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ひとよけいこにっき/2
7月26日(日) 立ち稽古をライブ配信。
稽古場入りして二日目。今日は本読みの後、いよいよ立ち稽古へ。
コロナ禍における今回の稽古、通常稽古との大きな違いはたくさんあるけれど、「稽古場にいる人数をなるべく減らす」というのも、今までに無かった試みだ。
まあ通常でも、プロデュース公演などでは稽古時間にずっと全キャストを拘束しておくことは少ない。稽古の進行スケジュールを事前に知らされ、出番のある場から参加するというのはそれぞれ別の仕事などを抱える俳優陣の現場ではふつうのこと。
でも劇団公演の時は、出番がないシーンも稽古場にいたりする。
一本の作品を作る上で、自分の出番だけじゃなく他の人の稽古を見るのも大事。劇団員がお互い切磋琢磨しながら、どのように進化していくのかを見ていこうぜ、っていうのがあるわけだけど。
今回は、「出番がなきゃ来ない」「終わったらスグ帰る」。
その代わり、「稽古進行を確認しておきたいひとのために」またしてもハイテクなシステムが組まれた。
ばば~ん。「稽古場のライブ配信」だ。
常時設置されているカメラで稽古の様子を中継し、稽古場に来られないメンバーは家で稽古を見られるという仕組み。また、スタッフさんなども現場に来ずに稽古進行がわかるというわけ。さ、さすが~。
さらなる利点としては、動画がアーカイブで残るため、自分の演技を帰ってから見直したり演出のメモなどを再確認できたりもする。(するのか?)
私は自分が演出しながら出演するときには、稽古動画を撮影してもらって帰宅してから見直したりしているので、この機能はとてもありがたい。
けど、自分が役者だけだったらわざわざ見直したりしないかも知れない・・・。
多田香織、谷恭輔のふたりは、今回登場シーンが他の人よりも少し後になるため、日によって稽古がオフになることがあるのだけど、稽古開始の13時になるとちゃんとそれぞれPCの前に待機して稽古を見ているのだそうだ。
ええ!?偉くない?
私なら密かにサボっちゃいそうだし、見るとしても「15時からでいっか」とか好きな時間選んじゃいそ・・・と話したら、
「稽古時間が近づくと家にいてもそわそわしてくるんです」と谷。
「画面の中でみんなが笑っている声聴くと、何で笑ってるのか気になって・・・早く稽古にいきたかったです」と多田。
・・・・・・え・ら・い・よ!!!
7月28日(火) ポジティブ戦術。
立ち稽古二日目。
まだ台本の一週目で、今は大まかな導線や段取りを確認し、骨組みを作っていく段階なので全員マスク。
ゆくゆくはちゃんと顔が見られるようにしていく予定だけど、安全度で言うと、マスク>フルフェイスシールド>口元を隠すフェイスシールド
なんだとか。(あくまでも聞いた話ね、真実はわかりません)
ちなみに、フェイスシールドとマスク二個装備は、締め付けで頭が痛くなるし熱中症になりそうなほど暑いし、なによりマスクから出る蒸気でシールドが曇るのでいつも「雨の中・・・にじむ景色でたたずむ僕ら・・・」みたいな歌謡曲な視界になってしまう。
まずはね、段取りを覚えるだけの稽古だしね、表情が見えなくてもかまわないわ・・・とかいってたくせに、気がつくと普通の稽古してしまうわたし。
「台詞が聞き取れない!」→マスクあるから
「誰に投げている台詞なのかわからない!」→マスクあるから
もうね・・・言わせてほし・・・
マスクがすげえーーー邪魔だワーーー!!
あああ~~~外して稽古したいいいいい!!!
しかし、しかし。そんなことみんな思ってるわけで…。
ここは何でもポジティブに考えることにしようと思った。
「台詞が聞き取れない!」→マスクしていてもクリアな発声が出来るように鍛錬すればいいじゃない!
「誰に投げている台詞なのかわからない!」→マスクしているからこそ、より明確に相手へ飛ばせる台詞の出し方が学べるじゃない!!
・・・とね。
少なくとも今は、そういうことで乗り切る。
休憩は一時間に一回。
マメに換気をするためだ。
休憩のたびに演出部が、触った小道具を全部除菌してくれている(写真参照)・・・てことは演出部はいつ休むのか~!!!(涙)
除菌をやめて~
その手を止めて~
わたし~のため~に~ はたら~かない~で~
はじめは果てしなく恐縮してしまい、竹内まりや(親戚)の替え歌で謝りたくなった。だが、それはしちゃいけない遠慮なのだと、ここもぐっと我慢。
休憩はもう絶対に一時間に一回。いつもならもうちょっときりのいいとこまでやってから、となってしまうのだけど、演出助手のさおちゃんは、たとえば演出してる私の気持ちが昂ぶって稽古を止めづらい・・・みたいな状況になったとしても問答無用で換気せねばならぬため、一時間きっかりのタイマーを仕掛けている。
頼れるタイマー女子・さおちゃん
私は傍らに置いてくれたタイマーを見ながら稽古。
休憩まで残り数分!!とかなると気分は「クイズ!タイムショック!!」って感じ(古いよねさすがに)で、これもまた「あああ~時間制限いやだああ~~~好きにやりたいよう」となりそうなところだけど、
「この一時間でいかに充実した試合をするかが勝負よ!!」
みたいな気持ちになるので、案外このタイマーシステムは集中して挑めるいい手段かも知れない。
日ごとにスキンヘッドになっていく森崎健康。
演出部で活躍中。作業服だとなんか男前な感じするのなぜ。
7月29日(水) 笑いのある稽古場は必要
コロナ禍における稽古というものが想像もつかなかった頃、私が心配していたのは、
「稽古が始まっても、みんな飛沫が気になって笑い声ひとつたてない稽古場だったらどうしよう・・・」ということ。
演技とは関係の無い緊張で静まり――
しんと冷え切った稽古場で「粛々と」稽古する――
この期間で嫌いになった言葉ランキング=「粛々と」
しかしそれは杞憂だった。除菌も換気もめっぽう気をつけているけれど、始まってしまえばいつもの稽古。面白いことがあれば笑う、何なら私が引くくらいよく笑う稽古場だった。
もちろん何でも笑ってワイワイやるだけが愉しいなんて思わない。張り詰めた稽古も好きだ。悩み苦しむ俳優の様もいい。
でも演劇とは関係の無い恐怖心で、他の感情を抑制されるのはいやだった。
稽古場がクリーンに保たれるのと同じくらい、心が自由であることも大切。
「目が回る」「酔う」と評判のまいどさんのマスク。昔からの仲間である小林美江さんに向かってまいどさんは嬉しそうに、「どや?」「どや?」とエグザイルのようにマスクをつけてぐるぐる回っていた。
若手女子の吉田紗也美と矢田未来は、今回アンダーで私の代役に入ってくれている。ふたりが稽古を見ながらコロコロコロリとよく笑っている。
その声に私が力をもらう。そして稽古が終わると、さっとゴム手袋をつけて稽古場一帯の消毒を始める噴霧ガールズ。
噴霧!!魂萌え!噴霧萌え!!