第103回甲子園 広島新庄2-3x横浜 野球脳解説
第103回 全国高等学校野球選手権大会(甲子園) 初戦
広島新庄 000 010 001
横 浜 000 000 003x
両校とも堅実な野球をするチーム同士の対戦。低スコアの接戦に持ち込み、競り勝つことができるチーム同士。
広島新庄は2枚看板の安定した投手と堅い守備、そして攻撃では少ないチャンスを機動力を用いて1点を取りに行くチーム。
対する横浜高校も安定した守備でリズムをつくり、1イニング1点を取りに行く野球。
両者を比較するなら、投手力は広島新庄、打力は横浜高校に分があり、守備は走塁は甲乙つけがたいチーム力である。試合巧者同士の対戦であり、結果も素晴らしい試合となった。
広島新庄の好投手花田君は直球を見せ球にツーシームやフォークボールを内外に投げ分けることができており、的を絞らせない。捕手のインサイドワークも良く、制球も安定しており、正に低スコアの接戦へと持ち込んだ。内角を投げきることができる投手は実は数少ない。花田くんはこの試合でその巧みな投球を終始行っていた。
横浜高校の宮田くんは外角を中心にテンポよくピッチングしていた。花田君と比べると三振に抑える決め球は欠いていたが、自身のフィールディングも含めて打たせてとる投球で1失点で試合をつくった。
攻撃に関しては広島新庄はエンドランを中心に、よく野球を動かしていた。結果、盗塁をきっかけに5回2アウトからタイムリーに繋がった。また、堅い守備で横浜の最後の1点を阻止しており、自分たちのペースで試合終盤へと持ち込んだ。接戦でも勝てるような、素晴らしいチームであった。
横浜高校は神奈川大会100安打96得点した攻撃力は持っているが、好投手花田君の前に、得点に繋がる最後の1本が打てていなかった。しかし、今年の横浜高校もまた、接戦の低スコアで競り勝つ野球ができるチームである。投手が1失点で抑えた分、自分たちの野球でもあったと振り返ることができる。
試合の決着は最終回(当たり前ですが)
9回表、横浜は1年生エース杉本君が登板。先頭打者を1塁内野安打で出すと(杉本君が1塁ベースカバーに入るが落球)、直後に盗塁で0アウト2塁に。
変わりたての1年生投手を落ち着くせないため、かき回す広島新庄。監督のサインと、それを実践する選手たち、正に試合巧者。
その後、2連打を浴び1失点。しかし、0アウト2.3塁から2アウトとる。ここで伝令を送る横浜・村田監督。ピンチを2回凌ぐと安堵が出る場面で、しっかりと気を引き締める、さすが捕手出身の監督。村田監督もまた、野球の怖さを知り尽くしている。結果、9回表の大ピンチを横浜は1失点で切り抜けた。
9回裏、広島新庄は2番手で好投を続けた西井君が0アウトからライト前にヒットを打たれたところで継投。秋山君がマウンドへあがる。左投手でチェンジアップを武器に緩急をつけるピッチングスタイル。
しかし、この日はチェンジアップが高めに浮いて入らない。修正ができず、狙い玉は直球1本となる。
ここで横浜高校の打線が繋がる、玉城くんが追い込まれてから右中間へしぶとく運び0アウト1.3塁へ。しかしその後2アウトを取られ、2アウト1.3塁に。
打席には1年生の緒方君、初級のチェンジアップが外れた2球目、直球真ん中をレフトスタンドへ運び、逆転サヨナラ3ランホームランで激戦は幕切れを迎えた。
両校とも素晴らしく、ミスと言えるミスは数少ない。
しかし、ミスはエラーだけではない。
チェンジアップが入らないのも1つのミスである。狙い玉を直球に絞らせてしまったミス。
この試合は、このミスが致命的だった。直球に絞り強く振る、最終的にはこの野球観と、それを実践せきる選手の能力が決着を決める結果となった。
広島新庄、横浜高校ともに野球というスポーツを理解しているからこそ、引き締まった好ゲームにつながった。
個の力だけではなく、組織で1試合を通じて勝つこと、これを目指した2チームの素晴らしい試合であった。
こちら村田監督率いる横浜高校の野球を分析した記事です。もしよろしければご一読ください。
https://note.com/baseball_teacher/n/n70a1555c0c22
本当に両校とも素晴らしいプレーでした。
ナイスゲーム。
2021.08.11