BG2, SoA, ヤンとニーラの会話
<ヤンはお喋りホラ吹きノーム、ニーラはお茶目なお喋りワイルドメイジ、この二人の会話が盛り上がらないはずはなく…>
ニーラ
「ああ、ヤン!その話、ほんと面白かったわ。あなたのピオニーおばさんの二番目のご主人のローさんは、ほんとにバターナイフで六人の子供に財産を切って分けてあげたの?家具を分ける番になったら、みんなうろたえたんじゃない?」
ヤン
「家具は何でもなかったさ。子供たちが騒ぎ出したのは、地下室にあったビア樽にロー父っつぁんがナイフを向けた時じゃよ。地下室は蕪ビールでいっぱいだったんじゃ。ロリクックは―父っつぁん*の片目の義理の倅で、難し屋の娘*と一緒になっとった奴な(あのオーティス・エメラルドの情婦*をやっつけた―それも当然じゃった、あんな威張りくさった女にはまたと一生お目にかかれんだろうからな!―世話焼き女*と一緒だった奴じゃないぞ)―そうとも、ロリクックの奴は樽に近寄るや、中のビールを飢えたケモノよろしく一気に飲み干しちまった!それから何日も、やつは真っ直ぐ立つこともできんかったよ。そうしとる間にも、子供らは六切れの樽のことでイガミ合いをやっとった。一人は自分の切れは小さすぎると言うし、もう一人は自分の切れはカビだらけだと言う。そうかと思えば、別の一人は自分の切れはカラカラでカビの香りがしないと言い、ニセモノを掴まされたのではと疑う始末じゃった」
ニーラ
「どうやってこの始末をつけたの?あたし待ちきれなくて椅子から落っこちそう!うん、文字通りじゃないわよ。もし椅子に座ってたら」
ヤン
「始末をつけたじゃと?それはあの一家を買いかぶっとるというもんじゃよ。それから間もなくローは亡くなった。バターナイフで財産を切り分けるのは重労働だったんで、かれは財産のやっと八十分の一を分けたきりだった。子供らは残りをめぐっていまだに争っとるよ、わしの知っとる限りじゃ。父っつぁんが分けてやった分についても同様じゃ」
ニーラ
「この話の教訓はこうね。”殺戮神バール*であろうとピオニーおばさんの二番目のご主人であろうと、相続人を持つのは一筋縄でいかない”」
ヤン
「ああ、全くじゃよ。死に絶えても結構と思う者は誰もおらんだろうから、な?だから神も人間も同じように苦労して必死に遺産を後世に残そうとするのじゃな。だが不幸なことに、わがピオニーおばさんの三番目の亭主は前のよりいっそうひどかったのじゃよ…」
*the miller's 。「粉屋の」。ローさんは粉屋だったんだろう。ここのニーラとヤンの会話は、前からの続きの体裁になってるから、この会話での登場人物はそれ以前のヤンの話でいちおう説明済みってことになってるんだと思う。
*hedgehog 。ハリネズミ、気難しい人などのことだが、一応こう解しておく。
*pumpkin 。カボチャ、大立者、いい人、ダーリンなどのことだが、一応こう解しておく。
*sister 。姉妹、尼さん、娘さんのことだが、一応こう解しておく。
*殺人の神バールは自分の死を予測した時、地上に非常に多くの子供を作って残しておいた。主人公やBG1のラスボス・サレヴォクもそのうちの一人。
*これはヤンの徹底したホラ話。なお、バターナイフには大皿に盛られたひと塊のバターを会食者ごとに切り分ける専用のものと、会食者がそれぞれ持ってパンにバターを塗るのに使うものの二通りがある由。財産を子供に切り分けるたとえのバターナイフは前者のほうだろう(なお”バターナイフでバターを切る”というのは容易なことのたとえにもなるようだから、ヤンの話ではそれが全く反対になるわけで、そこにも可笑しみがあるかも)。
*なお、上の画像の最初のセリフはラサンダーの寺院の神官のもの。