京都市主催「京町家賃貸モデル事業」は日本の空き家問題解消に一石を投じることができるのか
京都市が主催する「京町家賃貸モデル事業」の1号案件が決定しました。
空き家となっている京町家を有効活用するための事業なのですが、ひょっとして日本全体の空き家問題解消につながる可能性があるかもしれない、と思っています。
「京町家賃貸モデル事業」とは
以下、京都市のリリースからの転載です。
<目的>
担い手が見つからない京町家 について、京都市による借上げであれば 所有者が活用の意思を示すものを活用事業者に転貸し、京町家の保全・継承を推進します。
<仕組み>
京都市が京町家所有者から固定資産税及び都市計画税相当額で借上げ、それと同額で活用事業者に転貸します。
活用事業者は、京町家の活用に当たって必要となるリノベーションや維持管理等を行います(費用は活用事業者の負担)。
このモデルの特徴は
・京都市が契約当事者(マスターレッシ―)として介在すること
・京都市が民間事業者の募集を行うこと
です。
自治体がこういったリスクや手間を取るのは珍しいと思いますし、その分、京都市の本気度が感じられます。
京都市モデル事業についてはこちらにまとまっています。
関係者から見たモデル事業
このモデル事業、各関係者からするとどのような特徴があるかを整理してみます。
<不動産所有者から見た特徴>
①不動産の所有権を手放さなくて良い
②リノベーション費用を負担しなくて良い(費用負担は事業者)
③管理費用・手間を負担しなくて良い
④行政が事業者を探すため手間が少ない・安心
⑤事業者選定の条件を付けられる(京町家の特徴を残すなど)
僕の周りでも、例えば祖父母の家が空き家になったものの、どう活用するか迷っている人がかなりいます。
「思い入れがあるので処分はしたくないし、いまは自分では住まないけど、あと30年後になって仕事をリタイアしたあとには住みたいなあ」
みたいな不動産って、時代的(世代的)に結構存在している気がしています。
使っていない不動産を所有する際に問題となるのが、管理コストです。
不動産は主に 土地 と 建物 を指すのですが、
建物はモノなので時間とともに劣化していきます。
この劣化を防いだり、劣化した部分を劣化前の状態に戻すのには手間や金銭的なコストがかかります。
今回のモデル事業においては、この管理コストや手間、リノベーション工事費用を事業者が負担してくれます。
そして一定期間経過後(今回のモデル事業では15年後)、リノベーション工事後の不動産が返還されます。
空き家を活用してくれる事業者を探して選ぶことを、所有者が個人として行うのはかなり大変です。
今回は、こちらも自治体の影響力を活用して進めることとなります。
また、契約相手先も自治体ですし、行政に貸し出している期間に不動産を利用する入居者(テナント)が退去した場合も再募集は活用事業者が行うため、所有者としては改めて募集や契約を行う必要がありません。きっと安心感がありますし、非常に楽ですね。
このあたりが、いわゆる「空き家バンク」との相違点かと思います。
<行政から見た特徴>
①空き家を有効活用できる
②京町家文化を保存できる
③モデル事業として大々的に打ち出すことで、2号案件3号案件に向けた情報が集まる
京町家は文化的価値が高い一方、築古の木造建築のため有効活用する難易度が高いです。これは工事の難易度もありますし、工事コストの問題や、資金調達が難しいこともあります。
この難易度が高い京町家再生を、1棟1棟独立したプロジェクトとして見るのではなく「モデル事業」という一体のものとして捉えることによって、空き家所有者と活用事業者のマッチングのコストを下げようとしているんじゃないかなーと思っています。
(ちなみに今回の資金調達は投資型クラウドファンディングで行います。)
<活用事業者から見た特徴>
①事業機会が獲得できる
②よい広報活動になる
事業者のキャッシュフローは、
支出は最初に出ていく工事費、
収入は、モデル事業期間中のテナントからの賃貸料
となります。
今回、活用事業者は格安で転借するため、モデル事業期中の収益化の蓋然性は高いです。
工事費を賄い、期待収益を得るくらいの条件で賃貸が可能と見込めば、
活用事業者となる意味があると思います。
また、自治体連携の実績であったり、広報活動も自治体と協働できるので、その意味でもモデル事業に参加する意義があるかと。
<入居者から見た特徴>
①貴重な京町家に住める
②よい広報活動になる
建築的価値が高い京町家で、かつ現代人が求める居住空間としての機能を兼ね備えた物件に、賃貸で住める機会はそうそうありません。
また、自治体連携のプロジェクトなので露出機会もあると予想されるので、事業を行っている方やインフルエンサーにとってはそれも魅力だと思います。
モデル事業の1号案件について
ちなみに!
第1号案件のテナント候補は、東京本社のベンチャー企業の関西支社です。
社員の住居兼オフィスとしてリノベーションされます。
京町家は元々、商店と住まいが一体となっている空間で、今話題の「職住近接」のはしりと言いますか、もはや「職住共存」「職住一体」といいますか・・・。
これを現代風に再定義すると、 ワークスペース付住宅 ということで活用事業者が非常にかっこいい空間にリノベーションしてくれるはずです。ワクワク。
日本の空き家問題解消に一石を投じることができるのか
このモデル事業のポジティブな面を挙げさせてもらいましたが、もしかしたらもっとポジティブな要素があるのかもしれないし、ネガティブな要素もあるのかもしれないと思っています。
メリットやデメリットを見つけるためには、そもそもこのモデル事業の認知度が高まってたくさんの人に知ってもらうことが大事だと思っています。
私もクラウドファンディングをサポートすることを通じて、今回の案件の応援だけでなく、日本の空き家問題解消を目指していきたいと思っています!
最後に告知
ちなみに今回のモデル事業の1号案件の資金調達は投資型クラウドファンディングで行われます。
プロジェクトの詳細情報はこちらからご確認いただけます。
ご興味あるかたは是非情報確認&拡散をお願いします!
では。
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