西武、セゾンの美術展キーマン回顧録

『展覧会の絵』(森口陽、美術出版、2001年)読了。

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 著者は美術出版社を経て、1975年開館の西武美術館(のちセゾン美術館)の設立時から参加、学芸部長、副館長を務める。1994年まで同館の現代美術の主要展覧会を担当。1994年から東京造形大学教授。本書は教授退任を機に刊行される。

 というわけで、西武、セゾンの文化事業を代表する一つであった美術展の裏側、背景を知ることができるのでは?と期待して読んでみた。
 結果・・・あれっ?というほど、西武、セゾンの話はナシ。せいぜいが西武美術館のコレスポンダントがパリに在住していたこと、セゾングループ・モスクワ・オフィスがあって、ロシア語に堪能している所長がいてソ連圏の地域でのコーディネートをしていて連携していたことぐらい。残念ながら堤清二さんやセゾン系クリーターとの協業エピソードはナイ。が、意味もなく(?)収支計算書的なメモが何度か出てきており、当時よっぽど、予算関係でうるさく言われたトラウマか?と勘ぐってしまう。

 とはいえ、デュシャン、ボイス、バルテュス、ソ連・ロシア圏の紹介など、きわめて西武、セゾン系らしい美術展にまつわるエピソードが紹介されているので、セゾン系文化事業を知るには、大切な参考文献な一つといえる。

■目次
序・余白拾遺
ブランヴィル再訪 1995
フィラデルフィア美術館とデュシャン
ウルフ・リンデ著「九つの雄の鋳型」と「ストックホルムの複製」の翻訳について
ヨゼフ・ボイス ー時の鐘ー
ヨゼフ・ボイス展、開催までの「メモ1983・11・9ー1984・5・29」
バルテュス、通りの向こう側の風景
「地獄の首都」依頼旅 ー追悼・ジャン・ティンゲリー
「リトアニア_・わが思い出」について
チュルリョーニス 主題の喪失と復権
ニコ・ピロスマニ 流浪の彼方から
ダニ・カラヴァンのモニュメント ー一本の線路からヴァルター・ベンヤミンへ
パウル・クレーの”Angelus Noves”とヴァルター・ベンヤミンの黄昏
エルサレムにあったベンヤミン秘蔵の絵
ワシントン・ナショナル・ギャラリーの講演録
「フェルメール展、その準備と新発見」
あとがきにかえて

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