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父記録 2023/6/6
曇り。腰が痛い。
父は曇り空の柔らかな日差しを浴びてすやすやと眠っていた。
父の脚をさすり、足裏を揉んだ。
時折、胸がゼロゼロと鳴り、苦しそうに顔を顰める。
「お父さん、大丈夫?よくなるよ、よくなるよ」
父の胸をさすった。
看護師さんがやってきて父の姿勢を整えてくれた。
「今日は髪をカットしてさっぱりしました。
お顔も拭いて、痰がいつもより多かったので今日は4〜5回引きました。引くたびに手をばたばたされていたのでお疲れになったかもしれません。」
痰は、多いかあ…
顔色はよい。
「まだ死ぬ感じは全然しないよな」と思う。父は両手をギュッとグーに握って、右の拳を胸に、左をお腹の辺りに強く押し付けている。
パーキンソン病の症状で、どうしても力が入ってしまうのだ。
あんまり強く握るから、爪が手のひらに食い込んでしまう。開こうとすると痛がるので、開けない。
拳の位置をずらしたり力が抜けてくるまで待つしかない。
なのでアームカバーとハンドカバーを重ねづけしている。
母が持ってきた、かわいいアームカバー。
「お父さんを出来るだけ可愛くしようと思って。」と母。
おしゃれだった父。
というか、おしゃれな母の見繕った服を着こなしていた父。
今は病院指定の寝巻きを着ているので、おしゃれ出来るのはここだけだもんね。
父はたまに握った拳を高く上げる。
私にはそれが父のファイティングポーズみたいに見える。
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