見出し画像

まいにち 画コンテ。 #004 かどや製油【TVCM】健やかごま油 トクホで新ごま油習慣 日曜日篇(15秒)

まいにち 画コンテ。 について

こんにちは。TSUKASA KIKAKUの坂野です。
まいにち 画コンテ。は15秒のTV-CFを中心に、
映像制作のプロフェッショナルの方々によって作られたCMを
画コンテに起こし、

企画や演出(監督)
カメラワークやアングル、画角(撮影)
コピーやCI、その他(プランナー)

などの目線で自分なりに分解してみようというコンテンツです。
(有識者の方がおられましたら、権利的に怪しいよ〜などあれば教えていただけますと幸いです。。)
それでは4日目のまいにち 画コンテ。です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

まいにち 画コンテ。 #004 05/04/2021
かどや製油【TVCM】健やかごま油  トクホで新ごま油習慣 日曜日篇(15秒)

蒼井優さん出演の かどやごま油のCMです。

かどや製油公式チャンネル(Kadoya Official)公式YouTubeチャンネル
より拝借しました。ありがとうございます。
今日も画コンテにおこす作業はワコムのペンタブレットです。

画像1

今回も相変わらず時間がかかりました。3hくらい?でした。

それでは、分解してきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

企画・演出

まず画コンテを見ていただいたらお分かりのとおり、カット数が異常に少ないです。
貴重な15秒のうち、なんとワンカットで10秒もの間、

・蒼井さんがベランダで焼きそばを焼くカット
・いい人すぎる必要などない〜で始まるテキスト
・音楽

3つの要素で埋めている。
「間をもたせている」と言ってもいいほど、なにも起こりません。
変化があるとすれば、蒼井さんが焼きそばを食べる、焼くアクションがあるくらい。これってすごいことだと思います。

このCMを見て、いちばんすごいと思ったのはクライアント。
クライアント側は最初この企画が提案されたとき、どんなリアクションだったのでしょう!
いろいろと考えることはありますが、企画に関しては、
いつものとおり後述させていただければと思います。

話は戻ります。
この、至ってシンプルなCM。企画以外の部分で気になったのは、

・テキストと蒼井さんで作り出す演出的なコントラスト
・蒼井さんのタレントパワー
・これがCMに見えてしまうところ

ひとつずつ見ていきます。

テキストと蒼井さんで作り出す演出的なコントラスト

CMを見始め、目に飛び込んでくるのは蒼井さんが焼きそばを焼くカット。
これは多くの人が"理解できる"情報として視覚的に入ってきます。
それに引き換え「いい人すぎる〜」のテキスト。
ライトポエムとでも呼ぶのでしょうか、どこか、共感できるような、
それでいて、無理せずトクホを摂りましょうという企業側のメッセージも折り込んだ文章になっています。

それとセットで計算されているのが、
蒼井さんがなにもしないこと。
しゃべるわけでもなく、ナレーションもない。
動きはありますが、焼きを食べる、焼くだけで目を引くアクションは皆無。

まいにち 画コンテ。 #001 放置少女 でも言及した、静と動を使って
うまくコントラストをつけています。

人はひとつのことに集中できません。
ポエムも読んで、蒼井さんの動きも目で追って…をしていると、
どちらかがおろそかになる。
だったら、蒼井さんはあまり動きをつけず、ポエムに集中してもらおう。
という意図的な演出なのではないでしょうか。

また、字体についても上記のコントラストを強調させるのに
一役買っています。
手書きテイストにものにすることで、企業側のメッセージが蒼井さんの感情として、より伝わる演出にしているのが分かります。

これが例えばゴシックや明朝などの既存の字体だったら、
とても無機質になり、共感には程遠くなってしまいます。
これでは視聴者のこころに入っていくものにはなりません。

