子どもの生きる力を育む『対話の授業』はじめました!【前編・内容】
対話の授業担当のおとわ まさとです。
北杜市立・泉小学校の6年生担任・三井 一希先生とのご縁から、ゲスト講師として対話の授業(2・3・4時間目)の機会をいただきました!
【はじめに】そもそも、対話ってなんだろう?
一言に対話といっても、いろんな種類があります。
まず最初に「対話にはどんな種類がありますか?」と生徒のみなさんに聴いて、おもいおもいの意見を言ってもらいます。
会話、議論、討論、ディベート、合意形成(生徒はこの言葉を知っていました!驚き!)、話し合い、コンセンサス、ブレインストーミング・・・
それぞれの言葉の違いはあえて説明せずに、
「例えば会話と議論って同じ?同じ対話でも、会話しよう!と言われるのと議論しよう!と言われるのは、ずいぶん印象が違うと思わない?」
という投げかけをすると、『ホントだ~』という声があがります。
大人でも普段の生活や仕事の場面でもこの違いを、あまり意識しないです
が、同じ言葉から連想した言葉でもかなり違いがあることを意識してもらうことが、まず最初の意識合わせ(合意形成)ですね。
【目的】なぜ、対話の授業をやるの?
①自分が言いたいことを、言える。
②相手が言いたいことを、聴ける。
生きていく上で、この二つはとっても大事なことだと思いませんか?
2020年から始まる新しい学習指導要領にもある「生きる力」を支える一番重要な要素、それがこの二つではないかと思っていて、「助けて、できない、手伝って、やりたい、教えて」などの一言をちゃんと言えるだけでも事態が前に進むことはよくありますね。
①②の2つの切り口だけを見れば、プレゼンやディベートの授業でもそれっぽい授業は可能です。もちろん、それらのスキルも重要ですが、大事なことは何のためにコミュニケーションをしたいのか?という動機の部分です。
自分の意見を通したい、相手の話を聴きたい、もっと目立ちたい、話し合いで負けたくない、アイデアをたくさん出したい、色んな動機がありそうです。
色んな動機があっていいとは思うのですが、せっかくの貴重な時間を使って学ぶので、子どもたち自身が難しいと思っている場面で積極的に対話ができる!と思えるきっかけをつかんでもらうのが本来のねらいです。
対話の授業の目的は「合意形成」
意見が一致しない人と意見を一致させる。これが対話の中で一番難しい場面ではないでしょうか?
異なる意見をお互いの追加の質問や意見を出し合い、強制ではなく一致させることを合意形成(コンセンサス)と言います。賛否が分かれる難しい場面でも、対話の技術(コツ・テクニックなどのスキル)があると、質問を出し合って異なる意見を一致へ向けて一歩前へ進むことができます。
会議などの大人の対話の場面でも、ブレインストーミングやディベートはよくありますが、合意形成を意識している場面は少ないように見えます。
ブレインストーミングは、合意は必要なく時間の限りとにかくアイデアを出す。ディベートは勝ち負けなので、権限が強いや声が大きい人が押し切ってしまったり、多数決によって強行して少数派が排除されてしまうので、合意形成にならないことがほとんどです。
合意形成は、相手の意見をじっくり聴いて、どこが同じでどこが違うのか?を判断しながら意見を合わせていくので、時間がかかるし慣れない人やコツやテクニックを知らない人にとってはめんどくさい対話の方法です。
短期的にはめんどくさいけど、中長期的にはトラブルを未然に防ぎ、共通の課題の認識を合わせて乗り越え、誰かと一緒に物事を力強く進めていく上では必要不可欠なスキルです。
【内容】実際の授業はどう進めたの?
2時間目 伝える
・エレベータートークってなんだろう?
・一番伝えたいメインメッセージってなんだろう?
・メインメッセージを支えるサブメッセージを書いてみよう!
3時間目 聴く
・相手が伝えたいことに質問してみよう!
・どうやって質問を作るんだろう?
・質問をたくさん作っていい質問を選んでみよう!
4時間目 話し合う(合意する)
・アイデアを持ち寄って話し合い、みんなでやりたいことを決めよう!
・賛成と反対がわかれた部分を、話し合って意見を合わせよう!
・みんなに発表してみよう!
<聴く・伝える・話し合う>という順番での進め方や、<話し合う・聴く・伝える>という組み立てもできるのですが、自分が言いたいことを言えないと、相手が何を言いたいか?うまく聴けないので、自分事になりやすいようにまずは今より正確に伝える体感から始める組み立てにしました。
逆の視点でいえば、伝えるのが苦手な相手の話を聴く場合、正確に聴くのは難しいことを体感することにもなります。
授業のより具体的な詳細の内容は、また別の機会にご紹介できればと思っていますが、今回は最初ということもあり、生徒さんの理解度や興味関心に合わせて、中身を当日その場で組み替えたり足したり引いたりして提供しました。
例えば用意していた動画を当日の反応を見て使わなかったり、大枠の流れは置きながらも都度起きている瞬間瞬間に合わせて順番を変えたり説明を追加したりの連続でした。
【ポイント】普段の授業と、特になにが違う?
