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読書ログ「海賊の経済学 ― 見えざるフックの秘密」

利潤を確保するために、海賊は協力が必要だった。そして海賊が協力するには、紛争を避けて秩序をもたらし、船上で一生懸命働くインセンティブを作るしかなかった。つまり、海賊たちが憲法を作ってその規則に従ったのは、利潤に動機づけられた目標を実現するためだった。海賊は利己性のおかげで「自分たちの最大の安全がそれにかかっている」ことを理解した。ある歴史家によれば、その統治(ガバナンス)制度の結果として、海賊船は多くの商船やイギリス海軍の軍艦や、果てはイギリスの植民地の多くよりも秩序があり平和で、組織化されていたという。一八世紀の評論家の弁を借りれば、「海に出ては、海賊たちは己の職務をきわめて秩序だった形で実施する。それはオランダ東インド会社の船舶にさえ勝る。海賊たちは、物事をきちんとこなすことに多大なる誇りを抱いているのである」。

海賊の経済学 ― 見えざるフックの秘密
  • 人間は経済的合理性によって意思決定をしたり行動したりするのであり、それは海賊も同じだというテーマにもとづいていろいろな事例を列挙している本。海賊は合理的な理由から黒人を差別していなかったというけどにわかには信じ難いなと思ってしまった

    • 理由は黒人を差別する海賊と差別しない海賊がいたとして、差別しない海賊が安い給料で黒人を雇った場合に費用が軽減されるので、黒人を差別して雇用しない(黒人以外を雇用する)海賊に比べて収益が増える(に違いない)というもの。そんな単純じゃなくない~~~!?と思ったしやっぱり訳注でも釘を刺されていた

    • この本めちゃくちゃ訳注がよくて、黒人差別以外の「それほんと~~~???」と思うような箇所にもちゃんと「鵜呑みにすんなよ」と忠告してくれていて信頼できるなと思った。この訳注がなければこの本の印象は「うそくさい本」にとどまったように思う。アウトローを題材として扱うと必要以上にツッコミどころを探されそう感は多少ある。ある程度エンタメとか伝説の類と割り切って楽しむのがいいかもしれない

    • なにを論じたところで「それを考える頭があればそもそも海賊になるなんていうリスクはとらなかったんじゃないか」という気がしてしまうけど仮に自分が海賊の仲間になるか殺されるかみたいな状況だったら喜んで海賊の仲間入りをしただろうなとも思う。あとやはり本の中でも言われてたように、そこにいる人たちがそれぞれが好き勝手にやりたいことをやっていたらなんとなく全体として合理性がとれているように見える、いわゆる”神の見えざる手”みたいな現象が起きうるのだというのが実際のところっぽいかんじもある

    • ていうか今Amazon価格みたらめっちゃプレミアついてるじゃん。図書館で借りて読みました

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