、セドナがシオに渡した名も無き本は、黒の書の対となるような、シトラルポルとホピ族の真実を描いたものだったのではないでしょうか。つまり、流通していたらホピ族の大虐殺を止められるような内容が含まれていた。しかし、民族間の思惑により、意図的に流通が抑えられた。

そして、ヒューロン族によるホピ族大虐殺が起こってしまった・・・

そうすると、ラコタ族であるセドナがその本を公表、流通させることは、黒の書を書いたラコタ族への裏切りとなります。真実を公表することは民族間のパワーバランスを書き換え、世界を滅ぼすことも可能となる。しかし、セドナは真実を公表することに決めた。

そして、ラコタ族および、他の民族から世界を滅ぼす魔王と呼ばれるようになる・・・これが、私が考えるセドナ魔王説です。

では、なぜセドナは真実を公表することを決めたのか?それは、シオの存在ではないでしょうか?シオは混血であるため、種族としては被害者であり、加害者の立場でもある。だからこそ、この悲しい事件を赦すことができる存在になるのではないか。セドナは、自身は魔王と呼ばれながらも真実を探求することを恐れないシオに託したのではないか。私はそう信じています。

『風のカフナ』について

これは世界のために戦った一人のカフナのための物語ー

この文章をよく読むと「これは世界のために戦った一人のカフナの物語」ではなく、「これは世界のために戦った一人のカフナのための物語」となっています。

また、1巻の冒頭にはこうも記されています。

「この物語を 私の英雄のために」
ーソフィ・シュイムー
「風のカフナ」冒頭の言葉

「風のカフナ」は著者ソフィ・シュイムにとって英雄であり、その英雄の為に描かれた物語です。風のカフナはおそらくセドナでしょう。しかし、セドナを主人公とした本を書くだけであれば「これは世界のために戦った一人のカフナの物語」とすれば良い。けれども「これは世界のために戦った一人のカフナのための物語」と書かれている。

その理由とは、書を護ろうとした(真実を公表した)セドナが、世界を滅ぼす魔王として恐れられた事実から救う為ではないでしょうか。

歴史はすぐには塗り替えられない。真実の公表は混乱を極め、セドナは第二の民族大戦を扇動する魔王として祭り上げられる。大戦を回避し、言葉だけでは伝えられない現状を打破する為に作られた本が「風のカフナ」だとしたら。「魔王」を「英雄」に変える為に。

「書を護ること それ即ち 世界を護ること也」

私たちが生きる2020年現在では、『風のカフナ』の本が世間に広まり、歴史は真実を取り戻した。そして、それを作者である泉光先生がコミカライズした。そう考えると、ロマンがありませんか?

ここまで考察を続けてきましたが、もちろん大幅に間違っているかもしれませんし、部分的には合っているかもしれません。1週間読み込みすぎて、頭がおかしくなってしまった可能性もあります。(元からという説もあります)

特にシトラルポルの皆様、ラコタ族の皆様には勝手な推察で余計な嫌疑をかけてしまい、誠に申し訳ありません。正義というものが多面的であるように、この記事も私が考えた一つの考察にすぎません。

多様な考察ができるほど、物語の奥が深く、多くの謎に包まれているのも『圕の大魔術師』の魅力です。私も、真実をシオと一緒に追いかけて行きたいと思います。

ここまでお読みいただいた方、本当にありがとうございます。好き勝手に妄想、妄言を吐かせていただきました。それでも、これを言えば全てが許されると、ばっちゃが昔言ってた言葉を最後に添えます。

知らんけど。

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