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阪神バッテリーの不用意な配球〜村上の3打席連続ホームランはなぜ生まれたか?〜

はじめに 

プロ野球2022年シーズン、今日はセリーグの2022年7月31日阪神-ヤクルト16回戦について考察したい。オールスター明けの後半戦最初のカードとなったこの試合は、2位阪神と11ゲーム差をつけた1位ヤクルトとの試合となった。阪神2連勝で迎えた3戦目。勝てば8ゲーム差と阪神にとっては首位ヤクルトとのゲーム差を縮めるためにはどうしても勝ちたい試合だった。

試合内容

試合は阪神が4回の裏に2点を先制し、6回を終了して2点リードしていた。7月阪神の投手陣は、7月27日時点でチーム防御率は驚異の1.24を記録し、理論上2点リードは逃げ切れる防御率である。
ところが7回に2番手で登板した左の渡辺が村上にソロホームランを打たれ2-1となる。そして9回に抑えの岩崎がヤクルト村上にまたしてもソロホームランを打たれて、同点となる。さらに、延長11回に阪神石井がヤクルト村上に2ランホームランを打たれて、結果4-2でヤクルトが勝った。ヤクルトは村上の3本塁打4打点の活躍で3連敗を逃れ、再び2位阪神とのゲーム差を10とした。

今日取り上げたいポイント

今回取り上げたいポイントは、やはり村上の3打席連続ホームランである。
1本目・・・阪神渡辺とヤクルト村上の対決
2本目・・・阪神岩崎とヤクルト村上の対決
3本目・・・阪神岩崎とヤクルト村上の対決

阪神ファンの声

配球の考察の前提

配球のことについて話をすると選手を批判していると捉えられかねないことは重々承知している。そして、私はヤクルトファンでヤクルト視点になる部分があることはご了承いただきたい。一方で、阪神の投手防御率はリーグ1位でその結果を出している捕手も素晴らしい配球をしてこその結果だと思う。そのため、阪神のバッテリーは総じてセリーグNo.1であるのは事実である。その前提の中で、私が考える村上の3打席について考察をしていきたい。
くれぐれも繰り替えずが、配球に100点はない。その中で私なりに最善の配球だったのか、策だったのかを考察しているものであり、この1回の配球によって他の素晴らしいプレーが消えるものではない。私のような素人の配球論として、各選手にリスペクトの気持ちを持ちながら書いていることをご理解いただきたい。

1本目の村上選手への配球


ヤクルト村上選手に対しての配球はどのようなものだったかを振り返りたい。
1球目:スライダー - ストライク
2球目:スライダー - 空振り
3球目:スライダー - ボール
4球目:スライダー - ホームラン

スポーツナビより引用

1本目の村上選手のホームランは防げたか?

結論:バッテリーが防ぐのは難しく、村上の技術がすごい
Twitter等ではスライダーを4球続けて打たれたことに関して、批判が多かったように思う。一方でなぜ梅野はスライダーを4球続けたのか?
2球目の村上の空振りを見た際に、村上は渡辺のスライダーにタイミングが全くあっていないように見えた。そのため、梅野もスライダーに合っていないことでスライダーを続けていたと考えられる。
この3,4球目をスライダーでなく、インコースを見せておけばよかったのではないかというのは結果論として言われることではる。
これは私は結果論ではないかと考えている。なぜなら、外のスライダーに全くタイミングがあっていない村上に対して、インコースを見せ球として使った万が一甘くなったり、インコースを打たれることがあれば、「なぜスライダーを使わないのか?」と言われるのである。
このホームランに限って言えば、2球目で全くタイミングが合わない村上が4球目で確実にホームランで捉えたのがすごいと言わざるを得ない。このホームランを梅野捕手の責任として、配球の問題にするのは私は違うと思う。
梅野捕手の配球は、タイミングがあっていないボールを一番安全として続けたセオリー通りの配球で、あのコースをレフトスタンドにホームランされると阪神バッテリーとしてはお手上げと言わざるを得ないと思う。

2本目の村上選手への配球


ヤクルト村上選手に対しての2本目のホームランの配球はどのようなものだったかを振り返りたい。
状況:投手岩崎、ワンアウトランナーなし。9回表1点差阪神リード。
1球目:ストレート - ホームラン

スポーツナビより引用

2本目の村上選手のホームランは防げたか?

結論:防げるホームランだったと考えられる。
私はこの場面、初球にインコースのストレートを投げることは不用意であると思う。
梅野捕手の気持ちからすると、先ほど外をレフトスタンドに打たれているので、インコースを使いたいという気持ちは自然であると思う。しかしながら、私がこの場面で不用意だと思うのは、状況が1点差でホームランだけは避けなればならない状況の中で、インコースのストレートは不用意であると言わざるを得ない。
当然素人の私でも村上のインコースは苦手なことは分かっている。そしてこの場面インコース投げたいだろうと思って見ていた。村上の読みも素晴らしく、インコースを待っていた。
でも一番安全な方法は何か?私は初球変化球のボール球から入り、ストレート待ちの村上が手を出してくれたらラッキー、見送れば見送り方でどこに意識があるかを確認する作業が一番手堅い配球だったと思う。
この場面もフォアボールでもいい場面である。ホームランだけは避けなければならない場面で、ヒットもOKである。その中で、インコースのストレートという選択は考えられない。
私はこの配球は前の打席で打たれたからインコースという考えだけでは、状況が頭に入っていないという意味で不用意だったと思う。

3本目の村上選手への配球


ヤクルト村上選手に対しての3本目のホームランの配球はどのようなものだったかを振り返りたい。
状況:投手石井、2アウトランナー1塁。11回表2-2の同点。
1球目:シンカー - ボール
2球目:カットボール - ボール
3球目:カーブ - ホームラン

スポーツナビ引用

3本目の村上選手のホームランは防げたか?

