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cheerioの超個人的レビュー第15回『内海和子:20歳』
今回はおニャン子クラブB面の女王と呼ばれた内海和子さんの2ndシングル『20歳(作詞:秋元康 作編曲:後藤次利)』
発売は1987年2月25日ですね。おニャン子クラブ卒業間近です。この頃のおニャン子関連の曲は名曲揃いです。しかし、おニャン子本体もその年には解散してしまいますが。
最近では娘さんともども話題になることが多かった会員番号13番の内海和子さん。おニャン子在籍時から解散後の現在に至るまで、内海さんは言わば「おニャン子クラブの顔」として知られています。
ですが。。。
小中学生時代の僕には全く理解が出来ていませんでした。おニャン子本体のアルバム『夢カタログ』で内海さんのソロ曲があって、何となくいいなぁとは思っていましたが、それでも同アルバムに収録されている『LINDA』の方の興味が上回っていました。
内海さんのデビュー曲『蒼いメモリーズ』はアニメのタッチⅣの挿入歌でしたが、当時はあまり注目していませんでした。まぁ、小学校高学年になるとアニメも限られたものしか見ない子どもでしたが。
つまり、一言でいうと、子どもには判らなかったんです。彼女の良さが。子役出身というのもあったのか、子どもの僕には大人っぽく感じ過ぎていた、ということですね。
しかし、その後、僕も大人になり。おニャン子関連の曲をランダムに流していて、「あぁ、いい曲だな」と思うのは大体、内海和子さん、吉沢秋絵さん、河合その子さんが多いです。
さて、『20歳』です。作詞は例によって秋元さんですね。
この曲の歌詞に改めて目を通すと、結構な難解さですね。SNS等はおろか、ポケベルもない時代の恋愛話のお手本みたいな。
サビのメロディ、
「20歳前の恋なら 涙で終われたけど もう泣き疲れて頰づえつけない」
「20歳過ぎて初めて 本当の別れ知った もう悲しすぎて 涙も出ないわ」
の美しいフレーズ。ここだけでもこの曲が名曲と言い切れるとこではあると思いますが、気になるのは歌詞全体の意味するところです。勝手な解釈を綴ってみます。
まず、主人公と「あなた」はどのような関係なのか。噂でしか聞くことのない「あなた」は、もう既に別れてしまった元カレ。しかも20歳前に付き合っていたけど、別れた今は20歳を過ぎている状況。
「あなた」が遠くの街へと旅立つ噂を聞いて、未練が残っていた主人公は、どうにか蓋をし続けてきた思い出の封印を解いてしまった。20歳前の「恋」なら、そのまま泣いて終わればよかったんだけど、20歳過ぎた今でも「あなた」への思いは続いている。
サビの最後で、
「今 愛を追って時を走った」
と綴られています。「恋」ではなく「愛」が使われているのは、この一カ所だけです。主人公は実際に「あなた」に会いに「走った」んだろうし、恋から愛に「走った」んだろうと。そのようなダブルミーニングに解釈しました。ただ、会いに走ったのは分かるのですが、恋から愛に走ったのは時間軸から考えれば過去の思い出に向かっています。「走る」という言葉は物理的にも時間的にも前・先に進むというイメージがあるのですが、ここでは過去に向かっています。言い換えれば「深化」している。この時間的な対比が僕の頭の中を揺さぶります。そして僕にとっては一番のキモでもあります。
主人公は「あなた」の背中を見つけましたが、直接声をかけれません。そこで別れを悟るんですね。
1番の最後では、
「サヨナラを言えば 答えになるから」
2番の最後では、
「届かない距離を 答えにしていた」
そして最後は再び
「サヨナラを言えば 答えになるから」
となっています。
主人公は別れの意味、そして別れた状況を「距離」のせいにしていたんでしょう。その「距離」は物理的な距離でもあるし、主人公と「あなた」の心の距離でもあるのでしょう。
でも最後には
「今 この気持ちを確かめたくて」
とあります。主人公は今まで別れの意味を自分以外の、「あなた」の気持ちや、二人の「距離」に求めて、そう思い込んでいた。だけど、もう本当に会えなくなるタイミングで自分の心・思いと対峙して、自分の気持ちとしてピリオドを打とうとしたのでは。
結局、「あなた」に直接声をかけることはできなかったけど、「元気でね」とつぶやいて、自分の気持ちを確かめることで、主人公は初めて本当の別れを知ることになり、愛に辿り着いたのでは、と。
ん。。。この解釈であってますか?? 笑
秋元さんがどこまで言葉に意図を持たせてあるかは謎ですが、聴く側としてはいろいろな妄想を抱かせる歌詞です。歌詞を追っていけば、あっという間に曲が終わります。
こういう歌詞こそ素敵だと思うのですが、いかがでしょうか?
内海さんの曲はそういう意味でも名曲揃いだと思います。もちろん、彼女自身の歌唱も素晴らしく美しいです。大人になった今だからこそ、誤解を恐れず言いますが、「おニャン子クラブ出身」という肩書が邪魔をしたのでは、と。真っ直ぐで伸びやかでセンシティブ。その後出てくる、いわゆる「歌姫」とは違うベクトルですが、それでもリスナーの心にスッと入ってくる感じはアイドルポップスの「歌姫」と言っても過言ではない、と。やっぱり世間の「おニャン子」に対する偏見が邪魔をしたのかな。
それでも現在に至るまで、おニャン子クラブの顔として活動し続ける内海さんはとても素敵だと思います。本当に申し訳ないけど、大人になった今だから、切実にそう感じます。