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『ハロルドが笑う その日まで』もういちど ノルウェー映画 2020.5.2

主人公のハロルドは、ノルウェーの西岸ベルゲン市オサネという町で、良質で長持ちする家具を扱って40年。ところが彼の家具店の目の前に巨大なIKEAが出現、半年で彼の商売は干上がってしまいます。店を畳み、アルツハイマーの妻にも先だたれ、絶望のハロルドが思いついたのは、IKEAの創立者、カンプラードを誘拐する、というアイデアでした。

IKEAは北欧のいたるところに店舗を持っていますが、オサネには実店舗があり、Googleマップにも載っています。映画では、ハロルドの店の窓の向こうにあの黄色と青、IKEAの威容がつねに背景ででてきます。腹立つだろうな、これは。

最初は焼身自殺にトライしますがこれに失敗。誘拐を思い立ち、オスロに住む息子の家に寄り、ガンマニアの息子から銃を入手、国境を越えてスウェーデンへと向かいます。そんなに簡単に誘拐などできるわけがないのですが、映画ですから、いろいろあって。なんと、雪道でエンストを起こしている件のIKEA創立者カンプラードに出会い、誘拐に成功してしまうのです…。カンプラード登場。ここからがこの映画の面白いところです。

イングヴァル・カンプラードは、1926年生まれ。この映画が作られた2014年にはまだ存命でした。撮影当時86歳。亡くなったのは2018年です。マッチ売りから始めたという立志伝中の人物ですが、ケチで有名です。若い頃はナチ支持者であり、映画のなかでも、あれは若気の至りだ、と弁明します。誘拐されてからも、まず乗せられた車、サーブのこき下ろしから始まり、彼ならこんなこというだろうな、というセリフが次々。役者も本人によく似せています。マスコミ戦略に長けていたビジネスマン、ハロルドの誘拐作戦にもいちいち口をはさみます。北欧では超有名人ですから、たぶんそんな細部が面白いんでしょうね。十分理解はできないですが、誘拐されたカンプラードが、「腹が減った。ミートボールを買ってきてくれ」とハロルドに頼むところは私でもわかりました。IKEAに行くと、あれ食べますからね。

生真面目でどこかドジな誘拐犯ハロルドと、誘拐にもめげずあれこれ指図するしたたかな老経営者。ブラックな味合いも楽しめる大人のコメディです。驚いたのは、映画の撮影にIKEAが協力していること。外観も内観も、創立者が茶化されても「私たちは家具を作り、それを売るのが仕事で、君たちは映画を作り、公開するのが仕事だ。それぞれがそれぞれのベストを尽くせばいいんじゃないか」と快くOKしたといいます。なかなかカッコいいです。

2016年4月16日日本公開
原題 Her er Harold
製作年 2014年
製作国 ノルウェー
配給 ミッドシップ
上映時間 88分
監督・脚本 グンナル・ビケネ
出演 ビョルン・スンクェスト/ビヨルン・グラナート/ファンニ・ケッテル

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