父記録 2023/6/28【幸せでありますように】
晴れ、曇り、雨
気圧が不安定で、湿度が高い
母と二人で病室に入ると父は目を開けていた。今日はいい顔をしている。
呼吸はずっとゼロゼロしている。
主治医の先生から説明を受けた。
「今は敗血症と肺炎の治療をしています。
これが落ち着くまでは転院も保留となります」
病状としてはある程度落ち着いて来てはいるものの、転院するには不安定だということ。
良くはないが、この病院にまだもう少し居られるのはありがたい。
「お父さん、顔きれいにしようねー」
顔を拭くと父は「あーあー」と悲しそうな声を出した。
次第に手足をばたつかせ、やがてきかんぼうのようにジタバタと暴れ始めた。
母と二人で父の手を握る。
「悲しいのー?悲しいのー?楽しかったじゃない、一緒に色んなところに行って、やりたいことやって。やりたいこと優先しちゃうからいつもお金には苦労したわね。あたしがどんぶり勘定だから。いつもお金に追われてて「俺もうやだよ」って言ってたこともあったわね。あたしどんぶり勘定だからね。
でも、もっときっちりしっかりした人と一緒だったらきっとすぐ飽きちゃったわよ。
好きなこと、たくさんして楽しかったじゃない。」
「あーあーあー」
悲しそうに悔しそうに地団駄踏むように、父は身をよじる。
「お父さん、大丈夫だよ、大丈夫だよ」
何が大丈夫なのか分からない。
「ああ…ああ…ああ〜…」
父のジタバタが少しずつ弱まって、少しだけ落ち着いた。
30分の面会時間はあっという間に終わってしまう。
でも、経済的には大部屋がありがたい。
面会時間が短い分、仕事が出来る。
上手いこと行ったり来たり出来たらいいのだけれど。
今日はヨガレッスンに間に合った。
ただからだに没入する時間。
没入しながらも、頭の中を色んな出来事や心配事や感情が去来する。
それをBGMのように聴き流しながら体を動かす時間。
最後の合掌の時に先生が
「よかったら心の中で唱えてみてください。『私が幸せでありますように』。」
と言った。
私が幸せでありますように。
夜中、母からメール。
「お父さんに楽しかったこと思いだして店やってた時の夢を見てほしい。」
私はお母さんにもそうであって欲しいよ。
みんな、幸せでありますように。
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