生物クイズ#2【遺伝子再構成】
問題
リンパ球B細胞の遺伝子再構成について考える。抗体H鎖の遺伝子にはVユニット、Dユニット、Jユニットでそれぞれ100、30、6個の遺伝子断片から1つの遺伝子断片が選択されるとする。同様に、L鎖の遺伝子にもVユニット、Jユニットがあり、それぞれ40、5個の遺伝子断片があるとする。しかし、これらの遺伝子断片のうち3つは自己の細胞を抗原と認識してしまうため使えず、2822400通りの抗体が作成された。使えなくなった遺伝子断片3つはそれぞれ何鎖何ユニット由来のものか。
答え
H鎖Vユニットのもの2つと、L鎖Jユニットのもの1つ。
解説
2822400を素因数分解すると、$${2^{8}\times3^{2}\times5^{2}\times7^{2}}$$となる。
ここで、3つ以内の遺伝子断片を取り除いた際に7の倍数個の遺伝子断片が生じるユニットは、H鎖のVユニット(2つ取り除くと$${98=2\times7^2}$$個)とH鎖のDユニット(2つ取り除くと$${28=2^{2}\times7}$$個)である。よって、掛け合わせると$${7^2}$$が生じたため、H鎖のVユニットの遺伝子断片2つが使えなかったと考えられる。残りの4つのユニットから1つの遺伝子断片が使えなかったと考えられ、素因数分解の結果と合致するのはL鎖のJユニットの遺伝子断片が1つ使えず、4個になった場合である。
実際に、それぞれのユニットから1つ遺伝子断片を選択する場合の数を掛け合わせると以下のように問題文の抗体の場合の数と一致する。
$${(100-2)\times20\times6\times40\times(5-1)=98\times20\times6\times40\times4=2822400}$$
一見考えなければならないパターン数が多すぎて解くのが困難なように思われるが、算数のテクニックを用いるとそこまで手間をかけずに解けてしまう。また、実際の抗体はこのような遺伝子再構成によるパターン数の増加以外にも突然変異率を局所的に上げる仕組みによって配列の種類を増やしており、無数ともいえる抗原に対して反応する抗体を産生している。