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2020年公開 北欧映画を振りかえる⑦ 2/28『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』フィンランド映画

年老いた美術商、成功とはいいがたい彼の人生の終盤に、大きなチャンスが巡ってきます。オークションの下見会で見つけた小さな肖像画。署名がないので安価ですが、これは隠れた名画に違いない、72歳の主人公オラヴィは、その絵画にひと目で魅了されます。調べていくうちに、この絵は19世紀ロシアを代表する画家レーピンの作品だ、と確信します。もしそれが事実で、真相を知るのが彼だけならばひと財産、ですが、証拠がなければ二束三文。さて、最後にして最大のディールは……。

フィンランドの首都ヘルシンキを舞台にした現代の物語です。旧市街で小さな美術店を営むオラヴィ。オークションの落札価格さえインターネットで調べられる時代ですが、彼の商売道具はタイプライターと昔ながらの紙のカード。家族も顧みず、絵画に没頭した人生。娘との確執もあり、孤独なひとり暮らしです。ギャラリーをたたむことになるかもしれないという経済状況。朝、ベーカリーでブリオッシュを一つ買うのが毎日のささやかな楽しみです。

そんな彼の店に、疎遠だった孫がやってきます。問題児のため学校の職業体験課題の引受先がなく、祖父を頼ってきたのです。店番をさせると意外や商才もあり、オラヴィの調査の大きな力になってゆきます。何か小さな希望がみえてきます。

クラシカルな主人公の顔と風体、帝政ロシア領時代の雰囲気を残す街の景観、それが相まって、しみじみとした趣を感じさせる映画になりました。ちなみに、彼のいきつけというベーカリーは、エクベリという老舗です。ガイドブックによればヘルシンキ最古だそうです。孫の教育のために訪れるミュージアムは、アテネウム美術館。国宝級の美術品が撮影に使われています。絵画をめぐるミステリー、スリリングなオークション、ヘルシンキの街のたたずまい、そして家族の絆。観終わったあとも気分良く映画館を出られる素敵な作品です。

監督のクラウス・ハロは『こころに剣士を』で2015年にフィンランド・アカデミー賞(Jussi Awards)作品賞受賞。

2020.2.28 日本公開
英語題 ONE LAST DEAL Tuntematon mestari
製作年 2018年
製作国 フィンランド
配給 アルバトロス・フィルム
上映時間 95分

監督 クラウス・ハロ
脚本 アナ・ヘイナマー
音楽 マッティ・バイ
キャスト
ヘイッキ・ノウシアイネン
アモス・ブロテルス
ピルヨ・ロンカ
http://lastdeal-movie.com/

Prime Videoで観られます。

ぴあアプリ版 2020.2.24掲載 「おとな向け映画ガイド」から

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