【1巻】『少女ファイト』既刊17巻を振り返る
こんにちは。東京マンガレビュアーズでレビュアーをしているおがさんです。『少女ファイト』の既刊17巻分の振り返りをこれから書いていきます。このnoteは1巻の振り返り記事となります。
毎週火曜日に1巻ずつ記事をアップする予定ですので、よろしければフォローをお願いします。
記事を書こうと思った理由
この記事を書こうと思ったきっかけの一つ目は、同じくレビュアーの沢さんが書いていた『BLEACH』全74巻を毎日振り返るという狂気の企画です。74巻分を完遂させた継続力と愛は、さすがすぎます。この企画に触発されたのが一つ目の理由です。(沢さんには許可もらってます)
もう一つ理由があります。公式からも発表がありましたが、日本橋ヨヲコ先生の体調不良により、雑誌イブニングにて連載中の『少女ファイト』は休載をしています。(2021年1月現在)連載再開は2021年5月11日予定となっています。
漫画家さんにとって、心も体も健康であることが必須であることは前作『G戦場ヘヴンズドア』でしっかりと学びました。なので、日本橋ヨヲコ先生には何も気にせず、本当に本当にゆっくりと療養していただきたいです。
では、連載再開を待つ間に何か私にできることはないだろうか?
『少女ファイト』は、これからの人生に寄り添い続けてくれるような作品です。そして、何周も読み返せば読み返す程、新たな発見、繋がりが見つかります。私はただの日本橋ヨヲコ先生作品の1ファンですが、漫画のレビュー記事を書かせていただいたりしています。
なので、振り返りの記事を書くことで、連載再開まで1人でも多くの人が読み返すきっかけや、新たな読者さんが手に取るきっかけになればと考えました。そして、それが先生への幾ばくかの励みになることを信じ、(ご迷惑になるようであれば即座に辞めます)1週間ごとに記事をアップしようと思います。
前置きがとても長くなってしまいましたが、以下のフォーマットで進めていきます。
・この巻は何と何の戦いなのか(少女ファイトというタイトルにちなんで)
・心に響く名言
・注目のシーン
・過去作とのリンク
多少のネタバレと巻をまたいだ解説を含みます。気になる方は、そっ閉じを推奨します。よろしくお願いします。
【1巻】大石練vs過去のトラウマ
まず、『少女ファイト』はどんな漫画であるか。その説明は日本橋ヨヲコ先生自身のツイートのコレに尽きます。
登場人物誰もが弱さを抱え、傷つき、挫折を経験しながらも、自分自身と戦い続けます。
1巻では、主人公の大石練が戦う(向き合うことになる)過去のトラウマは大きく2つあります。
1.姉を交通事故で無くした喪失感と、自責の念
2.強豪:白雲山学園の推薦入学をチームメイト達全員が辞めたことを知らされず、友達に裏切られたという失望感
練はこれらの問題に直接向き合うのを避ける為に、一人で入学した白雲山学園の中等部では本気を出さず、友達も作らないと決めていました。
そもそも、友達も姉もかけがえのない大切な存在だったとはいえ、中学生となり、時間が経過しても練がここまで忘れられないのはなぜか。
それは映像記憶能力によるものが大きいと思っています。映像記憶能力とは、一度見ていた光景を脳の中で瞬時に再現できる能力です。2巻では、小学校時代に対戦した延友(のぶとも)との試合のスコアを覚えている描写があります。
人間には辛いことを時間の経過と共に忘れることで、自分の心を正常に保つ機能があります。練の場合は映像記憶能力があるため、事あるごとに人よりも鮮明に、過去のトラウマがフラッシュバックしてしまうのでしょう。忘れることができないというのはとても残酷です。
そんな練が立ち向かうきっかけになった言葉の一つが、「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」という滋(しげる)のセリフです。主観のみで物事を判断し、間違った事実を信じてしまっていた練に対する言葉です。このセリフに関しては、アルの記事で詳細を書いたので、こちらを参照ください。
『少女ファイト』の中で挫折から立ち上がる時は必ず、周りの支えがあります。それはつまり、人間は一人では生きられないということも意味します。練が戦い続ける過去のトラウマが浮き彫りになるのと同時に、練を支える人たちにより、トラウマと向き合うことを決意したのが1巻でした。
【心に響く名言】
1巻でおそらく一番有名なセリフは、上述した「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」ですが、今回、私が紹介したいのはこちら。
『少女ファイト』(日本橋ヨヲコ/講談社)1巻より引用
自暴自棄になった練に対して、笛子が発するこのセリフです。このセリフは5巻まで読み進めた後に振り返ると、色々と思うことがあります。
『少女ファイト』(日本橋ヨヲコ/講談社)5巻より引用
練の姉、真理(まり)が妹を頼むと語りかけてくるのがわかるからという笛子。練にアドバイスしたのにはもう一つ理由があると思います。
それは、笛子と練は同じ痛みを共有する一番近い存在だからです。
真理の事故現場に一緒にいたのは笛子でした。だから笛子には、「事故を防ぐことができたのではないか。セッターとして真理の負担を軽減することができていたら。」という強い後悔があります。
だからこそ、「自分が風邪さえひかなければ。姉が死んだのは私のせいかもしれない」という強い後悔を持ち、色々なことから逃げ続けた練の気持ちが、痛いほど理解できるからではないでしょうか。
笛子は、選手自身がオーバーワークしないように細心の注意を払います。それは、教え子が自分のように後悔しないようにする為です。
人生を投げ出さず、丁寧に生きる。練や笛子だけでなく、読者の私たちにも同じことが言えると思います。
【注目のシーン】
『少女ファイト』(日本橋ヨヲコ/講談社)1巻より引用
1巻での注目のシーンはこちら。太っていることによりイジメられていた小田切が、練の言葉により立ち直るきっかけをもらうシーン。このシーンこそが物語の重要な転換点となったと言えます。
この時に練が起こした行動と言葉が小学生時代の小田切を救い、救われた小田切が練のピンチを救います。この救いの連鎖こそが、少女ファイトの基本形なのです。
『少女ファイト』(日本橋ヨヲコ/講談社)1巻より引用
1巻の小田切が練に発した「今は描くためだけに描いてます」というセリフが、17巻では対になって登場します。
『少女ファイト』(日本橋ヨヲコ/講談社)17巻より引用
小田切が対戦相手に対して初めて怒りを露わにして、集中力を欠いてしまうシーンで、練が小田切に対して使います。このセリフが練から出てくるところ、そして1巻のセリフが17巻に対となって出てくるところは、控え目に言って、最高ですね!
過去作とのリンク
引きこもりの小田切の弟、明(あきら)。明が大好きな雑誌、少年ファイトには、『G戦場ヘヴンズドア』に出てくる町蔵と鉄男が作るバレーボール漫画『エドガワ排球団』が掲載されています。後々、二人はガッツリ登場するのでこの巻での説明は割愛。
日本橋ヨヲコ先生の作品に出てくる登場人物は、『極東学園天国』以外は、同じ世界線に存在しています。
(正確に言うとキャラクターの造形や性格など『極東学園天国』から転生したと言われているキャラクターもいるので全ての作品につながりがある。)
前作の主人公達が描いた漫画が、『少女ファイト』の登場人物にも影響を及ぼす。『G戦場ヘヴンズドア』ファンにはたまりませんね!
と言うことで、1巻の振り返りはおしまい。
私は、日本橋ヨヲコ先生のファンは全て同志であり、戦友(とも)であると思っています。一緒に盛り上がってくれたら嬉しいです。
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