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読書ログ「アメリカは自己啓発本でできている: ベストセラーからひもとく」
全部読んだあとで「なんかけっこう知ってること書いてあったな……」と思ったら積読チャンネルでこの本の解説をガッツリ聞いていたから前知識があったというだけだった。積読チャンネルで解説を聞いたことは全部読み終わるまできれいサッパリ忘れていた。そんなことがあるんですね……
引き寄せの法則のあたりは「堀元見のビジネス書100冊読むライブ」で見たやつだ!!!!てなった。嫌なベネッセすぎる
人の意志は一般に考えられている以上に、宇宙の意志と密につながっています。人が低い自分を克服して、真我を肯定すれば、宇宙の意志とつながり、多くの驚くべき力を授かります。(二四頁)
意志の電流は心霊の架線を流れています。心のトロリーポール(訳注:トロリーバスや電車のパンタグラフ)を上げ、その力を下ろして、使いさえすればよいのです。あなたの小さなバッテリーは宇宙の意志力の宝庫と接続しているので、供給量は無限です。(三三頁)
「供給量は無限です」じゃないよ
著者の書き方がだいぶ好意的というか、こういう本に頼らないとがんばれない人たちの立場に寄り添っていて、斜に構えたり馬鹿にしているかんじがまったくなくてありがたい。それこそ「ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律」みたいな冷笑的なものを想像していたけどぜんぜんそんなことはなかったです
それでいてやたらテンポ感がいいというか口当たりが軽いのでサクサク読めてよかった。あとちゃんとトンデモ本もあることについても言及していて誠実ですね……となった
「引き寄せの法則」にも論拠っぽいものが(一応)あり、それは提唱者独自の神学的な信条の上に矛盾なく成立しているという指摘がめちゃくちゃおもしろかった。ざっくり噛み砕くと、神は実体のない状態で宇宙を満たしていて、この世の万物に宿っている。すなわち万物の一部である人間にも宿っているのだから、人間にも神と同じような「望むものを望んだだけ手に入れる能力」が備わっている。たとえば人間が「もっとお金持ちになりた〜い」と願うことですら、それはそのまま神の意志であり、万物の理を司っている神の意志は叶うのが当然なので、願望は願望することで即ち叶うのであるという発想、らしい
神話だ
宇宙の意志力とか無限の供給量とかそれらしい材料を寄せ集めて捏ね上げているだけの与太話ではあるのだけど、神話というものはそういうものだし、人間はそういうふんわりとしたトンデモない説明をされることで前向きになにか行動しようという活力がわくことがあるものなのだと解説されて得心がいった。なんとなくそれっぽい言説を寄せ集めてなんとなくそれっぽい真実を見出そうとしているという意味では、イエベだの骨格ストレートだのMB◎Iだのも似たようなものだと言えるかもしれない。人間は神話やファンタジーが大好きなのだ。もちろん自分も好きですし