サイボーグ・リキシ
特注とはいえ、やはりスーツは動きにくい。
ニュー・カメアリにある廃マンションに着くと、脳内で通知音が響いた。
インナー・フォンを起動し、通話に応じる。網膜ビジョンに映る魔羅名栗(まらなぐり)親方が状況に似つかぬ陽気な様子で俺に語りかけた。
「おう、マロちゃん、着いたか」
「マロちゃん、は止めてくれと言っているじゃないですか、親方」
「つれないなあ、魔羅帯出汁(まろびだし)関」
「フルネームで言うのも止めてください。それに、元、ですよ。あなたね、俺が声をかけなきゃ今頃路頭に迷っ