蒼井さんのタレントパワー

次に蒼井さんの持つ、タレントパワーについて。
蒼井さんといえば、女優としてはもちろん、
南海キャンディーズの山ちゃんこと山里さんと結婚されたことで話題になりました。
しかし、失礼ながら、”旬の女優”というには疑問が残ります。
(蒼井さん、申し訳ありません)
なので、”蒼井さんだから” 10秒もの間、画面に釘付けさせることができる
という理由にはなりにくいと思います。

では、このCMが他の女優さんだったらどうなんだろう。
考えましたが、貫地谷しほりさんか、多部未華子さんくらいしか思い浮か日ませんでした。
本作のコンセプトである、
「無理せず、でも毎日続けられるトクホのごま油」(予想)と
蒼井さんのもつ「背伸びしない、自然体、健康に気を遣っていそう」などのイメージがマッチしたことはもちろん、ご結婚されて”妻”となられたことも
調味料のメーカーとしては、大きな意味を持つことになったのではないでしょうか。

これがCMに見えてしまうところ

さいごに大きな疑問が残りました。
この、至極シンプルな作り(いま風にいうとミニマル?)が、
CMクオリティである理由を探ります。

私はこのCMを見すぎてしまい、いろいろ見えてしまうので
妻にこの理由を聞いてみました。
すると、「商品カットとラストカットがあるから」という
私にとって灯台下暗しの答えが。  たしかにそうだ。
でもそれでは芸がないのでそれ以外の理由を考えてみました。

ひとつは、ルック。
明らかにARRIかRED、もしくは同等のシネマカメラで撮影されていると思います。(BMPCC 4K/6Kとかなら夢がある。。。)
そして、当然のことながら、カラーグレーディングもされています。
良いも悪いもありませんが、やはり写真用のカメラの画とは一線を画しているように思えます。
それくらいルックはクオリティに直結する重要なポジションです。

もうひとつは、特有の”間(ま)の使い方” でしょうか。
15秒の短い尺だと、無意識のうちに急いでいろんなことを伝えようとしてしまいがち。
しかし10秒間、”お預け”する間の使い方。
CMは引き算の美学と なにかで読んだことがありますが、それが本当なら、本作は大胆な引き算を行っています。
蒼井さんのナレーション「トクホで、新ごま油習慣」の
「トクホで」と「新ごま油習慣」間(あいだ)の間(ま)。ここも気持ちいいくらいの間(ま)があることが分かります。

あとは強いて言うなら音。
無印良品で流れていそうなケルト音楽は心地の良く耳に残り、
焼きそばを焼くジューッという音は、食欲をそそります。
(現に妻は、これを見て、焼きそば食べたい。とつぶやいていました)

カメラワークやアングル、画角

固定ワンショットなので、特にコメントできることはないですが…
ひとつだけ気になったことがあります。
最近よく見る気がする、CIが入るラストカットの構図です。

スクリーンショット 2021-05-05 9.15.10

映像講師をやらせていただいている学校では、
「目線の先に余白を残すと安定感、逆は緊張などの違和感を与えますよ」
と伝えているのですが、今回、目線と反対の背中側に余白があります。
緊張を伝えたい意図は ないとは思われますが、
違和感を残すことを逆手に取って、印象づける意味でこの構図が採用されたのか、どうなのか。。
しかし、オシャレな構図です。

また、構図とは違いますが、注目すべきは、
今回見ている日曜日篇だけでなく、シリーズのすべてをワンロケーションで
7パターンものシチュエーションを作り出していること。
ここは撮影部の長、DoP(撮影監督)の腕の見せ所です。
(もちろん、監督と相談しながら決めます)

もし私がDoPとして入る現場で、監督に
「この部屋を使って、7パターンの画を作りたい。」と言われたら、
「… 。… 。冗談ですよね?」と聞き返したくなるくらいのオーダー。

