8 嬲嫐 前編
合コン=男と女のラブゲーム。
私も、余裕で片手で数えられるくらいだが合コン経験者である。
大学生1年の夏、大学の同じクラスの男友達、他大学の女子と合コンすることになった。
ある日友人が
「おれの女の子の友達が合コンしたいって言うてるからやらん?」的な発言を急にし始めた。そして私は男子チーム4人の内の1人に選抜された。
私は18歳までまともに彼女ができたことは無かったし、それはまさに大学デビューの瞬間だった。
他のメンバーもめちゃくちゃ興奮していた。あの憧れの合コンが目の前に迫っている。子どもの頃は都市伝説だと思ってた合コンが。そして日時決定の速報が届いた瞬間、大学構内で4つのガッツポーズと雄叫びが響きわたった。
私は人生初の合コンだった。4人中3人が合コン経験なし。
なんと、残りの1人は彼女がいる。
この不届き者め。と心の中で思ったが、底辺大学時代のカーストは彼女がいるやつがオスとして優秀なのでそんな空気を乱すような発言はせず、楽しもうと4人で準備に勤しんでいた。
そこで事件は起きた。
私は坊主頭になった。
8月に部活動でやらかして1年生全員が坊主になってしまった。
五厘(0.5mm)だった。
終わった。
私の人生初合コンは坊主で迎えることになる。
なぜだ。こんな大事な時に?なぜ坊主。
別に坊主を否定しているわけではない。寧ろ顔が濃い人だとダンディで似合う人も多いのではないだろうか。
私の顔はうっすいのだ。今までワックスとへアイロンを巧みに操り、見た目の雰囲気だけでもイケメンになりたくて試行錯誤してきた。髪の毛でかなり不細工薄顔を誤魔化してきた。
普段は必ずあるのにそれが、無い。
ダンブルドアにニワトコの杖が。
マーティ・マクフライにデロリアンが。
江戸川コナンに腕時計型麻酔銃が。
ヴォルデモートに勝てないし、物語が始まらないし、殺人事件を解決できずに人がどんどん死んでいく。
不細工顔に髪の毛が。
あって当たり前。無いと成立しないのだ。
そもそも楽しいのか?その合コンは。
相手の女の子だって、少しでもブサイクは隠した方が気分は乗るだろう。
自分も相手も得しない。
不細工が髪を剃ってくるという珍妙にして滑稽な行動を取ることで、誰得怪奇現象の発生は免れない。
存在価値があるのか。と天を仰いだが、私のじゃがいも頭が雰囲気イケメンになるのを待つために合コンが延期するはずもなく、審判の日は迫る。
しかも、開催場所が私の家なのである。
理由は男子チームで1人暮らしをしているのが私だけだったから。
もう、この時点でだいぶテンションが下がっていた私はちょっと諦めていた。
そのまま合コン当日になった。
女子が最寄り駅まで来るので、男子チームは駅まで迎えに行くことになった。
みんなでワクワクしながら待っていた。
私も諦めていたとクールぶっていたが、いざ当日となるとやっぱりどんな女の子が来るか楽しみになるものである。
そして、ついに私の運命を左右する女の子が登場した…
中編へ続く