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cheerioの超個人的レビュー第30回『高橋由美子:あの日から僕は』
こんばんは。チェリオです。今回は『20世紀最後のアイドル』と称されていたグッピーさんの初期あたりを取り上げたいと思います。
高橋由美子さんのデビューは1990年4月21日の『Step by Step』ですので、彼女がデビューした時は、僕はもう高校に入っていました。当時の僕はすでにバンド系を主に聴いていて、アイドル界隈は本当に自分が気に入ったものだけ、というか、前回書いたファン分業制は中学校の友達までの仕組みだったので、高校進学を機にバラバラになったアイドル好き男子は、それぞれ独自の道を行く(笑)ことになりました。というわけで、グッピーさんがデビューしたあたりのことは僕はよく知りません。
そんな僕が彼女のことを知ったのはいつだろうと思い返すと、おそらくすでに1stアルバム『Scarlet』は出ていて、2ndアルバム『PEACE!』が出る前の頃かと思います。何となく記憶を整理してみると、高校の夏休みか何かに地元の友達の家に中学卒業後久しぶりに遊びに行って、その時にその友達から教えてもらったのが最初じゃないかと思うんです。彼はアイドルのみならず、マンガやアニメにも精通していた、いわゆる「オタク」だったので、アニメからのアプローチとしてグッピーさんを教えてもらったような気がします。なので、最初は「え?アニソンとか別に興味ないし」みたいな感じでした。
余談ですが、当時「オタク」は今のように市民権を得た言葉ではなく、どちらかというとほんのり犯罪の香りさえ感じさせるような、社会不適合を意味するような、とにかく人を卑下する称号でした。
話を戻して。そんなわけで僕が高橋由美子さんを知るのはちょっと出遅れた感じだったんですが、その時友達の家で見たCDジャケット。これが結構衝撃的で。
グッピーさんの最初のアルバムです。この写真に当時の僕は結構な衝撃を受けました。何しろジャケ写の「質」がそれまでのアイドルとは桁違いに綺麗(鮮明?鮮やか?)だったんです。そしておでこを出したポニーテール。それまでのおニャン子やスケバン刑事系から明らかに進化を感じさせました。垢抜けているというか。初回盤はミニ写真集が付いているんですが、今見ても素晴らしい。というか、とにかく当時は新しさを感じていました。
まぁ、それでやっぱりカセットテープに録音して聴くことになるんですが、曲も聴きやすい。湿ったところがないというか。また余談になりますが、この記事のためクレジットを見直したんですが、このアルバムの1曲目の作曲、柴矢俊彦さんなんですね。最近連日ジューシーフルーツを聴いていたので、ちょっと驚きです。このアルバムはミニアルバム扱い?で6曲入りでした。ちょっとした自己紹介的な作品だったんですかね。2ndシングル『Fight!』含め名曲揃いです。
そんなわけで2ndアルバムは確か自分で買ったような気がします。いや、これもダビングだったかも。。。。あんまり覚えていないです。大人になってCDを買い直しましたが、やっぱ曲そのものは覚えているもんですね。かなり聴いたんじゃないかと思います。中でも『乙女時代』の印象的なベースラインは結構正確に覚えていました。
ただ、自分でもびっくりするのは、91年はBLANKEY JET CITYの1stアルバムが発売されていますので、BLANKEYとグッピーさんを同時に聴いていたんですね。その頃からアイドルとロックの共存は僕の中で確立していたわけです。
そして3rdアルバム『dream』が92年3月4日に発売されます。
これも何だかんだでよく聴いていたようです。ようです、というのも、大人になって買い直して聴いてみるとほぼ覚えていたからなんですね。今回このレビューでグッピーさんのどの曲を取り上げようかと考えたんですが、彼女についてはシングルではなくアルバム単位で聴いていたので、1番記憶に残っている曲をとりあえずタイトルに、ということで、このアルバムの2曲目「あの日から僕は(作詞:秋元康 作曲:筒美京平 編曲:若草恵)」を選ばせてもらいました。
この曲は92年2月5日発売の6枚目のシングル『いつか逢おうね』のカップリングのようですね。
あぁ、筒美京平さんだったか、という感じです。しっとりしていて、耳馴染みの良い曲調。サビのメロディはヒット曲に見られるようなインパクトこそないものの、その歌詞と相まって記憶に残るものとなっています。
「僕は ぼーっとしてた ぼーっとしてた 1人 (何してても)」
「なぜか うわの空さ うわの空さ ずっと (何 聞かれても)」
「僕は 困っている 困っている ピンチ (ねえ 教えて)」
「だから どうすればいい? どうすればいい? 未来 (ねえ 占って)」
もうここだけでこの曲のアイデンティは確立しています。忘れないメロディ。恋する男の子の気持ちを歌った曲なんですけど、グッピーさんの声質が思春期の男の子の純粋さとも呼べるものに似合うんですよね。クセがないというか素直で。
そして曲のラストは、
「伝えられるものならば ため息はつかない」
と静かに終わります。この展開が素晴らしい。なんか清々しさを感じます。
グッピーさんは、この後、『コートダジュールで逢いましょう』でしっとりした後、急に弾けたような曲を出したり。コートダジュールまでは素敵だなぁと思ってたと思うんですが、その後はどうもノリについていけなかったのか、次第に僕自身が離れていったように思います。
ちなみにグラビアや写真集などで結構、水着姿も披露していたように思いますが、全く興味なかったです。
94年の『友達でいいから(「南くんの恋人」主題歌)』のあたりになるとちょっとした懐かしささえも感じる、というか「俺、前から知ってるぜ」的に斜に構えた感じもしたような気もします(笑)。
『アイドル冬の時代』という書籍ではグッピーさんご本人は『ほぼ壊滅的に覚えてないんです、あの頃のことは」と述べられています。また、アイドル「高橋由美子」を演じていた、という当時のファンからしたらショッキングとも呼べることも述べています。まあでもそれが本当のところだろうと思います。他のアイドルも似たり寄ったりではないでしょうか。でもリアルタイムでファンにそのことを感じさせないのが今のアイドルとは違ってプロだったということではないでしょうか。今は良くも悪くもSNSで本音ダダ漏れですからね。
現在に至るまで、要所要所で話題が出てくるグッピーさん。メディアの取り上げ方がどうも意地悪い感じがしますが、とにかくほっとけない存在であるのは今も昔も変わらないのでしょう。そして、アイドル期を経て、自分らしく歳を重ねているグッピーさんは、やっぱり今でも素敵だと思うのです。
ベスト系のアルバムも複数出ていますので、改めて聴いてみるのはいかがでしょう。昨今のメディアのイメージとは違う、アイドル然とした作品に多く出会えます。
しかし、『あの日から僕は』の歌詞ではないんですけど、僕自身「ぼーっとしてた」のか、当時のグッピーさんへの思いをよく覚えていないのです。別の言い方をすると、彼女の曲そのものは身近すぎて僕の身体に染み付いていたようです。
インタビュー付き動画。やっぱこれは当時として新しい衝撃。
衣装がおそらくデフォルトでないヴァージョン。
『あの日から僕は』。感極まって歌い出しが上手くいかないけど、そこも良い感じです。
1stアルバム収録の柴矢さん作曲。しかしこのルックスはアイドルの新しい時代の幕開けを感じさせるものだっただろうな、と(しかしすぐ冬の時代に)。