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【まとめ】少年野球の問題は哀しい大人たちの問題だ(7)

 少年野球(学童野球)の現場を改革したいのであれば、まずすべきことは指導者たちの意識改革だ。「それができれば苦労はない」と思うだろうが、肝心なのはアプローチの方向性と順番だ。

 連盟が2023年春に、異例の通達を出したことは関係者なら周知の事実だろうが、あの程度の通達などなんの力も持たない。
 なぜなら、今現場で好き放題やっている大人たちの多くは「説教されることが大嫌いだから少年野球で威張っている大人たち」だからだ。そんな彼らを上から目線で指導したり、講習会を開いてキレイごとを啓蒙しようとしたところで素直に受け入れるはずがない。

 だから最初にやるべきは「指導者たちに迫っている危険について」の注意喚起ではないだろうか。

 これからチームにわが子を入団させる世代の親たちは人間関係のストレスや無意味な付き合いを嫌い、タイムパフォーマンスを重要視する世代である。そして何よりSNSが身近な世代だ。
 だから年配の指導者が飲み会で交流をはかり、互いの人間性を知った上でミスやワガママも許容し合おうという作戦には乗ってこない。指導者のミスはミスであり、それをフォローするのは酒の席ではなくグラウンドだとしっかり線を引きたがる。ましてや年配指導者から過去の栄光や自慢話を聞かされるだけのダラダラ長い飲み会など苦痛でしかないと思っている。しかしそうした不満を表に出せば面倒なことになると分かっているから、結局SNSでこっそり発信して憂さ晴らしするのだ。

 そうした世代を相手にするという意識のない指導者たちは、いつでも地獄へ突き落とされる可能性がある。
 これまでと同じように選手を叱ったつもりでも、それを暴言と捉えられて証拠の動画を撮影され、その場面だけうまく切り取られて拡散されたらどうなるか・・・あっという間に炎上し、個人情報が明かされ、見知らぬ誰かから誹謗中傷されることだってないわけではない・・・という現実をまず突きつけなければならない。

 指導者たちはいつも背後から親たちに監視されている。ポケットに武器を忍ばせた親たちが、わが子が理不尽に傷つけられないかいつも見張っている。そのことをまず警告しなければならない。

 そして現代のコンプライアンスについて興味を持たせ、自分の言動や価値観に向き合ってもらう。「どちらが正しいか」ではなく、まず違いそのものを理解してもらう。
 もちろん指導者側にだって言い分はあるだろう。「ではどうやって指導すれば良いのか」と困惑するかもしれない。怒り狂ったり、へそを曲げたりするかもしれない。それが大切だ。不安・疑問・怒り・葛藤・・・そういった感情を引き出すことだ。これまでの自分の価値観が覆されるショックをできるだけ大きく、深く与えなければならない。

 間違えてはいけないのが、「自己防衛のため」という目的をまずしっかりと分からせることが重要だ。それがひいてはチームのため、子どもたちのためになるのだという順番でアプローチしなければ絶対に成功しない。
 
 それができてようやく問題の本質に迫ることができる。「なぜ自分はこの活動をしているのか」という自分自身への問いかけは、そこから始まる。


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