しかし現実問題、15秒のなかで いくつものカットを割るとなると、
いろいろなものがバレて(見切れて)しまって、
シリーズで見た視聴者が「あれ、このアイテム、他でも見たぞ」と
間違い探し目線で見るようになってしまいます。
(ヒキの画はとくにいろいろなものが映ります)

!!!
もしかして…だからこそ生まれた、ワンカットの演出方法だったのか…
でもそうなると、企画(想定画コンテ)が通ってしまってからの変更になるので、クライアントへの説明(説得に近い)は相当大変なものだったか。
もしくは、強行突破したか…(それはない)

ということで、この流れで企画の話に移ります。

コピー・CI、その他

お待たせしました、企画の目線で分解していきます。

まずは、ワンカット演出について。
そもそもコンペの時点でそういう企画だったのか、
前述のとおり、ロケーションありきだからなのか、
予算やスケジュールなどの兼ね合いだったのかは分かりませんが、
いずれにしても、この企画でGoを出したクライアントがすごいと思います。
相当 映像のリテラシーが高い方であると察しがつきます。
(考えすぎかもしれませんが)

ここで考えなければならないのが、
近年、多くの場合、というかほぼすべてと言っていいほど、
テレビCMはWEBコンテンツと連動しているということ。
このプロモーション企画も、きっと最初にWEBコンテンツの企画があり、
そのWEBコンテンツのひとつとして展開されたCM企画だったのではないかと思われます。

トクホのごま油の商品プロモーション企画

レシピを中心としたWEBコンテンツ企画

そのレシピを露出させたCM企画

クライアントが、この商品をどのようにプロモーションさせたいかを
WEBコンテンツ落とし込む。
そのWEBコンテンツの世界観を保った上で、映像としてどのような企画にし、実際に画で表現していくかが求められます。(これが相当難しい!)

私も昨年、繊維産業の街として群馬県桐生市が発信するWEBサイトの
映像制作を担当させていただきましたが、
WEBとの整合性を保ちつつ、
ときに息遣い、ときにダイナミックさを感じられるような動的表現を同居させるのは、相当神経を使いました。
(もしよろしければ、覗いていただけると嬉しいです)

また、これも近年の動きだと思いますが、
企業側が 体験を通しての ”習慣”を創り出そうとしていますよね。

例えば、日テレさんのカラダWEEK
1週間のテレビ番組がカラダや健康を見直そうという企画。

きのこのHOKUTOさんは菌活として新語を作り、あたらしい習慣を創造しました。

習慣というのは、行動のサブスクリプションと言えます。
事業を行う企業にとって、一発が大きい一過性のプロモーションより、
習慣化することで、長く使い続けてもらうための”新提案”に舵をきっているのが、ここ10年かで起こったトレンドの変化のように思えます。
(その道のプロでないので、あくまで広告映像制作者の文脈です)

つらつらと書き殴ってしまいました…
いつも企画ブロックは、映像としてのCMを超えた話になってしまいますが、
そもそもCMの役割は、プロモーション。
私たち映像制作者も、CMがプロモーションの一貫ということを忘れてはいけませんし、
もっと言うなら、CMを流したあとの展開まで考えられ、
さらには、その展開が数字などで根拠のある説明ができると、
より企画に共感をしてもらいやすくなることだと思っています。

私の会社、TSUKASA KIKAKU では、ご一緒していただける
プロモーションに明るい方を大募集しています。
自由が丘におりますので、ご挨拶もかねて、ランチをしながら
いろいろなお話をさせていただければ幸いです。
(感染予防対策は、お互いしっかりと。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

以上、今日も素晴らしいCMを自分なりに見てきました。
メイキングも公開されています。

最後になりましたが、今回勝手に動画を拝借させていただいた
かどや製油公式チャンネル(Kadoya Official)さま
公式YouTubeチャンネルのURLを貼り付けさせていただきます。
ごま油を使ったレシピも豊富に載っています!
(チャンネル登録させていただきました、、!)

最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
まいにち 画コンテ。明日(あ、今日か、)もお楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?