カシャッサのユニークな樽熟成
僕は常日頃「お酒を美味しく楽しむにはシチュエーション」と言っているのですが、生産地域のことや歴史、造り方などを知ることで、お酒への向き合い方や味わう楽しさ、情なども変わってきますよね。
カシャッサもそう、ブラジルだからこそが詰まっているお酒です。そのカシャッサが造られる過程で最も興味深いのが樽熟成。使用されている樽の種類は現在40以上にも及びます。
元々生産者たちはカシャッサを保存するための容器を必要としていて、当時は銅や鉄のタンクを作る金属工業技術が発達していなかったためアマゾンの原生林種や大西洋岸の原生種などブラジルに自生する木で容器を作りカシャッサを入れていたのです。
当初は巨大な容器が多くカシャッサ本来の味を維持しつつ保存することを目的としていましたが、のちに輸送用などにも使用されるなど用途も増え多くの木材が使用されるようになります。
ブラジルで人気の樽(木材)
ブラジルで人気の樽と特徴
〜香りや色合いが浸透しにくい樽〜
●ジェキチバ -Jequitibá-
少ない着色、原材料の風味を維持しながら木質の香りを与える。
●アメンドイン -amendoim-
薄い黄色がかった色に程よい渋み、サトウキビの風味が生かされやすい。
●フレイジョ -freijó-
ほんのり黄色みを帯びた色、微かな苦味と程よい酸味。
●グラッピア -Grappia-
カシャッサの色はほぼ変わらず、わずかにウッディな香り。
〜香りや色合いが浸透しやすい樽〜
●アンブラーナ -Amburana- (ウンブラーナ-Umburana-)
バニラ、クローブ、シナモンなどのスパイス系。
●バルサモ -bálsamo-
新樽では木や野菜系の風味。古樽では若木の風味、アニス、クローブなど。
●カスタニェイラ -Castanheira-
黄色みを帯びた色と柔らかさ。ナッツ系の軽い香りと甘み。
●イペ -ipê-
オレンジ色を帯び、香りと味に強さと柔らかさをもたらす。
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●カルヴァーリョ -carvalho-
こちらはオークの輸入樽のこと
・カルヴァーリョ・アメリカーノ(バーボン樽)
・カルヴァーリョ・フランサ(フレンチオーク)
といったところ。
最後のカルヴァーリョ以外は全てブラジルに生息している木の名前で個性もそれぞれ。ジェキチバやアメンドインなどはアルコールへの浸透性が強くなく程よい風味を与えるのが特徴で、ホワイトカシャッサの保存用としても使用されることも多くあります。一方アンブラーナやバルサモなどは樹脂成分が多くスパイスの要素も強めでアルコールに浸透しやすいため香りや色合いがしっかりと浸透します。
カシャッサの樽の容量
樽の容量により2つのタイプに分かれます。
●Armazenada(アルマゼナーダ)
700リットル以上の樽で寝かせる(3ヶ月〜無期限)
_ 木材による味わいや香りもたらす。
●Envelhecida(エンヴェリェシーダ)
最大700リットルまでの樽で熟成(最低1年間が決まり)
_ 色、香り、味わいに明白な変化をもたらす。
アルマゼナーダは「保存・保管」と言う意味で、上に述べたように昔から1万リットルを超える大樽も多用されていました。木と液体の接触が少なくなるのでカシャッサへの影響を最小限に抑えることができます。一方エンヴェリェシーダは木と液体の接触が多くなるのでカシャッサに色や香り、味わいが浸透しやすくなります。
そもそも熟成って「樽の種類、容量、期間、事前処理、保存環境」など様々な要素が影響し「ボディ、香り、味わい、風味」に変化をもたらす訳ですが、カシャッサの場合はさらに木材の豊富さ、容量の幅、新樽か古樽かの使い分けなどによりそれぞれの特徴付けを可能にしています。
熟成庫にて
ミナス・ジェライス州、セレッタの熟成庫
このように様々なサイズの大樽が並んでいます。
こちらもセレッタ、年季の入った約15万リットルのウンブラーナ樽。
オーナーさんは将来的にギネスに挑戦したいとのこと。因みに現在のギネス記録もカシャッサでセアラ州「イピオカ」の37万4千リットル。
リオ・グランデ・ド・スル州、ウェーバーハウスの熟成庫
所有している樽は7種類。それぞれの特徴が書かれています。この7つの樽で熟成したカシャッサをブランドした「7Madeiras(Madeira=木材)」という商品もリリースされています。
同じくウェーバーハウスの熟成庫
真ん中には水が流れていて庫内の湿度が調整されています。
こんなことも。2種以上の木材を組んで造られる樽でブラジルでは「ブレンド樽」と呼んでました。複雑みが増しそう。
熟成期間別の呼び方
熟成期間別によりボトルによく記載されている表記がこちら。
●Pura(プーラ) =ピュアの意味
・無色透明のカシャッサでステンレスタンクで数ヶ月間休ませる。
●Clássica/Branca/Prata(クラーシカ・ブランカ・プラッタ)
・無色透明のカシャッサでステンレスタンクで数ヶ月間休ませる。
・色がつきにくい大樽で数ヶ月間休ませる。
●Premium(プレミウム)
・1年〜3年間熟成したもの。
●Extra-Premium (エクストラ・プレミウム)
・最低3年間熟成したもの。
このようにカシャッサのオリジナリティを広げているユニークな「樽熟成」ブラジルならではの「遊び心」も感じられるし、最近知人が「カシャッサってファンタスティック」と言っていてちょっと気に入ってます笑。
カシャッサの樽は世界でも注目され始めていて、すでにアメリカのクラフト会社数社はブラジルから樽を購入していますし、日本でもカシャッサを熟成したあとの樽を使いたいという個人や企業さんもいて今後が楽しみです。
今度は樽を造っている現場で直接樽職人と話してみたいなぁと思ってます。