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身体感覚と感性
キノ・マクレガーの本「The Power of Ashtanga Yoga」にこんなことが書かれていました。
「最近、R・シャラート・ジョイスがマイソールでアシスタントに、こう言っているのを聞いた。「アームバランスや後屈に挑戦する生徒がいたら、助けに行く前にしばらく自分でやらせるように。」彼の実際の言葉は、”経験させる suffer” とか “転ばせる fall” というものだった。
新しいポーズを学ぶとき、'自分の身体や心の中にある恐れや痛みを呼び起こす場所' に行く手助けをしてくれる先生が必要になることがよくある。しかし、しばらくしたら、自分の神経系を強化し、自分の内なる決意を持ってその場所に向き合う必要がある。
毎日先生に助けを求めることは、最も難しいポーズに含まれる厳しい教訓を学ぶのを経験することを妨げる。一種の逃避であることでもある。」
どんなポーズもできてしまうイメージのキノですが、ピンチャマユーラアサナができるようになるのに、毎日練習して1年半かかったそうです。
新しいポーズを練習するときには、体の動きを自分の神経に繋げる神経系を強化することが必要です。身体の多方向に意識を向け、それを繋げる感覚を養い、自分で答えを出す習慣をつけていきます。
神経が繋がってくると、身体の繋がりが感じられ、動きにも連動が起こります。鍛えるべきは筋肉ではなく感覚なのです。
神経を通わせるには、身体の反応を察知し、変化を感じとり、読み解くことで精度が上がっていきます。育てていくには時間がかかります。
息を止めず、丁寧に動いて観察すること。そして、怪我や痛みも含めた今自分が抱えている様々な事象を受け入れ、無理のない練習をすることが大切です。
私たちはアサナをたくさん練習します。ポーズができるようになることはモチベーションにもなり、ヨガを継続し習慣化するきっかけになります。
でも、アサナで体と向き合い感度が上がることは、ただそれだけではなく、日常にも大いに影響します。
話はぜんぜん変わりますが、片付けメソッドで有名なこんまりこと近藤麻理恵さんという方がいます。彼女の「人生がときめく片づけの魔法」という本は40カ国以上で翻訳出版され、世界的大ベストセラーになりました。
こんまりさんの本は欧米では禅、哲学のコーナーに置いてあるそうです。それは家の片付けをすることで、気持ちがスッキリし、心も整い、それがマインドフルネスに通じるからとのことでした。 物を持つことは自分のアイデンティティにも関わり、片付けは自尊心に紐づいていて、それに向き合うことで心をクレンジングするとありました。
こんまりさんのお片付けの手法は、物を整理するのに、それが ”ときめく” かどうかを基準にしています。ある時、クライアントさんがなかなか物を整理できずにいました。それは好きか嫌いか、必要か否か、と頭で考えると、前に進まないということに気づきます。そして「それはときめきますか?」と言い方を変えてみたところ、片付けが捗っていったそうです。
それは理屈ではなく身体感覚です。
私たちは、日々たくさんの選択をしながら生活しています。それは些細な選択から重大な決断のものもあると思います。
そして、それは物だけに限らず、誰の言葉を信頼し、どの選択が安全か、それがたとえ少数派のものでも、直感がそれを選べば、後にそれで良かったということもあるかもしれません。
自分の身体感覚や感性を養い、それを信頼できれば、選択はシンプルに自分に沿ったものになっていくのではと思います。