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【書評】わが投資術 市場は誰に微笑むのか 清原達郎著

高額納税者名簿(長者番付)で2005年に全国一位の納税者として有名な、「伝説のサラリーマン投資家」の異名を誇り、当時タワー投資顧問で運用を担当された清原達郎氏による著書となる。

本書で気になった箇所をかいつまんで引用する。まずは、日経225指数の問題点について。

(引用者注記:日経225指数は)時価総額ウエイトではないので、そのETFを大量に買えば市場に大きなゆがみが生じます。(引用者強調)時価総額のウエイトに比べて日経225指数内でのウエイトが高いと日経225のETFが大量に買われたとき株価が不自然に上がってしまうのです。

(同書 頁260)

これはマーケット参加者の間ではヒソヒソと言われていること。特に、日経225指数のウェイト上位5社で全体のウェイトの25%を占めるので、デリバティブ(金融派生商品)を利用し、5社の株価を不釣り合いにつり上げ、日経225指数で利益を上げるということだ(別の言葉で言い表すと相場操縦となる)。ここは証券取引等監視委員会に頑張っていただきたいところ。

これとは別に、日経225指数について著者からの警鐘(どちらかというとイヤミ)となる。

日経225指数にデリバティブがいっぱいぶら下がっていることによって不正が起きやすい状況が生まれているのではないかと私は危惧しているわけです(一昔前に比べれば今はマシになっているとは思いますが)。ようやく日経225指数に任天堂とキーエンスが入ることになりましたが、(引用者強調)「株価換算係数」を0.1にするとか訳がわかりませんねえ。なぜ新規に入ってくる銘柄だけ株価換算係数を適用するのでしょうか。

同書 頁262

著者はマーケットから退いているので、この警告は奇譚ない発言かと推察される。この疑問系の主張は日経225指数を管轄している組織へのイヤミであろうとなと。

また、株式のショート取引についても別の警鐘を鳴らしている。これについては日本の当局がなぜ動かないのか不思議なところ。

空売りの状況はブライムブローカーに聞くとだいたいわかります。これが私が個人投資家にショートをオススメしない一番重要なポイントでもあります。(引用者強調)海外には日本株の大きな貸株市場が存在しますその大きさは日本の信用取引での空売り規市場をはるかに上回ります。
(中略)プライムブローカーは「Markit」 とか 「DataLend」 といった貸し株データベンダーからデータを買っています。契約上、数字そのものは教えてもらえませんが、ヘッジファンドはある銘柄がだいたいどの程度空売られているのか、空売りは減りつつあるのか増えつつあるのかをプライムブローカーに聞くことができます。(引用者強調) この情報なしで空売りするのはあまりにも無謀です。

同書 頁263

これは個人投資家には重要な金言となる。個人投資家の空売りは、ヘッジファンドと比較し、圧倒的に情報が足りないのだ(物知りな言葉で言い表せば、情報の非対称性と呼ぶ)。

単純に攻略法を考えれば、このプライムブローカー(ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー等)なり、「Markit」や「DataLend」から情報をもらえばいいと想像されそうだが、これらに支払うショバ代は数億円単位となり、実質的に庶民にはそもそもアクセスできないのだ。

株式投資に興味がる人は、上記の引用箇所だけでも読んで損はないと思う。


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