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ところでフィンテックって何ですか?
銀行口座決済の当たり前を変えるPay by BANK開発中のBANKEYの阪本です。前回は何故世の中にフィンテックが必要かについて個人的な意見を述べました。銀行は私たち一人ひとりを助けてくれないけど、私たち一人ひとりに金融サービスは必要だからフィンテックが必要なのです。
今回はそもそもフィンテックってなあに?という話。
序章:銀行ってなあに?
銀行員時代に色々ご縁があって雑誌(Mook)の出版に少しだけ関わったことがあります。
編集長の若林さんが巻頭で次のようなことを書いています。
そこ(銀行)に社会生活に関わるあらゆるものがぶら下がっているからだ。銀行なんてなくなればいい。気持ちはわからなくもないが、長い時間をかけて社会の隅々まで埋め込まれた「血管」を、それだけ摘出するのは難しい。し、無理にやったら相当痛い。
正に真理だなと思うわけです。とは言え、長い時間をかけて社会の隅々まで埋め込まれた「血管」だからこそ社会が変わっていくためのボトルネックにもなってしまうというのが現実。
無理にやったら相当痛いので漢方薬じゃないけど内科的対応で時間をかけて変わっていくしかないのかもしれませんが、そうこうしているうちに世界は進んでどんどん取り残されていく可能性だってあります。病気が治る前に寿命が尽きる。
外科的手法(大手術でとても痛い)は出来ない、内科的手法だと間に合わない。漫画やドラマの世界ではこういうときに、主人公がクリエイティブな手術方法が提案するのです(そして反対する周囲を押し切って外科的手法へ、途中で起こる様々なトラブルを乗り越えて大団円)。
しかし、大前提として病巣を正しく理解する必要があります(いつの間にか医療マンガ・ドラマの話になってきたので話を戻します)。
社会における銀行の役割
そこらへんにいる銀行員(日本には2024年3月末時点で現役銀行員が26万人、銀行役員が1,354人いるそうです)を捕まえてきて、銀行の役割について説明して下さいと尋ねると大体以下の回答が出てきます。
「銀行は銀行法に基づく三大業務、預金、為替、貸出を行う株式会社です。社会の中で、経済の血液であるおカネを循環させるポンプのような役割を果たしています。」
模範解答っぽいけど役割の説明として具体性はなく1ミリも面白くない。
じゃあ一体何なのさ?というわけで元銀行員の筆者が問われた時には、
「社会の中で銀行が果たす役割は大きく2つ。まず最も重要な役割は繰り返し正しく記帳し続けること。銀行にいけば間違わずに記帳され、記帳されたデータが改ざんされることもないということが社会の中で堅く信じられていること自体が重要な役割。もう1つの役割は正しい記帳によって担保される預金を元にしたリスクの最適化、企業や事業に対する将来キャッシュフローの目利きである。」
と答えることにしています。2つ目はまさにおカネを循環させるポンプの役割の話ですが1つ目が何よりも重要なのだと思うのです(ただ、当たり前過ぎて銀行員からなかなか意識されることはありません)
さて、本題に戻ります。話を進めるために銀行の役割を「正しい記帳機能」「資金の貯蔵(流動性確保)」「資金の運用」の3つの機能の提供と定義します。リスクの最適化を資金の貯蔵と運用に分割しています。貯蔵だけだとただの貸金庫、流動性を確保しながら資金を運用することで元の預金よりも多くの「使えると認識されているおカネが増える」、信用創造が実現します。また正しい記帳の正しさを担保するために貯蔵機能は欠かせません。100預けたのに100引き出せないという状況を起こしてはならないのです。
銀行3大業務との関係は以下の通りです。
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さあオペレーション(手術)の時間です
長い時間をかけて社会の隅々まで埋め込まれた銀行を変えていくための手術の準備は整いました。少し乱暴かもしれませんが銀行の正しい記帳機能、預金業務は引き続き銀行のレゾンデートル(存在意義)として手を付けず、その他の機能については引き剥がしてモダンに置き換えるという手術方式が現実的かつ有効です。
現実問題として為替業務は既に資金移動業に限定的に開放されていますし、貸出についても貸金業というライセンスが既に存在しています。資金移動業や貸金業に対して正しい記帳機能(と紐付きになっている預金機能)を提供するというのがこれからの銀行の役割です。
本題:フィンテックってなぁに?
銀行が社会の隅々まで埋め込まれている社会において銀行の「正しい記帳(預金)」機能をテクノロジーを介して直接的、間接的に借りることで、よりより金融サービスを提供する事業者をフィンテックと筆者は定義します。
日本銀行はフィンテックを次のように説明しています。
FinTech(フィンテック)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指します。身近な例では、スマートフォンなどを使った送金もその一つです。
米国では、FinTechという言葉は、2000年代前半から使われていました。その後、リーマンショックや金融危機を経て、インターネットやスマートフォン、AI(Artificial Intelligence、人工知能)、ビッグデータなどを活用したサービスを提供する新しい金融ベンチャーが次々と登場しました。
例えば、資金の貸し手と借り手を直接つないだり、Eコマースと結びついた決済サービスを提供する企業があるほか、ベンチャー企業が決済などの金融サービスに参入する動きも増えています。
また、これまで金融サービスが十分普及していなかった途上国や新興国でも、スマートフォンを利用した金融サービスが急速に広がる動きが進んでいます。さらに、分散型台帳技術やブロックチェーンといった技術も登場しています。
筆者の定義と概ね矛盾しません。強いて申し上げると日本銀行の定義は銀行が埋め込まれていない社会も包含、すなわちフィンテックが正しい記帳の担い手自体を代替することを想定しています。
しかし、少なくとも日本や欧米先進国においては確かにCBDC(中央銀行デジタル通貨)等の議論はありますが、広く・深く銀行が埋め込まれているので筆者の定義で十分であると考えます(狭義のフィンテックとしましょう)。
前回、フィンテックの役割は「銀行が相手にしない、あるいは相手にできないセグメントに対してテクノロジーで「サービス」を届けること」と申し上げました。筆者が申し上げる狭義のフィンテックのコアはサービス、ユーザーの体験です。そしてそれらのユーザーは原則として銀行口座を保有し給料を銀行口座で受け取って生活しています。
海外では当たり前のように銀行APIが整備され、銀行の「正しい記帳」機能に外部からアクセスが可能です。
この社会基盤である銀行の正しい記帳機能を使って新たなサービスが日々生まれているのが海外の現況です。
一方で日本はどうでしょう。フィンテックと言うと家計簿アプリかPayPayくらいしか思いつかないのではないでしょうか?家計簿アプリは銀行の正しい記帳機能を前提にサービスが構築されています。PayPayの場合にはクレジットカードや銀行チャージ機能を使って決済のための資金を動かしています。しかしなかなか後が続きません。
別のアングルから申し上げると日本の銀行は未だに銀行アプリを強化し続けています。目指しているのは銀行アプリで何でもできるという状態。しかし、実際には「銀行機能を使うには銀行アプリを使わないといけない」になってはいないでしょうか?似ているようで全く違います。しかし後者になっているが故に日本では銀行機能をお借りしたフィンテックサービスが拡がっていかないのです。
まとめ
フィンテックの話と言いながら今回も銀行の話になってしまいました。しかし銀行がここまで浸透している社会においては狭義のフィンテックサービスを拡げていくことが様々な社会課題解決を加速させるのではないかと考えています。ではまた。