結論:明らかな意識統一のなさと準備不足。
この場面、配球的に防げたかどうかより重大な問題があった。

<意識統一のなさ>
それは、2アウト1塁で村上を敬遠するのか、勝負するのかの意思統一がおそらくされておらず、梅野捕手も石井投手も、勝負?敬遠?という疑問が浮かんでいる中で、この打席が始まったということである。
梅野捕手は何度もベンチを見ている。2ボールのタイミングでもベンチを見ていた。おそらくここで捕手と投手は敬遠もありという意識はあった。しかしベンチから敬遠の指示は出ない。勝負するのかな?という状態で勝負に行った。これは配球以前に勝負する状態にない。せめてベンチから明確な指示を出す必要があるし、投手コーチがマウンドに行ってベンチの考えを伝えるべきだったと思う。そこが出来ていない時点で阪神ベンチの失策である。
DAZNの中継でも解説者が敬遠でいいのでは?と何度も言っていた。試合後のTwitterでも敬遠だろう、という声は多く聞かれ、敬遠しない矢野監督への批判も多かった。敬遠すべきかどうかは次の章で話す。
私はこのホームランは意思統一がされていない中で、勝負であれば勝負とベンチが明確に指示を出しに行かなかったことが全てだと思う。

<準備不足>
もう一点最後に打たれたカーブであるが、実は7/22からのオールスター前の最後の3連戦で広島バッテリーが2試合で6球村上にカーブを投げている。そして森下のカーブを村上がホームランにしていた。
その前のカードが広島バッテリーは村上対策に緩急として緩いカーブを多投しており、村上が7/23の6回にとうとうカーブを捉えてホームランにしているのである。その状況が阪神の中で共有されていたのだろうか。この試合村上の前に青木の場面でカーブを2球続けており、おそらく村上の頭の中には自分にもカーブを使ってくる可能性があるというのはあったと思う。
その中で0ストライク2ボールから勝負するのかしないのか曖昧なままカーブが真ん中高めに入りホームランになったのである。
その意味では、前回の広島戦のデータが頭に入っていない阪神バッテリーの準備不足もここでは大きく影響したと考えられる。

延長11回同点で2アウト1塁で4番村上は敬遠すべきだったか?

ファンの声

サンスポの記事

ポイントは、次の打者が打者がサンタナではなく渡辺に代わっていたことである。そのため、村上より渡辺の方が抑えられる確率は高い。代打は荒木か西田になるが外野守備や捕手の控えを考えると荒木の可能性が高く、荒木も打率.158で抑えられる確率は高い。

しかし、その中で私はこの場面、村上と勝負だったと考える。
その理由は、後半戦の残り50試合以上、阪神はヤクルトとの対戦がまだ7試合ある中で、村上を全て敬遠で勝ちきれるかというと難しいと思う。ヤクルト打線がコロナ明けで復調していないが、8月後半に復調し始めた際に村上を敬遠し続けて勝つというのは可能性として難しい。これが負けたら終わりの試合で勝負に出るのであればいいが、シーズンを通して考えたときに阪神は村上を抑える必要がある。そして優勝を狙うなら村上を抑えて勝つしかないのである。
その意味では私は昨日の場面で村上勝負という選択肢が間違いとは考えていない。しかし、なぜ勝負するのかを私は首脳陣からバッテリーに明確に伝えるべきだったと思った。それが伝わっていない中では敬遠も勝負もどちらも間違いであると思うので、そうした意識の統一が最大の問題点の前提の上で、意識統一をして勝負するのであれば問題なかったと思う。

結論

結論としては、今回の村上の3打席連続ホームランは、村上が凄いに尽きるが、2本目・3本目は防げる可能性があったホームランであると感じた。そして、このゲームで10ゲーム差となり、事実上、ヤクルトの優勝がかなり近づく阪神の1敗となった。さらに、ベンチとバッテリーの意思統一の出来なさで信頼関係が揺らぐ出来事であったとも考えられるため、阪神はここから逆転優勝がかなり難しくなる悪い負け方であったと考えられる。
おそらくバッテリーはなぜ敬遠させてくれないのか?と思っていただろう。ベンチは3打席も連続でホームランを打たれるな、と思うかもしれないが、明らかにベンチワークから起きた問題だった。
このようなベンチワークに問題があると、どうしても勢いをつけて首位に追いつくことは難しくなると考えられる。その意味ではこの1敗は大きな1敗になった。


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