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2020年公開 北欧映画を振りかえる ⑩ 7/17公開『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』スウェーデン映画

がんこじいさんを主人公にした『幸せなひとりぼっち』と同じ、フレドリック・バックマンの原作をもとにしたスウェーデン映画。タイトルもそれを連想させるものです。

バックマンの小説は、全世界で累計1000万部売れているといいます。日本でも3冊出版されています。『幸せなひとりぼっち』の次が『おばあちゃんのごめんねリスト』、そしてこの映画の原作『ブリット=マリーはここにいた』。2作目は7歳の少女の視点で、77歳のおばあちゃんのくらしぶりを描いている小説ですが、実はこのなかに、ブリット=マリーは、おばあちゃんのご近所さんとして登場します。いわば3作目は2作目のスピンアウト小説です。

おばあちゃんによればブリット=マリーは、いつ見てもまちがったチョコレートを口にしてしまったような顔つきをしている〝フルタイムの小言屋〟さん。女性の就業率が80%を越えるというスウェーデンでは少数派の専業主婦です。63歳。結婚して40年、子供はいません。炊事、洗濯、掃除の日々。キッチンのカトラリーの中が整然としていないと気持ち悪い、毎日の家事をTO DOリストにしてそのチェックが楽しみ、という、どちらかというと仏頂面の堅物キャラクターです。

そんな彼女に訪れた転機。実直だと信じていたビジネスマンの夫に、あろうことか、長年の愛人がいたのです。彼女は傷つきます。自分のこれまで生きてきた誇りや証し、それは何だったのか? そして、ひとりで生きようと思い立ちます。

さて、ここからが、本番。ブリット=マリーの強みは、空気を読めないこと、忖度をしないことです。特に技能もないのですが、"ハローワーク”の係の女性にずんずん近づき、田舎町の「ユースセンター管理人」兼「少年少女サッカー・チームのコーチ」という仕事を手にします。

サッカーなんて興味のかけらもなかった彼女。相手は移民の子どもたちがほとんど、町の人たちも最初は冷淡。そんなアウェー環境のなかで、堅物なキャラのまま、いかにして、独り立ちし、ハッピーなリスタートができるか。面倒なおばさんが、だんだん愛らしくみえてくる、ハートウォーミングな映画です。キチンまわりのこまかいこと、例えばブリット=マリーが重曹すきなところとか、スウェーデン人のサッカー好きなところなども楽しく観ました。

原作タイトルの『ブリット=マリーはここにいた』。ラストでこの原作タイトルの深さが生きてきます。なんか、哲学的です。

ブリット=マリーを演じたのは、スウェーデンの名優、ペルニラ・アウグストです。どこかで見た顔だと思ったら、あの『スター・ウォーズ ファントム・メナス』のアナキンの母親役をやった人でした。『愛の風景』(1992年)でカンヌ国際映画祭で女優賞受賞。夫はその『愛の風景』や『ペレ』で知られるスウェーデンを代表する監督ビレ・アウグスト。娘は『リンドグレーン』で主役を演じたアルバ・アウグストです。監督はツヴァ・ノヴォトニー。『ボルグ/マッケンロー』にも出演した女優ですが、2018年の『Blindsone』で監督デビューしています。

2020年7月17日日本公開
原題 Britt-Marie var her
製作年 2018年
製作国 スウェーデン
配給 松竹
上映時間 97分

監督・脚本 ツバ・ノボトニー
原作 フレデリック・バックマン
キャスト
ペルニラ・アウグスト
ペーテル・ハーベル
アンデシュ・モッスリングル

https://movies.shochiku.co.jp/bm/

Prime Video で観られます

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