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【2020年度改訂版】バリスタチャンピオンシップに挑戦してほしい6つの理由 -3章目-

今回は前回、前々回に引き続き、「バリスタチャンピオンシップに挑戦してほしい6つの理由」について、全6項目のうちの最後、5、6章についてお話しします。


-JBCに挑戦すべき6つの理由-
(1)ジャッジから客観的な評価を得られる 
(2)コーヒーを深く知り、深く学ぶ  
(3)短期間で技術レベルが向上する 
(4)プレゼン能力が上がる  
(5)最先端のコーヒーを知ることができる →本章
(6)新しいネットワークが広がる →本章




(5)最先端のコーヒーを知ることができる

バリスタチャンピオンシップは、コーヒーの情報全般をアップデートするのに役立ちます。
コーヒー生産国側を目を向ける際に、こちらがアップデートすべきポイントは大きくわけて3つ、「産地」「品種」「プロセス」です。
ここ5〜6年、産地では年々新しい品種やプロセスが生まれており、これに伴い今まで注目を浴びていなかった産地が、急にスポットライトを浴びることが起こっています。
南米のペルーはCOEが開催され、高品質なコーヒーが次々と生み出されていますし、エチオピアも体制の変化から比較的コーヒーのトレースが取れるようになり、多くのスペシャルティロースターから再度脚光を浴び始めています。今まで品質評価が比較的低かったインド、ベトナム、タイなども、徐々に良い品質のものが作られるようになってきています。ここ10〜20年だけでも、コーヒーマップは徐々に変化しているのです。
品種ではゲイシャが相変わらず注目を浴びていますが、天然のカフェインレスで際立つフレーバーのあるラウリーナ種や、コロンビアではシダラ種なども注目されています。これ以外にも多くの交配種が生まれており、産地に行くと無数の新品種を見ることができます。
プロセスではここ数年”ファーメンテーションプロセス”が見逃せない事例になっています。いわゆる意図してコーヒーに発酵をかけるこのプロセスは、「アナロビック」「マセラシオン・カルボニック」「ラクティック(乳酸)」「フルーツ(フルーツをタンクに投入する)」などがあり、様々な方法が実施されています。産地特性だけでは生み出すことができない特殊なフレーバーを発酵効果により作ることができ、今産地では注目の手法になっています。
こういった数々の新しい流れは産地に絶えず足を運んでいればわかることもあるのですが、それを現場のバリスタが農園に行き、キャッチすることは現実問題不可能です。しかし、チャンピオンシップに出場し競技や豆について考えることで、また日本大会や世界大会などをしっかりと観戦することで、知ることが可能なのです。なぜなら、バリスタは大会で上位入賞するために、最高のコーヒーを探すことになります。「最高のコーヒーとは何か」を考え、探し求めた結果、一定数のバリスタが最先端の品種やプロセスにたどり着くからです。なので、バリスタチャンピオンシップを見ていると、そういった最先端をいち早く知ることに役立ちます。また自らチャレンジする場合も、競技会に勝利し、新しいイノベーションを示すために、それらを探し求める行動や考えを自然におこなうようになります。


例えばゲイシャ種の誕生から現在までを振り返ってみると、このことがよくわかります。この品種が世に出たのは、2004年、パナマの国際品評会Best of Panamaに出展されたのがきっかけです。その後何年もPanamaの品評会では優秀な成績をおさめていましたが、これを競技会で使うバリスタはしばらく出てきませんでした。日本では2009年くらいに初めて大会で使われはじめ、2012~2014年頃に国内でもゲイシャを使うバリスタが複数出始めていましたが、コーヒーショップの店頭でゲイシャを見かける機会は一部の店に限られていました。国内のバリスタ大会では2016年、ファイナリストの全員がゲイシャ種という状況が起こりましたが、まだまだショップレベルでは「ゲイシャ種は特別なコーヒー」という立ち位置で、常備している店は少ない状況でした。した2018~2020年、かなり多くのカフェやコーヒー店でゲイシャのキーワードを見かけるようになりました。ゲイシャの専門店も出てきました。そう、ゲイシャ品種の誕生から16年、やっと多くの農園で作られ、小さなお店にも出回るようになった状況でしたが、2009年には大会で使用するバリスタがいたことを考えると、やはり新しいコーヒーをキャッチするためには、大会という存在は大きな意味があると言えます。

バリスタは大会で上位入賞するために、最高のコーヒーを探すことになります。最高のコーヒーを考え、探し求めた結果、一定数のバリスタが最先端の品種やプロセスにたどり着きます。そしてそれをステージで披露し、説明し、ジャッジに提供するのです。プレゼンはしっかりと伝えることが求められるため、表面的な情報以外にも、多くのアウトプットをするために、様々なことを調べ、それをジャッジに体験させようとするでしょう。
なので、バリスタチャンピオンシップを見ていると、そういった最先端をいち早く知ることに役立ちます。また、自ら大会にチャレンジし、勝利するために、「新しい何か」を求めることになるでしょう。それはここであげたような、農園かもしれないし、品種やプロセスかもしれません。新しい道具かもしれないし、新しい抽出の考え方かもしれません。その主語が何なのかは、バリスタによって違うかもしれませんが、それが最先端である可能性は決して低くないと思います。


6)新しいネットワークが広がる

バリスタチャンピオンシップがもたらす最後の効果・恩恵は、ネットワークです。
この大会に出場し、一定以上の成果を納めたいと思うなら、1人だけで準備し、臨むことはおすすめできません。豆のことは決定権者や焙煎人と相談する必要がありますし、客観的に自分のことを評価してもらう大会経験者や審査経験者などもいるといいでしょう。自分の練習をサポートしてくれるスタッフも居たほうがより良い環境になりますし、家族や店の仲間の同意や応援があれば、より力を注げる環境が生まれます。このようなことは非常に基本的なチーム作りで、大会に臨むうえで必須事項であると言えます。もっとレベルを上げようと思えば、また必要なことが変わってきます。 生産者や、その生産者から買い付けをしているバイヤーとコミュニケーションし、コーヒーの情報、生産者の情報を取る必要が出てくるでしょう。
こういった必要なサポートや情報のために、多くのコーヒー関係者とコミュニケーションを取ることになり、それが今まで普通に業務をおこなっている際には学べなかった、なかなか知ることができなかった領域を知ることになるのです。
そして日本チャンピオンになった時、もっと大きなネットワークが広がります。あなたが使ったコーヒーの生産者や、輸出業者が、あなたの競技を見た国内外のコーヒー関係者が、「おめでとう」と声をかけ、さらなる協力を申し出てくれることもあるでしょう。今までの自分では想像もつかなかった領域から声がかかり、あなたが知らなくてもあなたの競技を見て、存在を知っているという人が増えます。そのネットワークがワールドワイドになっていくのが、わかるはずです。これを色々なバリスタに味わってほしい、感じてほしいと思っているのが、私が大会でコーチ業をしている理由の1つだとも言えます。


〜最後に〜

日々の業務はもちろん大切です。お店に来てれるお客様の注文してくれる1杯1杯が積み重なった私たちの生活は成り立っていることを忘れてはいけません。しかし、それでも私は時間や労力を削って大会に挑戦してほしいと言い続けています。なぜなら、大会で上位入賞したり、優勝したバリスタの手から生み出された1杯のコーヒーが、大会挑戦前とまったく次元の違う価値を生み出している姿を何十人ものバリスタを通じて、見てきているからです。
今年もコロナやオリンピックの影響で、大会事態の開催具合が見えない状態ではありますが、沢山のバリスタがこの大会にチャレンジしてくれることを願っています。

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