いくつか意識していることがあります。
ポイント1.何をやっているか「目的」を意識してもらう。
例えば、最初のワーク前に
「エレベーターに乗ってから降りるまでの30秒しか時間がないときに伝えたい話があります。そのたった30秒で興味を持ってもらえるかどうかで、続きを聴きたいとおもってもらえるかが決まってしまう。」
というエレベータートークのエピソードを紹介して、どうやるかの方法論を伝えるのではなく、相手が聴きたいと興味を持ってもらうためにメインメッセージを30秒に絞る!という目的を意識してもらいます。
ポイント2.座学→実践、という順番ではなく、実践→座学という順番。
最初からやり方を教えてしまうと、考えるタイミングを失ってしまいます。実践を先にやって、後で座学(解説)をする良さがいくつかあります。
・自分が苦手なことを、自分の行動を通じて意識できる
・失敗の経験と体感ができる
・コツを知っているとうまくできるという成功体験ができる
なにも解説せずに、エレベータートークで30秒で伝えてみて!とだけお願いしてワークを始めてみると、早口で話して30秒にいっぱい詰め込もうとしたり、言いたいことを整理できずに言葉に詰まってうまくいえずに時間切れになったりします。
でもその経験によって、直面した困った状況自体を経験する考える絶好のタイミングになるので、それがよいと思っています。
その体感があった後に、伝えやすいメインメッセージとサブメッセージの解説を入れると、さっきやって失敗したり苦手なところを自分で克服して、さっきよりもうまくできるようになる(感じるだけでも)!
その前後の違いの体感が、次の学びへの動機につながると考えています。
ポイント3.大人が話している時間より、みんなが話している時間を長く。
伝えたい事はたくさんあるんですが、受け取る準備ができていなかったり、楽しいとか自分のためになると思っていないと、どんなに伝えても全く入りませんよね。
人は、他人の話を聴くよりも自分の話を聴いてもらうことが好きと何かの本で読んだことがあります。なので、能動的にわくわくキャッキャして取り組みたくなるようにとにかく自分たちの話ができるような時間をたくさん取れるように工夫しました。
全部うまくいった!とはおもっていませんが、最後のグループワークで発表した成果物を見る限りでは、それなりに楽しんでもらえたのではないかと思っています(笑)
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全国の子どもたちにも「対話の授業」を体験してもらえると嬉しいです。
ぜひ、こちらからお気軽にお問い合わせください。
Q.小学1年生でもできますか?
A.「伝える」と「聴く」は小学一年生でも確実にできます。
もっと言えば、幼稚園でも伝えるはできるので、字が書ければ言いたいことを書くことで頭の整理ができます。大人の価値観や先入観なく、年齢はあくまで参考程度で個人個人を見てもらえればと思います。
合意形成は過去に話した小学生との会話から、4年生くらいからはできると考えています。
Q.学生の状況に合わせて、難易度を高めたり、低く設定したりすることはできますか?
A.できますよ。対話のテーマも学生本人たちが持ち寄った方が自分事になるので、テーマを自分で出せることが望ましいですね。
話し合いたいことがあって、そのために対話の授業を学ぶという構成が本来の姿と考えています。授業を通じて学校の先生とも一緒に学び合いをして、日常の対話の中で使ってもらえることを目指しています。
Q.謝礼はどれくらい必要ですか?
A.交通費(必要に応じて宿泊費)はお願いしたいですが、非営利活動ですので現状は「言い値(0円でもOK)」で大丈夫です。
終わってからの効果や成果を見てもらってから決めていただく方が、気楽でやりやすさはあります(笑)
まずは、お気軽にご相談ください。
【対話の授業 音羽 真東(おとわ まさと)プロフィール】
1970年代東大阪市生まれ。八ヶ岳山麓・標高1000mに移住し、人口密度が都内の0.5%の地域で、家族と共に薪ストーブで田舎暮らし。
大阪の偏差値低めの大学を卒業後、PG/SEのエンジニアを経験後、大手や外資系の各種コンサルタントとして考える領域のプロジェクトを経験。
現在は、株式会社マネジメントに参加し、プロジェクトデザイン・プロジェクトマネジメントの技術でさまざまなプロジェクトに関わる。
また、みんなの政策シンクタンク・みんなのプロジェクトラーニングスクールを運営するNPO法人toiro commune designingにも参加し、地域の社会問題を解決する地域ファシリテーターとしても活動。
移住をきっかけに、都心とは異なる地方特有の問題の調査・分析をはじめ、ソーシャルデザイン・市民の政策シンクタンクなどの実証実験など、個人や地域のありたい姿をカタチにするチーム作り・プロジェクト化などで、非営利活動を通じて具体的な問題(地域の交通・空き家・リサイクル・子どもの居場所づくりなど)の解決にも取り組む。各プロジェクトはこちらから。
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