父と私とオープンカー
今年の1月、コペンを納車した。いわゆるオープンカーだ。
車を買うことを考え始めたのは去年の9月の終わり。
フリーランスとして自由な時間を過ごしているなかで、自分の足となる車が欲しくなったことが原因だった。
当時は特に希望の車などなく、とりあえず目的地まで行ける、簡単に言うと走ればなんでも良いと考えていた。
父は昔から車やバイクが好きで、高校生の頃からバイクに乗り始め、20代の頃には幾つかのスポーツカーを乗り換えながら、どうやらヤンチャしていたようだ。
そんな父が30歳を直前にした時のこと、マツダから出たロードスター(初代)に一目惚れして購入をした。
ロードスターは両親が結婚してからも暫く乗っていて、その時のことを時々私にも話してくれた。
それと同時に私の2つ上の兄が生まれたタイミングで、ロードスターを手放す決断をし、ステップワゴンを購入することになったとも話していた。
そんなことを昔から聞いていたものだから、私もほんの少しだけオープンカーには興味があったのだが、きっと自分の手に届くものではないと考えていた。
だがそれは奇しくも、別のディーラーでの車の検討を終えたタイミングで父の言葉で現実的なものとなってしまった。
「近くにダイハツのディーラーあるし、コペンでも乗ってみようよ」
最初私は「えー、面倒くさい」なんて返していたが、結果としてこれが私の車への価値観、ひいては人生を変えてくれる出会いとなった。
ディーラーに着くと父が、「コペンの試乗させてもらえない?」と口を開く。
急に来たにも関わらず「どうぞ」と、営業マンが快諾してくれた。
実際に運転すると、その時の感覚は今でも覚えているが、まさに最高という言葉そのものだった。
試乗を終えて帰宅すると、いつの間にか私はコペンの見積もりページを開き、父とどんなオプションを選ぶかをただひたすらに話していた。
諸々の見積もりを家で終えたあと、もうこれは買うしかないと考え、翌日にはディーラーで契約のハンコを押していた。
父も母もとても喜んでくれたが、特に父は嬉しそうだった。まさか20数年越しに、またオープンカーに乗れるとは思っていなかったのだと、その夜、母が嬉しそうに教えてくれた。
それから納車までの3ヶ月はとても長かった。
毎日車について調べ、納車したら何を買うかとか、どこに行こうかとか、ただひたすらに思いに耽っていた。
小学生の時の、翌日にディズニーランドに行く日の夜のような感覚が毎日続いた。
ついに納車の日が来た。
その日、自分のものとなる、黒いオープンカーが光っているのを見て最高に興奮した。
それからは色んなところに行った。父親は昔から腰が悪かったが、それでも助手席に楽しそうに乗り、2人で他愛ない話をする。
そんな時にふと、「きっとこれが親孝行になっているのかな。そうだと良いな」と思う。
私の過去を深掘りするつもりはないが、両親とぶつかる時期もあったし、何より大学卒業まで、そして大学卒業のあとも、フリーランスとしてずっと自由に生きることに何も言わなかったことにはとても感謝している。
これからもこんな時間をできるだけ長く、大切にしていけたら良いなと思う。
オープンカーは時を超えても、特別な乗り物なのだと私は思う。
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