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子どもの生きる力を育む『対話の授業』始めました!【中編・発表】

対話の授業担当のおとわです。
今回は前編でご紹介した授業内容の続きと、子どもたちの発表、そしてファシリテーターの役割として意識したことや振り返りを、隠すことなくすべて公開しています。

【準備】合意形成へ向けて。聴くって難しい?

「伝える」を練習した後は、自分以外の友達が伝えるメッセージを聴きながら、質問をつくる練習です。極端に言えば、話を聴いて質問を作れないなら聴いていないと同じなので、聴きながらどれくらい質問を作れるかを体感してもらいます。実は、この対話の授業の一番大事な部分はこの「聴く」「質問を作る」なので、質問を作るワークを繰り返し行いました。

「伝える」1時間目と同じで、まずはコツやテクニックを教えずに質問を作ってもらいます。多く作れる人で5分で5個以上・10個未満だったと思います。これは一般の社会人や大学生でも変わりません。
ちなみに、僕が作ると『質問を作るスピードに、書くスピードが追いつかないけど、20~30個の質問が作れるよ。』という話をすると、え~~~と驚いた声が上がって、素直な反応がとても新鮮で嬉しかったのですね(笑)
大人相手だとホントに?みたいな疑いや批判的な目線が多いので(苦笑)

質問がたくさん作れるイメージをもってもらうために、簡単に質問の作り方や質問の種類をレクチャーします。下記のスライドは当日見せた1枚です。

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「勉強をした方が良いか?」という問いに、「何を、」という言葉が前にくっつくだけで、質問の答えがかなり違いますよね?
同様に「良い大学に入るには、」という言葉が前にくっつくだけでこちらも答えが大幅に変わります。これだけで3つ4つすぐに質問を作れますね。
この他にも対義語(個人⇔集団/好き⇔嫌い/質⇔量 など)を使う方法も伝授することで少し具体的に質問を作るイメージを捉えてもらいます。

質問が作れない体験をしてから受けるレクチャーなので、食い入るようにみんなが聴いてくれたように感じました。また、(後編)で共有するみんなの感想にも質問に対する苦手意識や難しさが多く書かれていたことからも、「聴く」「質問する」の大事さを僕も改めて実感できました。

【実践】いよいよ、グループで合意形成の実践!

ここまでで「伝える」「聴く」がイメージできた準備を踏まえて、最後はグループワークによる話し合いです。多数決ではなく合意形成をゴールとして、みんなでやりたいことを発表します。

グループワークのゴールイメージとして解説したのは「伝える」で説明したピラミッドストラクチャーを発展させた以下のフォーマットです。
メインメッセージを意識しながら、話し合った合意点をこのフォーマットに当てはめて発表する練習をします。

【ツール】発表用のフォーマット

①メインメッセージ
②詳細説明
 └1-メインメッセージを具体的に説明する。
 └2-(1とは違う説明)
 └3-(1・2とは違う説明)
③理由
 └1-なぜ、メインメッセージで書いたことをやりたいのか理由を書く。
 └2-(1とは違う理由)
 └3-(1・2とは違う理由)

最初の「伝える」ワークをやったときよりもちょっと難易度をあげて、メインメッセージを支える、複数の詳細説明による具体的な内容と、複数の根拠による具体的な理由を伝えられるフォーマットになっています。
メインメッセージが長くなりすぎると本当に伝えたい事が薄れてしまうので、詳細説明と理由をそれぞれ分けて複数の要点を整理する方法の一つとして、今回はこのフォーマットを紹介させてもらいました。

※フォーマットは、場面や伝える相手に合わせて都度変える方が良いです。このフォーマット以外にもたくさんありますが、今回は初回ということもありオーソドックスなこの形で。

【テーマ】発表へ向けて話し合い(合意形成)!

テーマはこちらでいくつか準備しましたが、本来は自分で決めて自分で発表する!というスタイルを取りたいので基本的には自由です。
ワクワク楽しく話せるというコンセプトのもと、当日提示したテーマが下記です。

・学校でやりたい行事、あったらよかったなと思う行事
(遠足、運動会、文化祭以外で)
・卒業後に、このクラスでやってみたいこと
・学校という施設を使ってやってみたいこと
・テーマ自由(1人ではなくて、クラスでやりたい事であればテーマ自由)

限られた時間でしたが、一生懸命話し合って、具体的にやりたいことを考えてくれたように思います。以下は当日の発表内容そのままですが、皆さんから見てこの発表はいかがでしょうか?よくできてる?ツッコミどころある?

