けいこにっき/3
「ひとよ」チラシのテスト撮影したのが6月。
テストとはいえアー写のつもりで撮ってもらったのに・・・
そこはかとなく『チャンプロード』感。
7月31日(金) 梅雨のおわりの夢
ひどく鮮明できつい夢を見て、朝から嗚咽してしまった。
芝居が中止になった夢だった。コロナ関連でダメになったわけではなく、なんだかうまく説明できないのだけど、私のせいで中止になる夢なのだった。
それを言い渡すプロデューサーがなんでか志村けん(尊敬してるからこその敬称略)で、夢の中で私は、
「ああ、志村けんが生きている…こんな近くでくっきりとお顔を見れている」という気持ちと、「嗚呼、こんなに大好きな方に軽蔑されてしまった」という気持ちと、「お芝居がまた、出来なくなってしまった」という気持ちとで、夢の中でも胸が潰れそうにつらく、しかしみんながいる手前か、突っ張って振る舞っていて、「目が覚めた=ひとりになった」途端に、おいおい泣いてしまったのだった。
こんな私でも、いっちょまえにプレッシャーとか感じているのかしらん。
だとしたら他の人も、元気な顔の後ろ側でいろいろとストレスがたまっているのかもしれない。7月はずっとしとしと雨が続いていたし。
劇中のある小道具を準備しに行くふたり。
異儀田は2015年の再演版とは違う役。私と役を交換するかたち。
小林美江さんが演じるのは異儀田にとって年の離れた姉のような存在。
私は以前、共演したのをきっかけに、美江さんと、劇団道学先生のかんのひとみさんと一緒に韓国で遊んだことがあるのだけど、なんて心の安まる人たちだろう、いくらでも一緒にいれちゃうなあ・・・なんて勝手に思っていて、今回の役にぴったりだと思った。
稽古をしてると改めて美江様の天下一品なコメディエンヌぶりに目を奪われる。ちょっとした表情や仕草が全部面白い。
それでいてほんとにブレのない芯の通った演技。
元同じ劇団の同僚だったまいど豊さんとふたりで絡むとまあテンポ感の気持ちいいこと!息を合わせるってこういうことか、と。俳優としてもコメディエンヌ先輩としても異儀田が吸収することは多いだろうな。
初演と再演は磯西真喜さんが同役を演じていて、これまた大好きな女優さん。俳優として女性として、優しさとかわいらしさが同居するふたりにこの役を演じてもらえて嬉しい。
やっと、梅雨が明けようとしている。
8月1日(土) どこまでやるの?というライン
感染症対策がどうしても演技に関わってきて、稽古をしながらしばしば立ち止まることがある。
たとえば、「床に寝る問題」。
芝居をしていて床に手をついたり寝転がったりするシーンがある。
しかし、床には飛沫が飛ぶということで、他人の飛沫に触れることになるから、仮にその手を自分の顔に持って行くようなことがあった場合、大丈夫なのか?と。
それで今日は稽古の最初に、『クローズアップ現代』で劇団四季が検証していた全員で見て、「飛沫の飛ぶ距離とその量」について勉強する。
当たり前だけど、今までそんなこと考えたこともない。
以前は稽古前に皆、四方八方に散らばり、ゴロゴロと稽古場の床に寝そべってウォーミングアップをしていたけれど、今回はそれも禁止(ヨガマットなどを敷いてアップをするのはOK)。
寝転がるシーンをやるときは、演出部除菌隊(うしろゆびさされ隊みたい)がブワーーーと集まってきて辺り一帯を(稽古前に既に消毒しているにもかかわらず)、除菌する。
ほかにはたとえば、「消え物問題」。
なにかを食べながら喋るシーンがあるときに、そこで飛沫が飛びながら対話することになるけど、それはいいの?観ているお客さんが心配にならない?
なるべく離れて食べるか・・・いっそ食べるシーンをなくすか・・・。
いやいや。まてまてまて。
ちょっといったん立ち止まって考えてみよう。
1.私たちは普段の生活から既に、手洗い、うがい、まめな除菌、マスク、大勢での会食禁止、などなどを気をつけて暮らしていて。
2.私たちは家を出る前、稽古前、稽古後に体温を測り、体調不良じゃないという前提で稽古場に入っていて。
3.稽古場に入るときは手洗い、うがい、稽古着に着替えて。
4.稽古前、休憩中、というかシーンの節目ごとに手を殺菌消毒していて。
5.どの舞台袖にもアルコールが置いてあって
そうまでしても、まだここまでやるの?
これはつまり、「Covid-19に感染しないための対策」ではなくて、「仮に誰かが感染してたとしても、クラスターを起こさないための対策」だ。
誰も感染していなければ、必要ない消毒もいっぱいしていると思う。
だから、「この現場にいる人は誰も感染してない」と信じれば、ここまでの除菌をやらないという決断をしたっていいのだ。劇団がそういうスタンスを決めれば、別にそれでいいのだ。
舞台監督の美智子さんは、そんなこと百も承知で、でも今これらをやっている。それはひとえに、誰も不安を抱かずに稽古が出来るようにするためなんだと思う。
自分たちの作業が増えることで皆の不安を少しでも減らせるならばと考えてくれている。
(みんなが安心できるように私たちが除菌します、と言ってくれた若手にひっそり泣けてしまう古株の私)
でも。気をつけなくちゃいけない。
あちこち殺菌しまくっているうちに自分たちが間違えそうになるのは、なにもないところからウィルスが生えてくるかのように思ってしまうこと。
「どこになにがついてるかわからない」という漠然とした不安によって、飛沫が飛びそうな危険性がある行為を限りなく排除し、「安全であること」にすべての判断をよせてしまうことだ。
そうなると、「消え物使わない方がいい」「演者同士が近づかない方がいい」「床に寝ない方がいい」そんな風に判断していくことになり、めぐりめぐって「公演やらない方が安全」という結論にたどり着いてしまう。
だから、正しく怖がるというなかにも、境界線をもうけなくてはいけない。
完全にリスクをなくすことは出来ないし、無菌室で稽古をすることは出来ない。だからどこかで、劇団としてのラインは決めなくてはいけないのだと、わかってきた。
この演出は変える。でもこのリスクは覚悟する。というふうに。
この「どこまでやるのか」を、悩んで、悩んで、夕べは美智子さんと2時過ぎまで電話した。