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読書備忘録

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記事一覧

チーム・オルタナティブの冒険

お正月に電子書籍を購入、少しづつ温めるように読んでいた1冊です。 noteでも記事を読ませていただいている宇野常寛さんの青春小説です。 noteの記事はなかなか難しいことも書かれていて、最初身構えていたのですが、読み進めるうちに宇野さんも普通に高校生活を楽しまれたであろうことが窺えました。 さらにクライマックスになると、我が愚息たちが夢中になったヒーローものや戦隊モノが背景になったような場面が出現して、思わずニヤリとしてしまいました。 年齢を重ねると想像力が乏しくなる

恩田陸 著「spring スプリング」

本屋大賞候補作の「springスプリング」を読み終えました。 著者は恩田陸さん、「蜂蜜と遠雷」で直木賞と本屋大賞をW受賞された作家です。 「蜂蜜と遠雷」は、ピアノコンクールを舞台に、ピアノに対して全く背景が異なる出場者4人を中心に描かれていて、コンクールでの演奏の描写から音が流れてくると評論家たちから絶賛の作品でした。 そして今回はバレエが舞台で、舞踏家であり、振付師の萬春(よろず・はる)に対して踊る者、踊りを作る者、踊りに合う曲を作る者、踊りを見る者が、彼の人物像を語り

寒さの中、ほっこりする作品を読む

今日も寒いです。気温が0度以上になりません。さらに風も強くて、外に出ると体感温度は気温以下です。 こんな時はもう家で読書するのが一番です。 内容紹介と著者の言葉どおり、本当に短い文章が24節気に合わせて書かれいて、とても読みやすい作品です。 私が衝撃を受けたのが、「処暑 朝の風景」 読んでいて、自分の意識の中にある差別の実情を思い知らされました。気づかずにいる自分に身震いしました。 そして印象に残ったのが「大雪 冬眠族の棲む穴」 まさに私がこの冬眠族だと感じた作品です

読書も体調で

先日図書館司書さんから勧められた作品1冊を、やっと読み終えました。 この本の著者 新堂冬樹氏の作品は、2012年に「傷だらけの果実」を読んで以来です。 作家にとっての文学賞の意味と、ベストセラー作家となって売れる本を書く意味を対比しつつ、小説家と編集者、そして出版社の裏側的なものを描いたような作品でした。 決してこの作品の主人公、日向誠が著者を投影しているとは思いませんが、著者の活躍を振り返ると、似ているところも多い気がします。 ただ私の体調が今ひとつだったこともあっ

ありがたいけれど

昨日は定期予約している雑誌を借りるために図書館に行きました。 貸し出し可能の連絡は1週間前にいただいていたのですが、雑誌の貸し出しは最新号が出た後、その前の号が借りることができ、私の希望雑誌に予約している人はいないので、のんびりしていたのでした。 図書館の窓口へ行くと、「これから火災の避難訓練ですけれど、皆さんは特に避難していただくことはないので、どうか安心してください」とのこと。寒さの厳しき折、確かに屋内に来たばかりの来館者を屋外へと避難させるのは悪いと思われたのだろう

ユ・ヨングァン著「トッケビ梅雨時商店街」

韓国ドラマがお好きな方は「トッケビ」と読まれて、あの大ヒットした作品を思い浮かべられた方も多いと思います。 私もこの作品を手に取ったのは、新刊の棚にこの題名を見たからでした。 今韓国でも大注目のファンタジーと帯に書かれたこの作品ですが、とても心温まる、優しく、まさに幸せはすぐそばにあるという、王道の童話のような作品です。 内容もいいのですが、この作品の著者のプロフィール、そしてあとがきに、心を打たれました。 世界中で大ヒットした「ハリー・ポッター」の作者も苦労人でした

三浦しをん著「ゆびさきに魔法」

まずは私の記事を読んでくださる皆様にお礼のご報告。 昨日メッセージが届いていました。拙い記事ばかりですが、今後もお付き合いいただけると嬉しいです。 さて今日紹介するのは三浦しをんさんの作品です。 三浦しをんさんというと、真っ先に浮かぶのが「舟を編む」 本屋大賞受賞作で映画化され、最近はテレビドラマ化もされていました。 著者の作品の良さは、徹底した取材に基づいて、著者によって生み出された登場人物の人間模様を温かく描く点だと思います。 まさに本作もそれにあたっていると思い