【発表1】大泉(地域)を活性化させる施設を作る

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【発表2】1週間休みに体育館・学校をリメイクして、余った時間に出かける

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【発表3】日本一周(春休みに)

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【発表4】6年生が楽しめる日を作る

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【発表5】逃走中を再現する

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【発表6】世界初!小学生5日間おにごっこ

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【発表7】卒業後にみんなでおでかけをしたい!

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【発表8】学校を使って、おにごっご!

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【発表9】色組対抗!陸上記録会!

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どの発表も、大人ではなかなか思いつかない発想や工夫があって本当に面白く、説明の中に三井先生のおごりで!という班が2つもありることからも、先生が愛されていることがよくわかります(笑)
最後にこのアイデアは良かった!具体的にこれはやりたい!という気持ちをこの授業で終わりにせず、それぞれ話して本当にやってくださいね!とお話しをして授業は終了!

校長先生も見学に!

最後の発表の時間には、校長先生も発表を見に来てくださいました!
別の機会でお会いした際に、コミュニティスクールを目指していると聴いていたので、この対話の授業がコミュニティスクールのきっかけや構成する一つになると嬉しいですね。

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【ファシリテーターの役割】授業の中で意識した4つのこと!

・できるだけ、仕事で使う言葉を、そのまま使う。
→エレベータートーク、メインメッセージ、ピラミッドストラクチャー等
社会人はこんな言葉を使っているという共有にもなるので、難しい言葉は解説を入れながら、仕事で普段使う言葉をあえて使いました。

・「教える」ではなく、「一緒に学び合う」というスタンスで。
→相手は何が知りたいか?を僕自身が学びながら、子どもたちが知りたいことを伝える。
教えることが目的化してしまうと、相手が何が知りたいのか?を見逃してしまいます。正解のやり方はないですが、本当に難しいところですね。

・「考える」を大切に、本人たちが活動する前から、やり方を教えない。
→最初からやり方を教えてしまうと、考えるタイミングを失ってしまう。
「自分の頭で考えてもらう時間」を特に意識して、あまり説明し過ぎないようにしました。止まってしまう場面も確かにいるのですが、子どもたちは失敗を恐れず自由にどんどん進めるのは非常にステキな発見でした。

・自分事でやりたい!と前向きに、キャッキャッするような仕掛けを作る。
→子どもたち自身が、この機会だから話したい!というテーマを設定できるかが実は大変でした。今回見せたテーマが正解とはおもっていないですが、工夫を重ねて子どもたち自身が「自由にやってもいいですか?」とか「自分たちで決めていいですか?」と言ってくれるような形を目指したいと思っています。NPOのインターンとして参加してくれている高校生が、小学生に教えるというような授業の形も年齢の近いので面白いかもしれません。教える高校生の学びとしても大きいですしね。

【子どもたちへ】授業を終えて、僕から最後に伝えたこと。

三井先生からも「子どもたちへ向けてメッセージをお願いします!」と言っていただけたので、少し僕個人からお話しさせてもらいました。

やりたいことはどんどん発言して、人に伝えてみてください。そして、気になったことはどんどん質問してみてほしい
理由は「伝える・聴く」ことは、自分のやりたいことが具体的な形になるきっかけになるからです。それも必ず。今回のこの対話の授業も、社会人向けにやっていた企業研修を学生向けにアレンジしてやりたいと人に言い続けていたら、三井先生とのご縁につながりました。
伝えることや質問することは、現実を引き寄せ近づくことそのものです。ぜひ、どんどん日常生活でトライしてみてください!

【振り返り】対話の授業を、よりよくするために。

今持てる能力では精いっぱいやったのですが、次回以降どこかで開催する場合の振り返りです。

・子どもたちからの質問をもっと引き出したい。
→「質問を聴く前に、書く時間を取るのもいいかもしれない。」というのは三井先生のアドバイスですが、確かにその通りですね。
大学生向けに対話の授業を開催したときも、今回同様に質問したり発言することに慣れていない印象があったので、ファシリテーターとしてここをどう克服するか?という課題もありそうです。オープンフォーラムのようにTwitterでつぶやいてもらう?とかテクノロジーの力を借りるのも一つかもしれません(笑)

・質問の作り方のコツやテクニックをもう少し踏み込んでもよかった?
→時間の関係で、この授業の中では全部やり切れませんが、質問つくるだけの授業時間があってもいいかもしれないですね。
題材はそれぞれが持ち寄った興味関心がある本や映画やYoutubeなどなんでもいいんですが、子ども時代に多様な質問を作る経験があるだけでも、大人になった時に色々応用できる範囲が広がりますね。自分の興味関心が高い対象だと質問がたくさん作りたいとおもうのか?質問を作る動機とうまくつかぎたいというのが改めて発見した課題です。

