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イップスを治す⑥
これまで、イップスを治すシリーズでは、
送球イップスについて解説してきました。
今回は投手の投球イップスについて解説していきたいと思います。
正直、私自身は大して投手経験がありません。
一般的に投手は非常に繊細なものだと思います。
少しの変化が、球速、球の回転数、変化球、コントロールなど、
あらゆる事に影響を及ぼし、良くなったり悪くなったりします。
何も変えてないはずなのに、日によって完全試合できる時もあれば、
初回でノックアウトされる時もあります。
これは、アマチュアのみならず、プロやメジャーでも同じです。
年間数億円の年俸を貰っていても、
毎回同じ投球ができる訳ではありません。
そんな中で、コントロールが定まらない時もあります。
試合中に立て直そうと試行錯誤してもどうにもならない日もあるでしょう。
それでは、投球イップスとはどんな事を指すのでしょうか?
コントロールを乱すのとイップスの違いは何でしょうか?
イップスと言うからには、特定の条件で繰り返し影響があるのでしょう。
例えば、最終回になると制球が定まらない。
満塁だと四死球を出してしまう。
下位打線でストライクさえ取れれば抑えられるはずなのに、
ボールが先行する。
ブルペンではコントロールが良いのに、
試合では別人のように荒れ球になる。
敬遠の時に、暴投してしまう。
こんなところでしょうか。
一塁への送球は投球ではなく送球ですので、
これまでの送球の話を参考にして下さい。
敬遠の時の投球も同様です。
それ以外の投球に関しては、どれも打者との対戦ですので、
送球の時のようにあまり手を抜きすぎたり、
異なる投げ方をする訳にはいきません。
ただし、イップスに陥る基本メカニズムは同じですので、
前回までの解説も参考として下さい。
投球のイップスでもやはり、
トリガーはメンタルだったとしても、原因や課題は力の調整です。
確かに投手のメンタル面への負担は相当なものだと思います。
満塁でストライクが入らなければ、それだけで失点します。
野手が助けることもできません。
勝敗が直接関わる場面で、
いつも通りの投球というのは非常に難しいとは思います。
しかし、イップスに対して為す術がない訳ではありません。
何故なら、イップスの原因が力の調整だからです。
単純なコントロールが課題であれば、
技術的な練習を行う事しかできず修得に時間が掛かるかもしれません。
しかし、イップスであり、力の調整が課題であれば、
意外と早く克服できるかもしれません。
何故なら、通常の場面ではコントロール良く投球できているからです。
イップスで、特定の場面でのみ投球が乱れるのであれば、
通常の場面でのパフォーマンスに近づけてあげるだけで良いので、
技術的なハードルは比較的低いはずです。
まず、あたながイップスに陥る場面を振り返ってみて下さい。
あなたは何をしようとしましたか?
どうなって欲しくないと思いましたか?
きっと、ストライクを投げたい。
四死球を出したくない。
暴投したくない。
そう思っていたのではないでしょうか。
もっと詳しく思い出してみて下さい。
球速は抑え気味でも、ストライクを取ろう。
真ん中あたりに浮いてしまっても良いから、
死球にならないようにしよう。
変化が少なくても良いからワンバウンドだけは避けよう。
こんな思いがあったのではないでしょうか。
確かに、少し弱気な状態ですが、問題はそこではありません。
どれも、力を小手先で調整しようとしているのが問題なんです。
練習では左右に投げ分けているのだから、
少し球速を落とせばストライクを取ることなど簡単!
いつもはミットの構えた所に投げられるから、
変化を少なくすれば、最悪の場合でもワンバウンドにはならないだろう!
本当にそうでしょうか?
あなたはブルペンで何球甘い球を投げる練習をしていますか?
球速を抑えて、真ん中周辺でカウントを取る練習は?
変化球を高めに投げて絶対にワンバウンドにしない練習は?
やっていないか、やっていても数球のはずです。
圧倒的に多いのが左右の厳しいコースへ
全力に近い球を投げる練習のはずです。
強打者でも打てない球、強打者を抑える練習をしているはずです。
コースに投げれるから、球速を遅くすればもっとコントロールできるとか、
一番難しいコースに投げる練習をしているから、他のコースは簡単とか、
そんなことがある訳ないんです。
いつもと異なる投げ方、練習をあまりしていない投げ方で投げて、
コントロールが良くなるはずがないんです。
何も分かっていない指導者が、ちょっと球速を落としても良いから、
ストライクを取れと言いますが、
練習していないことが、急にできるようになる訳ないでしょう。
もちろん、力みすぎていては、コントロールが悪化します。
球速が自己最高付近でも、少しバランスを崩しやすくなるかもしれません。
ただし、いつも140km/h の球速で練習しているのに、
135km/h の球を急にコントロールしろといっても、
体の使い方が異なるので、むしろ難易度は上がります。
140km/h の体の使い方で腕だけで135km/h に調整を試みたり、
体の回転を抑えたり、
どこかで、いつもと異なる体の使い方をしているはずです。
そうでなければ球速を遅くできないから当たり前です。
ということは、いつもと違う投げ方、練習していない投げ方を、
メンタル的に負担の掛かる場面でいきなり実践しようとしているのです。
うまくいかないのは自明の理というものです。
緊張する場面、ストライクが欲しい場面、暴投したくない状況、
そんな時こそ、落ち着いて一番練習している投げ方で投げるべきです。
力むことも、緩めることもせず、通常の投げ方に近づけるべきです。
緊張のあまり、少し体のキレが悪いかもしれません。
バランスを崩すかもしれません。
それでも、通常の投げ方で投げれば、
概ね通常の範囲内に球は収まるはずです。
それでも、暴投することもあるでしょう。
野球をやっている以上、エラーや暴投、四死球はなくなりません。
しかし、練習しているよりも良い投げ方はありません。
急にストライクを投げれる方法を思いつくことはありません。
練習通りの動きがにいかにできるかが、スポーツの面白さでもあります。
いつもうまくいくとは限りません。
ピンチが訪れた時にはいつも、
球速を遅くすればストライクを取れるかもしれないという、
悪魔のささやきがあなたを襲うでしょう。
そんな追い込まれた状況で、
これまで行ってきた練習を信じるか信じないかはあなた次第です。