【失せ物注意!!】©都築郷士
〈序〉
眞夜中にバナナを食べた。思ひ出す。さつちやんことサチ子ちやん。バナナが大好き。まどさんも罪作りだなー。さつちやんはちつちやいからバナナ半本しか食べられない。可哀想なのだ。そしてその事がこの唄を、昭和の童謡のキングピンに押し上げた..。バナナはね季語ではないよ冬サチ子 くにを -
〈権力と榮光〉
失せ物のお咄。買つたばかりのジーンズ二本何処かに置いてきて、以降四半世紀経つてゐる、失せたまゝで。それには酒が大きく絡んでゐたが、断酒状態の今でもピアスのキャッチ一つ保持し得ず、小さな事だが毎夜の流浪を思ひ出す。買つたと云ふ権力が身に付ける榮光に繋がらない訳だ。
〈オノチンさんの..〉
ザ・ジェット・ボーイズがオープニング・アクトを務めた。西荻窪である。全く以て素晴らしい夜の幕明けと云つた雰囲氣。パンクつてなんていゝものなんだろ、私は早くもビール(発泡酒)に沈潜し始めてゐた。黑づくめでガーターストッキングの、美しいワカちやんは、私の目がふともゝの辺りに行くと、スカートの裾を伸ばすやうなそぶり。されどいつも元氣溌剌、私の持つてゐたキシリトールガムを指して、今夜は誰とキスするんですか?と、悪戯つぽく問ふ。それは勿論きみとだよ、とは言はなかつた。喧嘩は避けたい。私は武闘派ではない、当時も今も。オノチンが全裸になつた!私は別の歯科大生の女のコの腰に手を廻した。触りが入つたら、もう駄目だ。私はジェントルな男ではなかつたのか?
〈失墜の始まり〉
何時間後 - 目が醒めた。井月さんの絶唱、酒さめて千鳥のまこときく夜かな、の事はまだ知らぬ。当たり前だ。ひーふーみーよー20世紀は終はつてゐなかつたんだぞ、と現在の私は私の病脳に言つてゐる。この暗がりは何だ..駅だ、何処かの電車の駅、ホームから下つた通路の片隅で、私は覺醒したのである。こゝは何駅か?当直の駅員のものらしき足音、二人ゐる?あらゝどうしちやつたのお兄ちやん..、この時点で既にジーンズの入つた袋は亡くしてゐた。駅から追ひ出されたら、一体どこに行くべきか。不幸中のなんとやら、頭痛はしたが、吐き氣はしなかつた。皮肉にもガムはまだ残りを所持してゐた..。
※未完です。朝飯前と言ひたいところだが、實情バナナがもう一本ないと、続きは書けぬ。またの機会に、それぢや。都築郷士。
歩みつゝ虱潰しに天幕の穴黑く塗るアナクロ人間 くにを
筆者近影。