・最後のグループワークを、もっと具体的な実行可能なところまで。
→時間的な制約は理解しつつも、ベースはプロジェクトラーニングにあると考えているので、もっと具体的な行動につながるような工夫の必要性を感じました。いつ始めていつ終わるの?どこでやるの?どれくらいお金かかりそう?誰に協力お願いしたい?などなど、進み具合によって個別に質問をした班はありましたが、もうちょっと全体に共有してもよかった部分はあると思います。ただ、あんまりこちらが質問を投げ過ぎると考える機会を奪ってしまうのでトレードオフではあるのですが、都度現場の状況を見て判断したいとおもいます。

北杜市立・泉小学校 6年生担任・三井 一希先生

今回に限らず、外部講師による授業開催(子どもたちが、家庭や学校以外の色んな大人と話せるきっかけになる、素晴らしい取り組み!)にとても積極的で、すでに、プログラミング教育で色々な外部の知恵を取り入れたり合意形成という言葉を今回の授業前から普段の授業で使うなど、先進的で多様な視点と視野の広さを合わせて持った先生です。
また「私たち教員は、対話の授業は苦手だ」という一言から今回の対話の授業のご縁にもつながったのですが、そういう苦手なことを苦手と言える強さも持たれているところに、とても魅力を感じますね。
こういうスタンスが「いますぐ、できなくてもいいんだよ!」というやさしさとして、クラスの中に浸透しているような暖かい雰囲気がありました。

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山梨県北杜市生まれ。新潟大学教育人間科学部を卒業後,山梨県内の公立小学校に勤務。
2014年に熊本大学大学院教授システム学専攻博士前期課程を修了,修士(教授システム学)。同年,博士後期課程に進学し現在に至る。
その後,台北日本人学校(台湾)を経て,現在は北杜市立泉小学校に勤務.
専門分野:教育工学,教育方法学

後編・感想)へ続く!(前編・内容)はこちら!


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全国の子どもたちにも「対話の授業」を体験してもらえると嬉しいです。

ぜひ、こちらからお気軽にお問い合わせください。

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Q.小学1年生でもできますか?

A.「伝える」と「聴く」は小学一年生でも確実にできます
もっと言えば、幼稚園でも伝えるはできるので、字が書ければ言いたいことを書くことで頭の整理ができます。大人の価値観や先入観なく、年齢はあくまで参考程度で個人個人を見てもらえればと思います。
合意形成は過去に話した小学生との会話から、4年生くらいからはできると考えています。

Q.学生の状況に合わせて、難易度を高めたり、低く設定したりすることはできますか?

A.できますよ。対話のテーマも学生本人たちが持ち寄った方が自分事になるので、テーマを自分で出せることが望ましいですね。
話し合いたいことがあって、そのために対話の授業を学ぶという構成が本来の姿と考えています。授業を通じて学校の先生とも一緒に学び合いをして、日常の対話の中で使ってもらえることを目指しています。

Q.謝礼はどれくらい必要ですか?

A.交通費(必要に応じて宿泊費)はお願いしたいですが、非営利活動ですので現状は「言い値(0円でもOK)」で大丈夫です。
終わってからの効果や成果を見てもらってから決めていただく方が、気楽でやりやすさはあります(笑)

まずは、お気軽にご相談ください。


【対話の授業 音羽 真東(おとわ まさと)プロフィール】

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1970年代東大阪市生まれ。八ヶ岳山麓・標高1000mに移住し、人口密度が都内の0.5%の地域で、家族と共に薪ストーブで田舎暮らし。
大阪の偏差値低めの大学を卒業後、PG/SEのエンジニアを経験後、大手や外資系の各種コンサルタントとして考える領域のプロジェクトを経験。
現在は、株式会社マネジメントに参加し、プロジェクトデザイン・プロジェクトマネジメントの技術でさまざまなプロジェクトに関わる。
また、みんなの政策シンクタンク・みんなのプロジェクトラーニングスクールを運営するNPO法人toiro commune designingにも参加し、地域の社会問題を解決する地域ファシリテーターとしても活動。
移住をきっかけに、都心とは異なる地方特有の問題の調査・分析をはじめ、ソーシャルデザイン・市民の政策シンクタンクなどの実証実験など、個人や地域のありたい姿をカタチにするチーム作り・プロジェクト化などで、非営利活動を通じて具体的な問題(地域の交通・空き家・リサイクル・子どもの居場所づくりなど)の解決にも取り組む。各プロジェクトはこちらから。

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