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読書ログ「資本主義が嫌いな人のための経済学」

本書にはハッピーエンドがない。私は資本主義を嫌う人に、もっと真剣に経済学を受け止めるようしてきたが、それは経済学が貧困、不平等、社会的疎外などの問題に簡単な答えを与えてくれるからではない。まったく逆である。経済学の研究は、善意の人たちが提案した簡単な解決法の多くがあまり成功する見込みがないと証明することで、しばしば事態を紛糾させるばかりだ。本書では、経済的な疑問について考えるときに起こる、ごく抽象的な概念上の誤りに重点をおいた。だが、これが日常の政治や政治的イデオロギーのレベルにまで浸透していることは、たやすく見てとれるだろう。
例えば、左派は、税負担を個人ではなく企業に課せると主張して支持した政策の結果をいつも認めようとしない。これは、よく調べれば、まったくナンセンスだとわかる簡単な解決法の典型例である。伝統的な左派政党の多くは炭素税に対し、罰金を払うべきなのは消費者ではなく石油会社や汚染者のほうだという理由で反対している。だが、どうしたらそれが可能になる?原油価格が上昇しても、石油会社は収益性を低下させないガソリンを値上げすればいいのだ。支払う税率が上がっても、まったく同じ対応をするだろう。課税されるのが消費者でも企業でも、何の違いもない。どのみち、支払うのは消費者なのだ。

資本主義が嫌いな人のための経済学」
  • 今後石油の稀少価値がどれだけ上がって価格がどんなに高騰しても、どんな重税が課せられても石油会社は困らない。なぜなら価格に転嫁されて消費者の負担が増えるだけだから、みたいなの、そりゃそうよなー!!!とは思いつつ最近抱いてた疑問が腹落ちするようなところがあってよかった。ネット通販の送料を無料にできるのは、Uberのごはんがプラス数百円の値段で自宅に届けられるのは、その送料分の経費がう~~~っすら商品にまんべんなく乗っかっているからなのだ

    • 社会とか経済みたいなでかすぎるトピックについて個人レベルで働きかけてできることなどほとんどないし、マクロでみても、たぶん世界中でどれだけ多くの間違いや修正を重ねたところで、最終的な「ハッピーエンドはない」。どんな対策をとっても経済格差は埋まらない(かもしれない)し、イノベーションには限界がある(かもしれない)。それなのに、人は経済を回すのをやめられない

    • つみたてNISAでとりあえずオルカンに資金を突っ込んでおけばなんとかなる(=世界レベルで見れば、経済はほぼ確実に右肩上がりに発展していく)というのも、みんなが信じているというだけでただの幻想でしかない。でもなんとなく、隕石が地球に衝突したり太陽に近づきすぎたりして人類が滅亡でもしないかぎり、その営みは未来永劫続いていくような気もする。その正誤を確かめる術はどこにもないけど

    • 「真に助けが必要な弱者は助けたくなるような顔をしていない」みたいな話とか、モラルハザードの問題とか、経済がインセンティブを重要視しすぎてまるでインセンティブだけが人間の行動原理であるかのような錯覚をしているみたいなおもしろ話がいっぱい出てくる。人間はインセンティブによって動く!みたいなことをしたり顔でつい言っちゃいがちだけど、インセンティブってそんな単純なものじゃないよと釘を刺されて「はい……」となった。いい本です

  • 今後読書ログはnoteで書くことにした。ブログにのせるのは半期ごとのまとめログだけにする

    • 読書ログをちゃんとした記事にしようとすると結構消費カロリーが高いのと、あんまりおもしろくなかった本のログが残せなくなっちゃうのと、気軽に思ったことを書き残せないなと思ったので。noteだとそれがすごくやりやすくて助かる。感想未満の「わかる~~~」ぐらいのつぶやきにちかいことも臆せず書いていくぞ。あんまり中身のあることは書けないと思うけどここはチラ裏なので……

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