青山美智子さんの世界

昨日積読本の話をさせていただきました。その後読んだのが青山美智子さんの新作です。 本作だけでなく、青山さんの作品の登場人物はいつも悪人がいなくて、どこか心優しく、どちらかというと弱い部分を持った人が多い気がします。 「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っている 銀座で人魚を探している王子と、今後の人生を悩む5人。彼らが出会う瞬間がとても青山さんらしい描き方で、心がほっこりするのを感じます。

宮島未奈 著「婚活マエストロ」

私が利用するいなか町の図書館は、貸し出し中になっている図書を控えめに予約するのですが、不思議なことにあっという間に貸し出し可能の連絡がきます。 夫曰く、「君が借りても返却期限よりかなり早く読み終えて返却するから本の回転数が有効なのだろう」 確かに貸し出し可能になるとすぐ借りに行くし、手元にあると読まなくてはいけなくなる性分です。今回も一気に5冊借りることになってしまって、夫がゴルフで留守なことを言い訳に読書を楽しんでいます。 昨日読み終えたのは、「成瀬シリーズ」で一躍人

ぼくのはじまったばかりの人生のたぶんわすれない日々

私の年齢になると、つい先ばかり考えて今読んでおかなければと新刊を追いかけてしまう癖がついてしまいました。 児童書も多く出版される時代です。時折これは!という子供向けの文学書に出会うこともあります。今日紹介する作品はそんな作品です。 私にとっては遥か昔の10歳という年齢。主人公のように兄弟もなく、両親の離婚というものにも経験がない、昭和を絵に描いたような両親に育てられてられ、ごく普通の小学校生活を送る女の子でした。 作者は10歳にして両親の不仲、離婚、父親の癌による病死と

第34回鮎川哲也賞受賞「禁忌の子」

私がいつも利用している図書館は住民の年齢や嗜好、興味に合わせた蔵書がなされています。いなか町なので、当然のことながら高齢者が多くを占めているため、時代物はシリーズで揃っています。さらにミステリーが多い気がします。 今日紹介する作品は、ミステリーの賞を受賞したこともあって、貸し出しの予約が多くあり、田舎でもやっと順番が回ってきました。 現役の医師が書かれたとあって、医療に関する場面がとにかく細かいです。ここまで書く必要があるのかと、読んでいる最中に感じてしまうことがしばしば

彬子女王 著「赤と青のガウン オックスフォード留学記」

先般三笠宮崇仁親王妃百合子さまが2024年11月15日に老衰のため薨去されたのをきっかけに、以前から気になっていた孫の彬子女王の作品をKindleで購入しました。 オックスフォード大学への入学は亡き寛仁殿下との約束であり、英国大学で博士課程により皇族として初の博士号を取られたことは、報道等で知っていました。 ワイドショー等で取り上げられ、一気に文庫本も人気本になったこの作品には、彬子女王の飾らない人柄が滲み出ていて、英国で多くの苦労もされつつ勉学だけでなく、多くの交友関係

ハン・ガン著「別れを告げない」

とても重い作品で、読んでいる途中に私の心へズシンと鉛が打ちつけられるような感覚を感じるほどでした。 韓国文学において、多く取り上げられている事件は、光州事件、セウォル号転覆事件、そして新型コロナウイルスの流行が挙げられると思います。 本作の著者ハン・ガンさんも2017年に「少年が来る」という作品で光州事件を取り上げ、イタリアのマラパルテ文学賞を受賞されています。 この作品は、韓国内でも長く沈黙されてきた「済州島4・3事件」を扱っていています。この事件そのものが1987年

近くも遠くもゆるり旅

義母の痴呆による徘徊、実母のくも膜下出血、夫の右足骨折とここ数年病院と縁続きの年が続きました。今は両母とも施設にお世話になり、一安心ですが、時折施設から電話があり、気が抜けません。 おかげ(?)で、スマホをいつも身につけ(トイレに入る時以外)、遠出もできない状態が続きます。そんな時図書館でこの本を見つけました。 漫画家のエッセイだから、もちろんイラストもマンガチックだけど手書き風なのがまた親しみやすい。エッセイも気取らず、詰め込まない旅行の良さが十分伝わってきます。 遠